W3C/XML Watch - 4月版
待望のWS-Security 2004日本語訳が完成
加山恵美2005/4/16
4月初めに雪国に近い温泉街へ出掛けました。「ここなら花粉から解放される」と思いきや、窓から枝先がオレンジ色に染まったスギが見えてがく然としました。外を散歩すれば、たわわに実ったスギ花粉が風に吹かれて湯気のように舞う姿を目にして涙がたくさん出ました。フレッシュな花粉は一段と強烈だったような気がします。
■2〜3月の勧告、勧告案、勧告候補
それではW3Cの動向から見ていきましょう。勧告は2月に1本、勧告案はなし、勧告候補は2月に1本ありました。
勧告になったのは、「WWW(World Wide Web)のキャラクターモデル 1.0:基礎」です。WWWの国際化の動きは地味なようにも見えますが着々と進んでいます。今回の勧告では、Webにおける文字の取り扱いについての統一的な手法を提示しています。またこのキャラクターモデルに関する文書は3部作となっており、今回は最初の勧告となりました。同シリーズの残りには正規化、リソース識別子があります。現時点では前者はドラフトで後者は勧告候補ですが、今年中に3部作が完成するように開発を進めています。
勧告候補になったのは「xml:id 1.0」です。拡張性やRELAX NGバリデーションなどの項目が追加されました。
- 【勧告候補】xml:id Version 1.0(2月8日発表、フィードバック期限3月10日)
■2〜3月のドラフトとノート
ドラフトはラストコール付きが2月に1本と3月に4本で合わせて5本、ラストコールなしが2月に8本と3月に2本で合わせて10本、トータルで15本ありました。
ラストコール付きを順に見ると、「SMIL 2.1」「TT オーサリングフォーマット1.0 DFXP」「XMLスキーマ:コンポーネント識別子」「Webサービスアドレッシング1.0」の「コア」と「SOAPバインディング」がありました。Webサービスアドレッシングは昨年末に3本立てで初登場しましたが、うち2本がラストコールになり早い展開を見せています。
- Synchronized Multimedia Integration Language (SMIL 2.1)(2月1日発表、ラストコール2月25日)
- Timed Text (TT) Authoring Format 1.0 - Distribution Format Exchange Profile (DFXP)(3月21日発表、ラストコール4月11日)
- XML Schema: Component Designators(3月29日発表、ラストコール4月26日)
- Web Services Addressing 1.0 - Core(3月31日発表、ラストコール5月11日)
- Web Services Addressing 1.0 - SOAP Binding(3月31日発表、ラストコール5月11日)
ラストコールなしでは、初登場が3本ありました。最初の「XQuery更新機能要件」は、XQueryで更新の便宜を図るための要件をまとめています。これを見るとXMLクエリ・ワーキンググループは将来的にXQueryで更新も可能とすることを示唆していて、今回のドキュメントはその前段階に当たるようです。次の「PLS 1.0」は音声ブラウザの一環です。発音の表現集についての仕様を定めています。最後の「RDF/トピックマップ相互運用への提案についての調査」は、W3CのRDFとISOのトピックマップの統合状況についての調査で、これらの相互運用性についてのガイドラインを作成する足掛かりにしたいと考えているようです。
あとは「Webサービスアドレッシング1.0 - WSDLバインディング」「CSS3背景とボーダーのモジュール」「RDF向けのSPARQLクエリ言語」「XMLスキーマ 1.1」では「パート1:構造」と「パート2:データタイプ」「XHTMLとHTMLの国際化のためのオーサリング技術:言語特定1.0」「RDFデータアクセス使用例と要件」がありました。
- New XQuery Update Facility Requirements(2月11日発表)
- New Pronunciation Lexicon Specification (PLS) Version 1.0(2月14日発表)
- Web Services Addressing 1.0 - WSDL Binding(2月15日発表)
- CSS3 Backgrounds and Borders Module (2月16日発表)
- SPARQL Query Language for RDF(2月17日発表)
- XML Schema 1.1 Part 1: Structures(2月24日発表)
- XML Schema 1.1 Part 2: Datatypes(2月24日発表)
- Authoring Techniques for XHTML & HTML Internationalization: Specifying the language of content 1.0(2月24日発表)
- RDF Data Access Use Cases and Requirements(3月25日発表)
- New A Survey of RDF/Topic Maps Interoperability Proposals(3月29日発表)
ノートは3月に4本ありました。すべてXMLバイナリの位置付けについてです。
- XML Binary Characterization(3月31日発表)
- XML Binary Characterization Measurement Methodologies(3月31日発表)
- XML Binary Characterization Properties(3月31日発表)
- XML Binary Characterization Use Cases(3月31日発表)
■UDDI、XACML、WSDM、SAMLがOASIS標準に
2005年に入ってから相次いでOASIS標準として承認されるものが出ました。日付順でいうと、Webサービスの大事な構成要素であるUDDI v3.0、Webサービスでアクセス制御言語を定義するXACML 2.0、Webサービスとその管理についてのWSDM、それからWebサービスで高機能な認証を実現するSAML v2.0です。
