【「iPhone・iPadアプリ大賞2011」レポート】 グランプリは生徒と先生が作った役に立つARアプリD89クリップ(34)

今年のiPhone・iPadアプリ大賞を勝手に決めてしまうイベントで、最終プレゼンに選ばれた12組のアプリを紹介します

» 2011年12月26日 00時00分 公開
[佐藤翔ねこポッポ店長]

iPhoneアプリの忘年会でした

  12月22日、東京カルチャーカルチャーにて「iPhone・iPadアプリ大賞2011」が開催されました。開催2回目となる、今年のiPhone・iPadアプリ大賞を勝手に決めてしまうイベントです。応募総数28組から選ばれた12組のアプリを紹介します。

 司会は永沢和義氏(日本で最もまじめに更新されているブログ:モダン・シンタックスを運営)が努め、審査員席には林信行氏(フリージャーナリスト・コンサルタント)、高橋亮氏(AppBank編集長)、尾田和実氏(メディアジーン取締役)、ジェット☆ダイスケ氏(スーパービデオブロガー)が並びました。

むげんメモ ignote

 「むげんメモ」は、一見手書きのシンプルなiPad向けメモ帳に見えますが、驚くべきことに画面スペースの端にとらわれず無限に縦に横に書いていけます。拡大縮小も自由であり、人物の絵がどんどん宇宙まで遠ざかり縮小し、やがて他の惑星の人物にズームアップしていくデモンストレーションに、会場からはどよめきが上がりました。まるでiPadの中に独立した世界が存在しているような不思議な気持ちになります。

 他にも写真や地図の貼り付け、Dropboxにデータを書き出したり、スケジュールを縦に無限に書いたり、仕事で使えるよう実用的な使用例も紹介されました。

 開発者の中西氏のお気に入りは3本指でフリックするとアンドゥができる機能。これによってテンポよくメモやイラストを書けて、使い心地がよいです。「無限すぎてどこに書いたか分からなくなったらどうするんですか?」という審査員の質問に「ナビゲーション機能があり、好みのところにブックマークをしておくと、そこに直接飛べるようにしている」とのことで、使い勝手への気遣いも行き届いているメモ帳アプリです。

つい、盆栽。 さいたま観光コンベンションビューロー

 「つい、盆栽。」はiPhone上で盆栽の育成が楽しめるアプリです。名前を付けてフィギュアを飾ったり、水やりや掃除ができたりします。育てた盆栽は殿堂入りとしてマイコレクションに保存します。また、盆栽ギャラリーでは大宮盆栽美術館所蔵のコレクションが解説文付きで鑑賞でき、個性的で不思議な魅力を持つ盆栽の数々に、思わず盆栽ファンになってしまいそうです。

 盆栽育成以外に、さいたま市の飲食店などでこのアプリを見せるとお得なサービスを受けられます。これは「埼玉にもっと多くの人に来てもらう」という地域復興のコンセプトのためです。

 実際に盆栽を手入れしている画面が紹介されました。フィギュアが飾られ、クモの巣を取ったり水をやったりする様子を見るとなんとも盆栽が愛らしく見えてきます。話しかけた文章でTwitterに投稿もできます。

 「なぜクーポンに特化しなかったのですか?」という審査員の質問には「若い人に埼玉の名産品である盆栽に注目してほしい」とのことで、盆栽が実は海外に輸出するほど埼玉の名物であるとアピールしていました。

Xochi(ショチ) ティダ 

 「Xochi(ショチ)」は、曲のプレイリストを作成して、他のユーザーが作成したプレイリストを楽しめるアプリです。音源はYoutubeから取得し、オフライン時も再生ができます。他のユーザーが作ったプレイリストをまるごと再生でき、その中から気に入った曲だけを自分のプレイリストに入れられます。

 もちろん検索機能も搭載しているので、好きな曲を見つけられます。再生時には小さな画面ですが動画も同時に見られます。iPhone標準のミュージックプレイヤーのようにアプリを落としてもバッググラウンドで曲を鳴らし続けることができるため、BGMプレイヤーとしても重宝しそうです。

 「曲再生と同時に動画が見られるミュージックプレイヤーは新鮮」と審査員コメント。このアプリの楽しみ方はさまざまですが、やはりプレイリストの共有というソーシャルな要素がとてもユニークです。他のユーザーが作成した多くのプレイリスト(例えば「作業がはかどる曲」や「アリなアニソン」など)が気軽に聴けて楽しめたり、あるいはその中で思わぬ名曲に出会ったりするのがこのアプリならではの面白さなのかもしれません。

スマレジ プラグラム

 「スマレジ」は、「わ! これこそ未来のレジだ!」と思わせるアプリです。ショートコント形式で購入の流れをわかりやすく解説してくれました。iPhoneを商品のバーコードにかざし情報を読み取った後、預かり金を入力、チェックアウトボタンを押すと精算されてレジからレシートが出てきます。領収書も出せます。

