W3C/XML Watch - 4月版
XML Schema、3年ぶりの改訂が迫る
加山恵美2004/4/22
最近ではニュースサイトやブログでRDF/RSS/XMLバナーを頻繁に見掛けるようになりました。身近にある生きたデータがXMLで流通していることをひしひしと実感しています。
■3月の勧告、勧告案、勧告候補
それではW3Cの動きから見ていきましょう。3月は勧告が2本、勧告案が3本、勧告候補はありませんでした。勧告となったのは2月に勧告案となったばかりのVoiceXML 2.0と、2003年末から勧告案で待機していた音声認識文法仕様(SRGS)1.0です。音声入出力インターフェイスに関する仕様が2本同時に勧告へとゴールインしました。
3月版でも触れましたが、VoiceXMLとは電話によるチケット予約などの応答をマークアップ言語で記述するもので、すでに幅広く採用されています。データは一般的にはVXMLという拡張子が付き、Webサーバに格納されます。コールがあるとインターネットと電話網に接続した装置にある音声ブラウザがVXMLを処理します。音声ブラウザは、音声認識と音声合成のエンジン、Webクライアントの機能を持ちます。VoiceXMLにより、電話からWebサービスをより簡単に利用できることが期待されています。同時に発表になったSRGSはVoiceXMLを利用する際に欠かせない文法に関する仕様です。
- 【勧告】Voice Extensible Markup Language (VoiceXML) Version 2.0(3月16日発表)
- 【勧告】Speech Recognition Grammar Specification Version 1.0(3月16日発表)
編集済み勧告案になったのはXML Schemaの第0部から第2部までの3本です。ただし今回は細かな修正のみを反映した第2版となりました。勧告になるのはそう遠くないでしょう。ちなみに前に勧告になったのが2001年5月ですので、3年ぶりに改訂版が出ました。
- 【編集済み勧告案】XML Schema Part 0: Primer Second Edition(3月18日発表、勧告案レビュー終了4月16日)
- 【編集済み勧告案】XML Schema Part 1: Structures Second Edition(3月18日発表、勧告案レビュー終了4月16日)
- 【編集済み勧告案】XML Schema Part 2: Datatypes Second Edition(3月18日発表、勧告案レビュー終了4月16日)
■3月のドラフトとノート
3月発表されたドラフトはラストコールのないものが9本のみ、ノートはありませんでした。
発表順に見ると、1本目はXML Schema仕様の第1部と第2部で定義された複数のコンポーネントを識別するためのもので、QNameの抱える問題点を解決する狙いがあります。2本目はWebコンテンツのアクセシビリティガイドライン2.0、3本目はWebサービスコレオグラフィ(振り付け)要件、4本目はSVG 1.2で、それぞれ更新されました。
- XML Schema: Component Designators(3月9日発表)
- Web Content Accessibility Guidelines 2.0(3月11日発表)
- Web Services Choreography Requirements(3月11日発表)
- Scalable Vector Graphics (SVG) 1.2(3月18日発表)
5本目はVoiceXML 2.1、6本目はWSコレオグラフィ(振り付け)モデル概要で、コレオグラフィのメタモデル定義が目的です。これら2本は初登場です。7本目は携帯電話やPDA向けのSVGプロファイル、最後の2本がWSDL 2.0で、それぞれ更新されました。
- New Voice Extensible Markup Language (VoiceXML) 2.1(3月23日発表)
- New WS Choreography Model Overview(3月24日発表)
- Mobile SVG Profiles: SVG Tiny and SVG Basic, Version 1.2(3月25日発表)
- Web Services Description Language (WSDL) Version 2.0 Part 1: Core Language(3月26日発表)
- Web Services Description Language (WSDL) Version 2.0 Part 2: Message Exchange Patterns(3月26日発表)