XACMLとSAMLはともにWebサービスのセキュリティに関するものです。SAMLはSSO(シングルサインオン)や認証・認可サービスを提供し、その中でポリシー規定と認可要求の適合性を判断しアクセス可否を決定するためにXACMLを使います。
またWSDMはMUWS(Management Using Web Services)とMOWS(Management of Web Services)の2部構成となっています。違いが微妙ですが、Webサービスの管理に関することがまとめられています。
- UDDI(Universal Description, Discovery and Integration) v3.0(2月3日)
- XACML(eXtensible Access Control Markup Language)2.0(3月2日)
- WSDM(Web Services Distributed Management)(3月9日)
- SAML(Security Assertion Markup Language) v2.0(3月14日)
なお、2004年4月にOASIS標準として承認されたWeb Services Security 1.0をXMLコンソーシアムセキュリティ部会が日本語に翻訳しました。XMLコンソーシアムにて3月末から公開されています。非公式な参考情報ではありますが、役に立つことでしょう。
■WWW2005が幕張で開催
年に一度のWWWのイベントが今年は日本で開催されます。WWW2005は5月10〜14日、千葉県の幕張で開催されます。基調講演にはW3Cのティム・バーナーズリー(Tim Berners-Lee)氏や国際大学の村田真氏が登場します。せっかくの日本開催なので機会があればぜひ足を運んでみてください。
ではまた再来月、お会いしましょう。
■バックナンバー
2001年
・ 7月版 「XMLBase、XML Linkが勧告に」
・ 8月版 「リファレンスブラウザAmaya 5.1が登場したけれど」
・ 9月版 「MITが停電! そしてマルチメディア言語SMIL」
・ 10月版 「XMLの改定仕様はブルーベリー」
・ 11月版 「W3C Dayが待ち遠しい」
・ 12月版 「慶應大学で次世代Webに触れる」
2002年
・ 1月版 「XML 1.1、XSLT 2.0のドラフトついに登場!」
・ 2月版 「Webサービスアクティビティが発足」
・ 3月版 「XMLが4歳の誕生日を迎えました」
・ 4月版 「XMLを作った人たちが殿堂入りの栄誉!」
・ 5月版 「P3Pが勧告、そして怒とうの文書公開」
・ 6月版 「XML文書の正規化新仕様と、W3Cインタロップツアー」
・ 7月版 「SOAP 1.2のドラフトが発表」
・ 8月版 「4つのXPointerのドラフト、WSDL 1.2も登場」
・ 9月版 「ロゼッタネットとUCCが合併、XMLマスターに上級資格」
・ 10月版 「具体的な技術論へ移るセマンティックWeb」
・ 11月版 「XML 1.1が勧告候補、特許問題はついに決着か」
・ 12月版 「DOM2関連がもうすぐ完結、Webアーキテクチャも登場」
2003年
・ 1月版 「この1年でW3C勧告になったのは7つの仕様」
・ 2月版 「Webサービスの『振り付けグループ』が発足」
・ 3月版 「旅行業界がXML化へ、MSからは『InfoPath』が登場」
・ 4月版 「混迷の続くXPointerはついに落着?」
・ 5月版 「Webサービスの実験成功。WS-Iからは互換性ツール」
・ 6月版 「あいまいな部分を排除したSOAP 1.2、PNGはISO標準へ」
・ 7月版 「MITのW3Cオフィスはもうすぐ引っ越し、国連がebXMLを承認」
・ 8月版 「Webサービスが日本のAmazonからも利用可能に」
・ 9月版 「IEの特許侵害判決でW3Cが緊急会合」
・ 10月版 「IEの特許侵害判決がWebに与える影響は?」
・ 11月版 「IE特許問題で、W3Cが米国特許庁へ再審査を請求」
・ 12月版 「OfficeのXMLスキーマ公開、XML 1.1は勧告間近」
2004年
・ 1月版 「セマンティックWebに向けた動きが活発に」
・ 2月版 「日本人による標準技術発信が進むOASIS」
・ 3月版 「ついにXML 1.1が勧告へ、影響を受けるのは?」
・ 4月版 「XML Schema、3年ぶりの改訂が迫る」
・ 5月版 「Webサービス・セキュリティ v1.0、待望のOASIS標準に」
・ 6月版 「TravelXMLのWebサービス実証実験デモが成功」
・ 8月版 「SOAPメッセージ最適化をめぐる仕様が活発化」
・ 10月版 「W3Cの設立10周年を祝う記念祝賀イベント開催」
・ 12月版 「年の瀬に、WebとW3Cの功績に思いを馳せる」
2005年
・ 2月版 「XMLマスター資格試験が6月にリニューアル」
・ 4月版 「WS-Security 2004の日本語訳をXMLコンソーシアムが公開」
・ 6月版 「“愛・地球博”でビュンビュンWebサービス」
・ 8月版 「XMLキー管理仕様(XKMS 2.0)が勧告に昇格」
・ 10月版 「QAフレームワーク:仕様ガイドラインが勧告に昇格」
- QAフレームワーク:仕様ガイドラインが勧告に昇格 (2005/10/21)
データベースの急速なXML対応に後押しされてか、9月に入って「XQuery」や「XPath」に関係したドラフトが一気に11本も更新された - XML勧告を記述するXMLspecとは何か (2005/10/12)
「XML 1.0勧告」はXMLspec DTDで記述され、XSLTによって生成されている。これはXMLが本当に役立っている具体的な証である - 文字符号化方式にまつわるジレンマ (2005/9/13)
文字符号化方式(UTF-8、シフトJISなど)を自動検出するには、ニワトリと卵の関係にあるジレンマを解消する仕組みが必要となる - XMLキー管理仕様(XKMS 2.0)が勧告に昇格 (2005/8/16)
セキュリティ関連のXML仕様に進展あり。また、日本発の新しいXMLソフトウェアアーキテクチャ「xfy technology」の詳細も紹介する
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