W3C/XML Watch - 1月版
XML 1.1、XSLT 2.0のドラフトついに登場!
加山恵美
2002/1/10
あけましておめでとうございます。
お正月休みに入る直前まで、W3Cの動きは活発でした。11月から12月にかけてはW3C Dayをはじめとしたイベントが続きましたし、一通りイベントが終わり、12月後半になると突如ラストスパートをかけるかのようにドキュメントが一気に更新されました。W3Cからのクリスマスプレゼントだったのかもしれませんね。
■W3CでGoogleが利用可能に
トップページに用意されたGoogle検索メニュー |
W3Cのトップページ、右列上部は、従来のW3C独自の検索機能から、Googleを使った検索機能に置き換わりました。これでW3C内の検索機能が強化され、World Wide Web(WWW)全体に対しても検索できるようになりました。
■12月の勧告
12月に発表された勧告はWebCGM 1.0 Second Releaseです。W3CとCGMオープンコンソーシアムの共同作業で作成されたものです。WebCGMとはWeb上でCGM(Computer Graphics Metafile)画像を実現するものです。1987年からベクトルや複合ベクトル/ラスタ画像用のISO標準と定義されています。1999年1月にWebCGM Profileが勧告になってから3年がたち、新しいバージョンとして発表されました。今回のバージョンアップで、より実用性が高まりました。
12月には勧告案、勧告候補となったドキュメントはありませんでした。
■ドラフトの動き
冒頭にも述べましたが、月末にはドキュメントの発表ラッシュがありました。わずか数日のうちに20余りが発表になりました。12月20日には1日に9つも発表されています。この数の多さは十分にW3Cが活発であったことを裏付けていますが、最近発表になる勧告は、すでに勧告になった仕様の応用や、複数の標準仕様の複合であったりするので、以前よりドキュメントの数は増える傾向にあるようです。あまり数の多さだけに踊らされてもいけませんね。
12月に発表になったドラフトは19もあるので、発表された順に分けて解説していきましょう。数は多いですが、関連した仕様ごとにまとめて発表されている傾向があります。
まず、12月上旬から見ていきましょう。XForms 1.0は2001年8月末以来の更新となります。次のドラフト更新時にはラストコール付きの最終ドラフトとなるようです。次のDOM2 HTML Specificationはラストコールが2002年の1月7日に設定されていて、最終的なドラフトとなりました。また、XML 1.1はXML Blueberryのことです。XML Blueberry Requirementsが発展してXML 1.1となりました。
- XForms 1.0(12/7)
- Document Object Model
(DOM) Level 2 HTML Specification
Version 1.0(12/10) - XML 1.1(12/13)
次に12月18日にはSOAP 1.2のパート0〜2までの3つ、それからXMLプロトコル利用のシナリオがまとめて発表されました。SOAP 1.2が2001年の7月に初めて発表になったときは1つのドキュメントでしたが、10月の更新でパート1と2に分かれ、今回の発表で導入部としてパート0が追加され3本立てになりました。また、SOAPに関連してXMLプロトコル利用のシナリオが発表されました。
- SOAP Version 1.2 Part 0: Primer(12/18)
- SOAP Version 1.2 Part 1: Messaging Framework(12/18)
- SOAP Version 1.2 Part 2: Adjuncts(12/18)
- XML Protocol Usage Scenarios(12/18)
それから、発表のピークだった12月20日前後に発表されたものをみていきましょう。まず、RDF/XML Syntax Specification Revisedが発表されました。これは9月に発表になったRefactoring RDF/XML Syntaxが更新されたものです。タイトルが変更になったので気をつけてください。また、Modularization of XHTML in XML Schemaは2001年3月以来の更新で、XML Schemaを使用したXHTMLのモジュール化についてのドラフトです。XML Schemaが正式な勧告になってから初めての更新となります。
また、XSLTは以前XSLT 2.0 Requirementsが発表されましたが、XSLT 2.0 として最初のドラフトが発表になりました。XSLT 1.1というのもありましたが、このドラフトはもう更新されないドラフトとなったので、XSLT 2.0へ移行したと考えていいでしょう。また同様にXPathも2.0のRequirementが2001年2月に発表されましたが、今回XPath2.0として最初のドラフトが発表になりました。
- RDF/XML Syntax Specification (Revised)(12/18)
- Modularization of XHTML in XML Schema(12/19)
- XSL Transformations (XSLT) Version 2.0(12/20)
- XML Path Language (XPath) 2.0(12/20)
次にXQuery(XML Query)を見ていきましょう。XQueryの中心となる仕様であるXQuery 1.0、それからXPath 2.0と関連したものが2つ、またXML Query Use Casesが発表されました。XPath 2.0はまだドラフトが発表になったばかりですが、互いに連携して仕様を固めていくようです。
- XQuery 1.0: An XML Query Language(12/20)
- XQuery 1.0 and XPath 2.0 Functions and Operators(12/20)
- XQuery 1.0 and XPath 2.0 Data Model(12/20)
- XML Query Use Cases(12/20)