そのほか、W3Cでは新たにXML Binary Characterizationワーキンググループが立ち上がりました。このワーキンググループは去年のBinary Interchange Workshop(レポート)を契機とし、XMLのバイナリ化について研究することを目的としています。
■OASISの動き
OASISの動きを見ると、新しい技術委員会の発足が目立ちます。Webサービス関連が2つ、それからLegalXMLとDITAの4つです。ほかにもBusiness-Centric Methodology(BCM)技術委員会がEPR(Electronic PRocess)小委員会を設置するなど、活発です。
- Web Services
Notification(WSN)技術委員会
Webサービスの内部状態を通知する技術を標準化する試みで、Webサービスの起動や終了をコントロールする - Web Services
Resource Framework(WSRF)技術委員会
分散されたリソースをWebサービスによって活用するためのオープンフレームワークを定義する - LegalXML
Subscriber Data Handover Interface(SDHI)技術委員会
裁判所や治安当局からのXMLリクエストにこたえるためのXML標準を開発する - Darwin Information
Typing Architecture(DITA)技術委員会
モジュール化された技術情報を作成および配布するXML仕様を定義する
それからebXMLがISO国際標準として承認されました。ISO技術仕様書として制定されたのは以下の4つです。今後、JIS標準化へと進むことが期待されています。
- ebXML Collaborative Partner Profile Agreement(ISO 15000-1)
- ebXML Messaging Service Specification(ISO 15000-2)
- ebXML Registry Information Model(ISO 15000-3)
- ebXML Registry Services Specification(ISO 15000-4)
またebXMLといえば、eビジネス・サービス指向アーキテクチャ(ebSOA)技術委員会がebXMLとWebサービスの標準を、eビジネスとSOAから統合する試みを始めました。委員会ではebXMLと、WebサービスやSOAを考慮した新しいアーキテクチャへ進化させることを目標としています。
■地理情報のGML 3.1が勧告に
オープンGISコンソーシアムでは、OpenGIS Geography Markup Language(GML)実装仕様を勧告としました。GMLは地理情報の伝達と格納用のXMLエンコーディングを定義し、幾何学情報とプロパティ情報を含みます。勧告一覧ページから文書とXMLスキーマファイルをダウンロードできます。勧告と同時にISO 19136としてリリースしました。
■WS-Iベーシックプロファイル検証ツール
Webサービスの相互運用性を推進する団体であるWS-Iがベーシックプロファイル1.0(日本語翻訳版)のC#とJava版の検証ツールの最終版を公開しました。こちらからダウンロードできます。1月版でも紹介しましたが、今回のツールは最終版です。この検証ツールは、Webサービスがベーシックプロファイルの要件に合致しているかどうか確認するために使います。
■W3C HTML PAGグループが最終報告書を発表
3月22日、Eolas対米マイクロソフトの裁判においてEolas勝訴の判決を受けて発足したW3CのHTML PAGグループは、最終報告書を発表しました。最終報告書には背景説明から始まり、PAGの活動として米国特許庁(USPTO)へ書簡で再審査を進言したことなどが記されています。3月版で伝えたとおり、米国特許庁は再審査で特許は無効であると予備判断を下し、現在は最終判断待ちの段階です。まだ最終判断は出ていませんがHTML PAGは予備判断を歓迎し、ほぼ役目を終えたと判断しました。ただし万が一、特許侵害問題が再浮上したらPAGは再招集されることになっています。
@IT関連記事 ・特許問題に揺れるW3C [前編] 標準技術と特許の難しい関係 [後編] ロイヤリティ・フリーを求めて高まる声 ・W3C/XML Watch(いずれも2003年) 9月版 IEの特許侵害判決でW3Cが緊急会合 10月版 IEの特許侵害判決がWebに与える影響は? 11月版 IE特許問題で、W3Cが米国特許庁へ再審査を請求 |
■ティム・ブレイ氏がサン・マイクロシステムズへ
