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ブラウザーだけでレコーディングできる時代がやってくる!ものになるモノ、ならないモノ(65)(2/2 ページ)

1983年に生まれ、30余年の時を経た今なお、楽器分野はもちろん着メロや通信カラオケなど、音楽に関係するビジネスの第一線で活躍している「MIDI」規格。この古い規格をGoogle Chromeがサポートしたという。いったいどうしてなのか、これで何ができるのかを探ってみた。

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MIDI接続した鍵盤でブラウザー内のシンセサイザーを演奏できるWeb MIDI API

 一方のWeb MIDI APIは、Web Audio APIの可能性をさらに広げるために策定された規格だ。「ブラウザー内でシンセサイザーが弾ける」とはいっても、文字入力用のキーボードとマウスでは「演奏」は無理だ。やはり楽器として楽しむためには、楽器のインターフェースは必要だ。

 30余年の歴史を誇るMIDI規格だけに、世の中にはMIDIに準拠した入力装置、つまり鍵盤やドラム系のパッドなどが溢れ返っている。それらをブラウザーでも利用できるようにしようというのは当然の流れであろう。Web MIDI APIはそうやって誕生した。

 特に、Web MIDI APIの標準化を推進しているのが、AMEI(一般社団法人音楽電子事業協会)の有志の人たちというのだから、それもうなずける。AMEIは、電子楽器メーカーの業界団体だ。楽器メーカーの人たちからすると、このような新しいテクノロジに対しても、ハードウエアとしてのMIDI製品のポジションを確保しておきたいと考えるのは当然であろう。おかげで、MIDI接続した鍵盤でブラウザー内のシンセサイザーを弾ける、という夢のような体験ができるのだ。

 この動画は、Safariでアクセスした「Web Audio Drum Machine 10」というサイトでリズムを刻みながら、Chromeに立ち上げた前述の「Web Audio MIDI Synthesizer」をUSB接続のMIDI鍵盤で弾いているところだ。今となっては非力な2009年のMacBook Proだけに、さすがに音が途切れ途切れになるが、それでも楽しめてしまうところが恐るべしWeb MIDI API。鍵盤を弾きながらツマミを回すことで波形が連続的に変化しているのが分かるだろうか。マウスなどのPC系の入力装置だけではここまで楽しめない。

 ちなみに、SafariはWeb Audio APIには対応しているのだが、Web MIDI APIには非対応だ。この動画の場合、逆に非対応であることで、このような演奏が成り立っている。もしSafariがWeb MIDI API対応だったら、鍵盤でメロディを弾くと同時にドラムマシンのパッドを叩く信号も流れてしまうので、ハイハットの音だけでリズムを刻むことができなくなってしまうからだ。

驚愕! Web上でマルチトラックレコーディングが可能に

 今回のコラムの締めくくりに、Web Audio API、Web MIDI APIをフルに活用した強力なサイトをご紹介しておこう。「Soundtrap」は、ブラウザー上でマルチトラックレコーディングができるサイトだ。PCのマイクやオーディオインターフェース経由で楽器やボーカルを録音したり、MIDI機器を接続して演奏データを録音することができる。ギターアンプのシミュレーター、リバーブなどのエフェクト類がそろっており、このサイトにアクセスすれば、PCにレコーディングソフトをインストールすることなく、ちょっとしたマルチトラックレコーディングが楽しめる。

 試しに、筆者が制作中のマルチトラック音源をSoundtrapにアップロードしてプロジェクトを作ってみた。無料のユーザー登録を行った上で「Junichiro Yamasaki」をフォローし「@ITの記事読んだ」などのメッセージをくれれば、マルチトラック画面にアクセスできる招待状をお送りする(期間限定)。ぜひ、Web Audio API、Web MIDI APIの高度な音処理の世界を堪能してほしい。レベルの上げ下げや任意のトラックを単体で再生するなど、ちょっとしたレコーディングエンジニア気分を味わってもらえると思う。ちなみに、ここで歌っているアーティストは、萬木忍(まきしのぶ)という沖縄県の竹富島という星の砂で有名な島を拠点に活動している人だ。iTunes Storeで何枚かのアルバムを出しているので、機会があればぜひ聴いてほしい。


筆者が制作途中のレコーディング音源をSoundtrapにパート別にアップロードしたので、マルチトラック画面でバランスなどの操作が可能。左上の「EDITOR」をクリックすると各トラックの波形を見ることができる(期間限定リンク)。
「ものになるモノ、ならないモノ」バックナンバー

著者紹介

山崎潤一郎

音楽制作業に従事しインディレーベルを主宰する傍ら、IT系のライターもこなす。大手出版社とのコラボ作品で街歩き用iPhoneアプリ「東京今昔散歩」「スカイツリー今昔散歩」のプロデューサー。また、ヴィンテージ鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」の開発者でもある。音楽趣味はプログレ。近著に、「コストをかけずにお客さまがドンドン集まる!LINE@でお店をPRする方法」(KADOKAWA中経出版刊)がある。TwitterID: yamasaki9999


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