「韓ドロイド」に見る1年後のAndroidアプリビジネス:ものになるモノ、ならないモノ(44)(2/2 ページ)
1千万台以上のAndroid端末が日本にあふれる日も遠くないと予想されている一方で、アプリビジネスとなるとまだ寂しい限り。Androidアプリ市場離陸の鍵を探るヒントを、韓国へのアプリ取次ビジネスを展開している「韓ドロイド」に見た。
ローカライズし、選別して韓国市場に紹介
韓国のAndroidアプリマーケットは、前述の「T store」が大きなシェアを占めている。つまり、携帯電話オペレーターの公式マーケットが主導する形でアプリビジネスが立ち上がったことになる。
「本家のAndroid Marketでアプリを探してダウンロードする人は少ないし、紹介サイトもアプリ自身も韓国語にローカライズされていることが重要」(曺氏)だという。また、「Android Marketにアプリを出しても埋もれてしまい、それを欲しがる人のところに届かないという不幸がおきている。韓国語でアプリ紹介がなされ、良質なアプリとして選別・紹介されたマーケットに人が集まる」(曺氏)とも。
「韓ドロイド」は、そこに目を付けた取次ビジネスだ。取り次ぎを承諾した開発者からアプリの「string.xml」を受け取り、韓国語に翻訳して開発者に返送する。開発者がそれを埋め込んでビルドすると、韓国版アプリのイッチョ上がりというわけだ。
また、有料アプリの場合は、独自のDRM(サイトからライブラリをダウンロードして実装する)を埋め込む作業も発生する。韓国ではそのような方法で、日本だけでなく、世界中の開発者からアプリを集め、自国のAndroidアプリマーケットを充実させている。
ゲームカテゴリに入るアプリは、「ゲーム物等級審査委員会」(韓国の青少年保護法に基づいて設置されているコンピュータゲームの公的倫理審査機関)の審査をパスし、審査をパスしたことを証明するロゴを画面に表示(起動時に3秒間)しないと販売することはできない。当然、このような申請も日本から手軽に行えるわけはなく、コスト(日本円で7000〜8000円程度)も掛かる。そのような環境だけに、「韓ドロイド」のような取次ビジネスが必要とされるわけだ。
さらに付け加えるなら、ゲームアプリを韓国で売りたければ、取り次ぎを利用せざるを得ない状況もある。ゲームアプリに関しては前出のルールがあるため、「本家のAndroid Marketからはゲームがダウンロードできない仕組み」(曺氏)になっているそうだ。韓国ではゲームが一大産業になっているだけにユーザーの関心も高く、「ゲーム系アプリの方が売れる。プチゲームを提供してほしい」(曺氏)と日本の開発者に期待を寄せる。
ちなみに「韓ドロイド」では、「ゲーム物等級審査委員会」の申請費用も含めて、開発者に取り次ぎの初期費用は請求せず、レベニューシェア型のビジネスモデルを実践している。
例えば、「T store」で有料のアプリを配信した場合、『T storeアプリ売上=開発者様(45%)+韓ドロイド手数料(45%)+韓国税金(10%)』(同サービスのWebページより)というわけで、45%が手元に入る勘定だ。
開発者からすると、金銭的なリスクを負わずして、韓国のアプリビジネスにローカライズされたアプリで参入できるというメリットがある。このとき、同じアプリを「本家のAndroid Marketへもリリースしてもらってけっこう。ただし、韓国版ローカライズ済みのものは、弊社のみで扱わせてほしい」(曺氏)ということだ。
アプリビジネスの本格始動に必要な環境とは
韓ドロイドの曺氏の話を聞きながら思ったのは、日本のAndroidアプリビジネスも韓国同様、オペレーター主導のマーケットが本格展開を始めてからでないと離陸しないのではないかということだ。
実際、ケータイからスマートフォンに乗り換えたばかりの一般ユーザーが、「人気順」「日付順」程度しかプロモーション的なケアをしていない、しかも英語だらけの本家Android Marketにアクセスしてアプリを選んで買うのかというと、それは大いに疑問だ。
オペレーター主宰のマーケットに限らず、andronaviやAndroAppのような独自マーケットでも全然オッケーなのだが、とにかく、数多あるアプリの中から良質なものを選別して、そこにしっかりとした解説を加えて紹介するというサービスが一般に浸透しないことには、アプリビジネスの本格始動は難しいと思う。
それと、もう1つ期待しているマーケットがある。それは「Amazon Appstore」だ。
日本向けに日本語でストア展開がされるのかどうかはまだ分からないが、通常のAmazon.comで使われているリコメンデーション技術をそのままアプリにも利用するとのことだし、単純に類似アプリだけでなく、リアルな製品とアプリを関連付けてリコメンドするそうだ。例えば、鍵盤楽器としてのシンセサイザーを検索した人に、シンセのアプリも合わせてリコメンドするといったやり方だ。
かねてより、AppleのApp StoreにもAmazonの強力なリコメンドシステムがあればすごく有効だろうと思っていただけに、Amazonのアプリストアにこれが導入されれば大いに期待できる。特に、マニアック系のアプリ開発者からすると「それを欲しがる人にアプリの情報が届きやすくなる」わけだから、埋もれてしまう確率も減るだろう。
スマートフォン端末が本格的に普及するにしたがって、今後ますます、アプリビジネスへの関心が高まるのは必至。そこではアプリ販売だけでなく、コンテンツ・アグリゲーションのような周辺のビジネスも興隆するであろう。
ならば、インディ開発者もそのブームに乗ろうではないか。いまだ登場していない日本発の「Androidアプリ成功者」になるのは、あなたかもしれないのだ。
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著者紹介
山崎潤一郎
音楽制作業に従事しインディレーベルを主宰する傍ら、IT系のライター稼業もこなす蟹座のO型。iPhoneアプリでメロトロンを再現した「Manetron」、ハモンドオルガンを再現した「Pocket Organ C3B3」の開発者でもある。音楽趣味はプログレ。近著に、『ケータイ料金は半額になる!』(講談社)、『iPhone/Androidアプリで週末起業』(中経出版)がある。TwitterID: yamasaki9999
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