XMLの教祖とまで崇められるXMLの生みの親の1人、ティム・ブレイ氏(参考:2002年末の@ITインタビュー記事)が3月15日付で米サン・マイクロシステムズ社のソフトウェアグループの技術ディレクタに就任しました。ちょうど同社がRSSへの取り組みに意欲的な発表があった1週間後のことでした。ブレイ氏と同社は検索やXML/RSSの分野で強く共鳴するものがあったようです。今後のブレイ氏の活躍が楽しみですね。
ではまた来月、お会いしましょう。
■バックナンバー
2001年
・ 7月版 「XMLBase、XML Linkが勧告に」
・ 8月版 「リファレンスブラウザAmaya 5.1が登場したけれど」
・ 9月版 「MITが停電! そしてマルチメディア言語SMIL」
・ 10月版 「XMLの改定仕様はブルーベリー」
・ 11月版 「W3C Dayが待ち遠しい」
・ 12月版 「慶應大学で次世代Webに触れる」
2002年
・ 1月版 「XML 1.1、XSLT 2.0のドラフトついに登場!」
・ 2月版 「Webサービスアクティビティが発足」
・ 3月版 「XMLが4歳の誕生日を迎えました」
・ 4月版 「XMLを作った人たちが殿堂入りの栄誉!」
・ 5月版 「P3Pが勧告、そして怒とうの文書公開」
・ 6月版 「XML文書の正規化新仕様と、W3Cインタロップツアー」
・ 7月版 「SOAP 1.2のドラフトが発表」
・ 8月版 「4つのXPointerのドラフト、WSDL 1.2も登場」
・ 9月版 「ロゼッタネットとUCCが合併、XMLマスターに上級資格」
・ 10月版 「具体的な技術論へ移るセマンティックWeb」
・ 11月版 「XML 1.1が勧告候補、特許問題はついに決着か」
・ 12月版 「DOM2関連がもうすぐ完結、Webアーキテクチャも登場」
2003年
・ 1月版 「この1年でW3C勧告になったのは7つの仕様」
・ 2月版 「Webサービスの『振り付けグループ』が発足」
・ 3月版 「旅行業界がXML化へ、MSからは『InfoPath』が登場」
・ 4月版 「混迷の続くXPointerはついに落着?」
・ 5月版 「Webサービスの実験成功。WS-Iからは互換性ツール」
・ 6月版 「あいまいな部分を排除したSOAP 1.2、PNGはISO標準へ」
・ 7月版 「MITのW3Cオフィスはもうすぐ引っ越し、国連がebXMLを承認」
・ 8月版 「Webサービスが日本のAmazonからも利用可能に」
・ 9月版 「IEの特許侵害判決でW3Cが緊急会合」
・ 10月版 「IEの特許侵害判決がWebに与える影響は?」
・ 11月版 「IE特許問題で、W3Cが米国特許庁へ再審査を請求」
・ 12月版 「OfficeのXMLスキーマ公開、XML 1.1は勧告間近」
2004年
・ 1月版 「セマンティックWebに向けた動きが活発に」
・ 2月版 「日本人による標準技術発信が進むOASIS」
・ 3月版 「ついにXML 1.1が勧告へ、影響を受けるのは?」
・ 4月版 「XML Schema、3年ぶりの改訂が迫る」
・ 5月版 「Webサービス・セキュリティ v1.0、待望のOASIS標準に」
・ 6月版 「TravelXMLのWebサービス実証実験デモが成功」
・ 8月版 「SOAPメッセージ最適化をめぐる仕様が活発化」
・ 10月版 「W3Cの設立10周年を祝う記念祝賀イベント開催」
・ 12月版 「年の瀬に、WebとW3Cの功績に思いを馳せる」
2005年
・ 2月版 「XMLマスター資格試験が6月にリニューアル」
・ 4月版 「WS-Security 2004の日本語訳をXMLコンソーシアムが公開」
・ 6月版 「“愛・地球博”でビュンビュンWebサービス」
・ 8月版 「XMLキー管理仕様(XKMS 2.0)が勧告に昇格」
・ 10月版 「QAフレームワーク:仕様ガイドラインが勧告に昇格」
- QAフレームワーク:仕様ガイドラインが勧告に昇格 (2005/10/21)
データベースの急速なXML対応に後押しされてか、9月に入って「XQuery」や「XPath」に関係したドラフトが一気に11本も更新された - XML勧告を記述するXMLspecとは何か (2005/10/12)
「XML 1.0勧告」はXMLspec DTDで記述され、XSLTによって生成されている。これはXMLが本当に役立っている具体的な証である - 文字符号化方式にまつわるジレンマ (2005/9/13)
文字符号化方式(UTF-8、シフトJISなど)を自動検出するには、ニワトリと卵の関係にあるジレンマを解消する仕組みが必要となる - XMLキー管理仕様(XKMS 2.0)が勧告に昇格 (2005/8/16)
セキュリティ関連のXML仕様に進展あり。また、日本発の新しいXMLソフトウェアアーキテクチャ「xfy technology」の詳細も紹介する
|
|