 また、ピッとバーコードを読み取ることなく、あらかじめ登録しておいた商品をアプリ上でタップで選択し精算もできます。売上情報はサーバに送られ、ブラウザ上で売上分析や顧客分析、在庫管理ができます。1人1台、手のひらにレジを持っているような感覚で、とにかくスマートなレジです。

 このアプリの実店舗での導入について司会の永沢氏から質問。現在は数社で実際に導入していて、アプリ自体は無料ですが、iPhone、1台に付きサーバ利用料が月額1980円かかるそうです。審査員の高橋氏は「ぜひAppBankの店舗に導入してほしい!」とかなり興味津々な様子でした。

するぷろ for iPhone するぷ@和洋風

 「するぷろ for iPhone」は、iPhoneからブログを快適に更新できるブログエディタアプリ。開発者のするぷ氏自身がブログプロのブロガーであり、そのためユーザビリティには徹底的にこだわっています。アプリを立ち上げるとすぐに書き始めることが可能です。面倒に思える画像アップロードも画像を一括選択すると、画像のタグが瞬時に生成され楽々です。すぐにプレビュー画面もチェックできます。また記事にタグを付けたり、複数カテゴリ選択もでき、PCでブログを書くようにiPhoneでブログが書けてしまいます。現在、iPad版もリリース中です。

 「どんなブログにも書けるんですか?」という質問には、「現在はMovable TypeとWordPressの2つに対応しています」とのこと。

miil FrogApps

 「miil」は自分の食べたものを撮影してアップし共有するアプリで、タイムラインには他の人の食べ物が表示される、というと非常にシンプルなアプリに思えますが、食べ物を共有することが、食生活を改善するそうです。友達の意外な一面を知れることもあれば新しいお店を知るきっかけにもなります。

 「パンの人」という事例では、毎日3食、パンの写真ばかりをポストしている人が「不健康だよ」という周りの声によって食生活がガラリと変わった話が紹介されました。また、作った料理を褒められることが励みになるため、料理好きの女性ユーザーにも多くの愛用者がいるそうです。写真加工機能が秀逸で食べ物の色味を細かく調整し、よりおいしそうに見せられます。

 「自分の食事を自慢したくてポストすることはよくありそうだけど、食生活の改善が見られるのが面白いし素晴らしい。」と審査員からのコメント。「海外への展開は?」という質問には「世界中の食、例えばブエノスアイレスの人が何を食べているのかが見られたら面白いと思うので、これからどんどん海外の利用者も増やしたい。」と語りました。

サンタ狩り Hiroshi Iwasawa(サンタ狩り精鋭部隊)

サイボウズ賞

 「サンタ狩り」は、画面上部から迫ってくるかわいいサンタをタップして追い払うシンプルなゲーム。「カップルを影で結び付けている散多九郎主(さんたくろうす)なる怪を追い払う」という趣旨でゲーム画面とは対照的なオープニング画面のダークなサンタのビジュアルとBGMが強烈な印象でした。

 アプリの紹介の前に、開発者を含めた3人がサンタのコスプレでブレイクダンスを披露しました。アンチクリスマスをうたっているアプリの割にはなんともリア充でクールな演出です。ダンスのレベルが高く審査員から「このダンスは審査に含めるべきだろうか迷う(笑)」という声が上がりました。

 実際にプレイしている様子。最初は2、3人しか登場しないサンタですが徐々に数が増え、いつの間にか画面内に20人以上が登場し猛攻してきます。追い払うのが大変ですが、ドラッグでサンタを一気に一掃する時の感触はたまらなく快感でやみつきになりそうです。

おてんきひみこさま 雑魚雑魚

 「おてんきひみこさま」は、明日の天気を予想して当たれば民衆から貢物がもらえるゲームアプリ。天気を選択する画面では「てんのよかん」として、ある天気予報APIで取得した翌日の天気が表示されています。これを信じて晴れや雨を選択すれば良いわけですが、自分の勘を信じてもいい。その辺りがなんともシュールです。選択したら放置しておき、 翌日に答え合わせをします。

 当たれば、プーペガールのAPIから取得したリアルなブランドバッグ(の写真)などが手に入る。外れると民衆の気持ちが離れていきます。ファミコンのようなドット絵がかわいらしいです。

 異様な白装束の二人組の登場で仮装大会の様相を呈してきたイベントについて、審査員から「趣旨が変わってきている(笑)」との声が。プレゼン後半にはひみこさまが持っている神道の祭祀に使う大麻(おおぬさ)の紹介と作り方についてレクチャーがなされました。

東京今昔散歩 山崎潤一郎氏、大江和久氏

 「東京今昔散歩」は、東京で街歩きするのがかなり楽しくなるアプリ。楽しみ方は2つ。電子書籍として昔の東京の歴史やうんちくが楽しく読めること。もう1つが古地図や古い街並みの絵を見ながら街を歩き、写真を撮ってそれらと比較する楽しみ方です。古い街並みの絵と自分が撮影した現在の街並みの写真を上下に配置し、画像として保存したりTwitterに投稿ができます。

 実際にデモ画面で浅草の過去の街の姿といまの姿を比較して見ると面白さがよく伝わってきました。現在もどこかに名残があったり雰囲気を保っていたり、逆に失われてしまった建造物があったりして街の変遷に想いを馳せノスタルジックな気分に浸れます。

