Aさんは、「これは仕事だから」と割り切ってやってきたマネジメントの業務と、「エンジニアとして活躍したい」という価値観やセルフイメージとの間にギャップがあり、「仕事がつまんない」と感じていました。しかし、「新しい技術、物づくりに関わり続けたい」という、Aさんにとって「本当に大切なこと」に気付いたとき、モヤモヤしていた理由が整理できました。
このように、あなたの中にある「本当に大切なこと」に気付くと、頭の中が整理しやすくなります。
さらに、Aさんは、エンジニアならではの「新しい技術、物づくりに関わり続けたい」という「本当に大切なこと」を、マネジメントの仕事に生かせないかと考えました。
エンジニアやプログラマーは「何かを生み出す人」、システム設計や、Webデザイナーは「デザインする人」のように、職種はさらに上位にある大きなくくりでまとめられます。仕事を大きなくくりで捉え直すと、共通項が見えてきて、あなたが持っているスキルや才能、好きなこと、得意なことを、他の仕事や職種に生かせます。
思考や感情が行動を生み、行動が環境を作ると言いますが、実は、思考や感情にはさらに上があります。「私は何者か」という価値観やセルフイメージが、思考や感情を生み出すのです。つまり、あなたにとって大切な価値観やセルフイメージに気付くことは、新しい思考や感情、新しい行動、新しい環境を生み出す可能性を作ります。
価値観やセルフイメージと、思考や感情、環境が一致していると、仕事が楽しく感じられます。行動にも無理がないでしょう。
価値観やセルフイメージが分かっても、「でも、会社が環境を作ってくれない」「上司がやりたい仕事をさせてくれない」のように、「本当は○○したいのに、会社が、上司、同僚がそうさせてくれない」と思うこともあるかもしれません。
その場合は、前回の記事「誰かを待っているだけでいいの?――『くれない病』にかかったら」を参考にしてください。会社が、上司が、同僚が「○○してくれない」のような、「くれない病」にかかっていると、主導権が会社、上司、同僚にあるため環境を変えられません。しかし、主語を「私」に変えて、できることから変えていくと、主導権を取り戻せます。
なお、価値観やセルフイメージがすぐに見いだせない場合もあるかもしれません。その場合は、「仕事がつまんない」と思ったときどきに、「何が私に『仕事がつまんない』と思わせるんだろう?」「本当にやりたいことは何だろう?」のように考えてみることで、次第に、あなたの大切な価値観やセルフイメージが見えてくるでしょう。
最後に、価値観やセルフイメージを見つける際のポイントをまとめます。ポイントは、2つあります。
1つ目は、「なぜ、私は仕事がつまんないと感じるんだろう?」のように、「なぜ?」と問わないことです。なぜなら、「なぜ?」は原因分析の問いのため、問題の原因を探して思考がネガティブになるからです。「何が私に」と問い掛けるのがポイントです。
2つ目は、「仕事がつまんない」と感じる背景には、前向きな価値観やセルフイメージがあることを前提に、興味を持って探すことです。「仕事がつまんない」のようなネガティブな思考や感情にも、その背景には「本当は○○したい」という前向きな価値観があります。
大切なのは、「なるほどね」で終わらせないことです。静かな場所に行って、コーヒーでも飲みながら、紙とペンを取り出して考えてみてください。
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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