そのほかにも発表されたものを見ていきましょう。Character Model for the World Wide Web 1.0では文字に関する問題を取り扱っています。CC/PP Implementors GuideのCC/PPとはComposite Capability/Preference Profilesのことでクライアント側の表示能力などをWebサーバとやりとりするための標準のことです。Authoring Tool Accessibility Guidelines “Wombat”では、オーサリングツールのアクセシビリティガイドラインが発表になりました。また、CSS TV Profile 1.0は、CSS2をテレビに対応にした仕様です。これらの仕様によりWeb利用領域はますます拡大されていくことでしょう。
- Character Model for the World Wide Web 1.0(12/20)
- CC/PP Implementors Guide: Privacy and Protocols(12/20)
- Authoring Tool Accessibility Guidelines "Wombat"(12/21)
- CSS TV Profile 1.0(12/21)
■発表されたノート
12月はノートの発表も多くありました。ノートはドラフトと違って勧告へと発展するものではありませんが、参考文書として発表されます。参考までにタイトル一覧だけ掲載しておきます。
- Component Extension (CX) API requirements Version 1.0(12/11)
- DAML+OIL (March 2001) Reference Description(12/18)
- An Axiomatic Semantics for RDF, RDF-S, and DAML+OIL (March 2001)(12/18)
- A Model-Theoretic Semantics for DAML+OIL (March 2001)(12/18)
- Annotated DAML+OIL Ontology Markup(12/18)
- CC/PP Implementors Guide: Harmonization with Existing Vocabularies and Content Transformation Heuristics(12/20)
- XHTML+Voice Profile 1.0(12/21)
ではまた来月お会いしましょう。
■関連記事SOAPの正体、その目論見 (XML eXpert eXchange)
連載:SOAPの仕掛け (XML eXpert eXchange)
XMLの新バージョン「Blueberry」解説 (XML eXpert eXchange)
■バックナンバー
2001年
・ 7月版 「XMLBase、XML Linkが勧告に」
・ 8月版 「リファレンスブラウザAmaya 5.1が登場したけれど」
・ 9月版 「MITが停電! そしてマルチメディア言語SMIL」
・ 10月版 「XMLの改定仕様はブルーベリー」
・ 11月版 「W3C Dayが待ち遠しい」
・ 12月版 「慶應大学で次世代Webに触れる」
2002年
・ 1月版 「XML 1.1、XSLT 2.0のドラフトついに登場!」
・ 2月版 「Webサービスアクティビティが発足」
・ 3月版 「XMLが4歳の誕生日を迎えました」
・ 4月版 「XMLを作った人たちが殿堂入りの栄誉!」
・ 5月版 「P3Pが勧告、そして怒とうの文書公開」
・ 6月版 「XML文書の正規化新仕様と、W3Cインタロップツアー」
・ 7月版 「SOAP 1.2のドラフトが発表」
・ 8月版 「4つのXPointerのドラフト、WSDL 1.2も登場」
・ 9月版 「ロゼッタネットとUCCが合併、XMLマスターに上級資格」
・ 10月版 「具体的な技術論へ移るセマンティックWeb」
・ 11月版 「XML 1.1が勧告候補、特許問題はついに決着か」
・ 12月版 「DOM2関連がもうすぐ完結、Webアーキテクチャも登場」
2003年
・ 1月版 「この1年でW3C勧告になったのは7つの仕様」
・ 2月版 「Webサービスの『振り付けグループ』が発足」
・ 3月版 「旅行業界がXML化へ、MSからは『InfoPath』が登場」
・ 4月版 「混迷の続くXPointerはついに落着?」
・ 5月版 「Webサービスの実験成功。WS-Iからは互換性ツール」
・ 6月版 「あいまいな部分を排除したSOAP 1.2、PNGはISO標準へ」
・ 7月版 「MITのW3Cオフィスはもうすぐ引っ越し、国連がebXMLを承認」
・ 8月版 「Webサービスが日本のAmazonからも利用可能に」
・ 9月版 「IEの特許侵害判決でW3Cが緊急会合」
・ 10月版 「IEの特許侵害判決がWebに与える影響は?」
・ 11月版 「IE特許問題で、W3Cが米国特許庁へ再審査を請求」
・ 12月版 「OfficeのXMLスキーマ公開、XML 1.1は勧告間近」
2004年
・ 1月版 「セマンティックWebに向けた動きが活発に」
・ 2月版 「日本人による標準技術発信が進むOASIS」
・ 3月版 「ついにXML 1.1が勧告へ、影響を受けるのは?」
・ 4月版 「XML Schema、3年ぶりの改訂が迫る」
・ 5月版 「Webサービス・セキュリティ v1.0、待望のOASIS標準に」
・ 6月版 「TravelXMLのWebサービス実証実験デモが成功」
・ 8月版 「SOAPメッセージ最適化をめぐる仕様が活発化」
・ 10月版 「W3Cの設立10周年を祝う記念祝賀イベント開催」
・ 12月版 「年の瀬に、WebとW3Cの功績に思いを馳せる」
2005年
・ 2月版 「XMLマスター資格試験が6月にリニューアル」
・ 4月版 「WS-Security 2004の日本語訳をXMLコンソーシアムが公開」
・ 6月版 「“愛・地球博”でビュンビュンWebサービス」
・ 8月版 「XMLキー管理仕様(XKMS 2.0)が勧告に昇格」
・ 10月版 「QAフレームワーク:仕様ガイドラインが勧告に昇格」
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