 電子書籍の部分に関してはHTMLで作成されているそうです。縦スクロールはもちろん、横にスワイプすることで横スクロールでき、次のページに移動してサクサク読めます。これなら外で歩いている時にも快適に読めそうです。

HiroshimARchive 首都大学東京 渡邉英徳研究室 渡邉英徳氏 グランプリ

 「HiroshimARchive」は、GoogleEarth上に立体的に表示される被爆者の方の証言動画や資料写真をブラウザで見ることのできるPC向けコンテンツ「HiroshimARchive」のiPhoneアプリ版です。iPhoneアプリ版では、自分がいる場所からどのくらいの距離でどんなことが起こったのかをARで表示し、当時の被害の規模を今自分がいる場所の地図上に重ね合わせることで、原爆の凄まじさを直感的に感じられます。このアプリで、どのくらいの範囲で何が起こったのかを感じてほしいそうです。東日本大震災のARアプリもPC版が公開されています。

 「ARを面白おかしく使う事例はよく見かけるけど、このような使い方は珍しく素晴らしいと思います」と審査員からコメントがあったように、大学の研究室で役に立つARアプリというテーマで、まじめに開発された成果が発表されました。ジェット☆ダイスケ氏も「広島や今回の地震のことをただ記録として残すのではなく、このアプリのように疑似体験してもらうということがとても大事だなと思います。素晴らしいです」と絶賛しました。

Petites Ondes プティット オンド Skip Note Studio ジェット☆ダイスケ賞

 ふわふわした優しい音色で「きよしこの夜」の演奏が始まりました。iPhoneのテルミンアプリでおなじみのSkip Note Studioが、今回新しく世に出すiPad用アプリがオンド・マルトノという楽器を再現したこのアプリ「Petites Ondes」です。

 オンド・マルトノはテルミンと並ぶ古典電子楽器で、右手で音程、左手の指で微妙な強弱を生み出します。鍵盤はあり簡単に弾けますが、あくまでガイドであって、実際に右手で操るのは鍵盤の下にあるリボンです。現在はめったに見ることができず絶滅危惧種とさえいわれている楽器だそうです。

 「音はどのように出しているのですか?」という審査員の質問に「サンプリングではなくて波形から作っています」とのことで、もはやiPhone・Pad電子楽器アプリの職人です。「まったくの素人が演奏できるようになるまでどれくらいかかりますか?」という質問には、「数日あればできます。ただ左手の強弱が少しだけ難しいかも」とのことでした。「演奏のガイド機能が付いてもっと敷居が低くなればいいですね」と審査員からの意見がありました。

縦型カレンダー ユニタック バッファロー賞

 その名の通り、縦型表示のカレンダーアプリ「縦型カレンダー」。日付が縦に、予定が日付の横に並んでいます。大の縦型カレンダー好きであるこのアプリの開発者・高橋氏自身が語るように、縦型カレンダーの素晴らしさは何といってもその一覧性。ひと目でスケジュールを把握できます。長期の予定は矢印で表示され見やすいです。一日の中に書ける文字量も多いです。そのため文字が小さくなってしまうと思いきや、ズーム表示ができるので問題ありません。

 おもむろに「これは手品じゃないですけど……」と、iPod touchの縦型カレンダーに入力した内容が即座にiPhoneの同アプリに反映される様子を見せてくれました。「これが、ディスイズiCloudなんですね?。」とさわやかに種明かし。カレンダーアプリでは珍しくiCloudに対応しています。「iPhoneの標準のカレンダーを縦型カレンダーにしてほしいくらいです」と審査員は絶賛しました。海外では特にフランスで受けがよく、雑誌にも掲載されたそうです。

iPhone・iPadアプリ大賞2011グランプリ:HiroshimARchive

 審査員ほぼ全員の意見が一致し、HiroshimARchiveがグランプリに輝きました。

  • 渡邉氏のコメント

「このアプリのコンテンツ自体(被爆者の方の証言など)は私たちが作ったわけではないので、このような賞をもらうことにはいつも葛藤があります。しかし評価していただけると、この仕事をやっていて本当によかったと思います。」

SoftBankSELECTION賞:miil

 賞品は、SoftBank SELECTION デジタルTVチューナーです。iPadやiPhoneで地上デジタル放送およびBSデジタル放送、110度CSデジタル放送をワイヤレスでリアルタイム視聴できるTVチューナーです。SoftBank SELECTION事業推進本部の宇佐美悠氏が「iPhoneの女性ユーザーとしてはぜひ使ってみたいアプリです!」と選択した理由を述べました。

筆者紹介

ねこポッポ店長

佐藤翔(さとうしょう)

猫の絵のTシャツを作ってます。

iPhoneアプリの開発をがんばって勉強しているのですが一向に上達しません。最近、運命の相手として、必ず僕の顔写真が表示される占いアプリを申請しましたが、リジェクトされてしまいました。

Facebook:http://facebook.com/satohsho



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