個人でもOKのLINE@、達人に聞く活用の極意:ものになるモノ、ならないモノ(61)(2/2 ページ)
店舗などから「友だち」に向けて1対多でメッセージを発信するためのビジネスアカウント「LINE@」が、個人にも開放されたが、どのように使いこなせば効果が上がるのだろうか? 開放早々にLINE@の利用方法にズバズバと切り込んだブログを公開した美容師、木村直人氏を直撃してみた。
個人が運用するLINE@個人のコスト問題について考える
LINE@個人の可能性について熱く語る木村氏だが、その一方でこのツールの限界も冷静に分析している。「友だち」が増えた場合の運用コストの問題だ。木村氏のアカウントには、LINE@個人の開始から原稿執筆時点までに約1900人の「友だち」ができた。驚異的なスピードで増えている。
無料でLINE@を利用する場合、利用可能な「吹き出し数」は、月に1000件が上限だ。注意しなければならないのは、メッセージ数ではなく、配信可能な「吹き出し数」という点だ。だから、「友だち」が1000人いたら月に1回メッセージを配信したら上限に達する。
そこで用意されているのが、月額5400円の有料プランなのだが、これも「友だち」数の上限は1万人までで、「吹き出し数」の上限は月5万件までと決められている。情報発信力の高い人であれば、『友だち』が上限の1万人に達する人も出てくるであろう。前述のように爆速で「友だち」を増やしている木村氏であれば、その可能性は高い。
「友だち」が1万人になった場合、コストを月額5400円の定額制の範囲に収めようとすると、メッセージ配信数は月に5通までに限定されてしまう。それを超えて配信したければ、LINE@の規定で1.08円/通の追加コストが発生する。情報発信力の高い人であれば、1日に数通のメッセージを配信することもあるだろう。逆に、1万人の「友だち」がいる背景には、そのような高い情報発信力があるであろうし、その状態を維持するためには、発信力を落とすわけにはいかないのではないだろうか。
これがLINE@個人ではなく、実店舗とともにECサイトなどを運営する認証済みアカウントであれば、直接的に集客・送客に結び付けることで、メッセージの配信コストを売上などでカバーできるかもしれない。実際、以前、筆者が取材したある複数の店舗や、ECサイトを運営し数万人の「友だち」を有するLINE@ユーザー企業は、月に数十万円のコストを掛けてメッセージ配信をしているのだが、「LINE@にそれだけのコストを掛けても店舗やECサイトからの売上で十分元は取れている」と話していた。
だが、個人が運用するLINE@個人では、そこまで直接的に損益を追いかけることはできない。月額5400円で収まるうちは必要経費として割り切れるが、ビジネスのために「友だち」数を増やせば増やすほど、コストを意識しなければならないことは覚えておこう。
その対策として木村氏は「『友だち』の質を見極めてブロックしなければならない」と教えてくれた。有名美容師である木村氏の「友だち」には、同業者もたくさんいるそうだ。そのような「友だち」は、基本的に木村氏の利益にはならない。木村氏としては「友だち」数の増加に伴い「厳選された顧客や見込み客を残していく方向」だと明かしてくれた。
ぼこぼこにdisられても受け流せるくらいの精神的なタフさが必要
今回、LINE@個人運用の達人である木村氏に話を伺ったわけだが、木村氏と話していて感じたのは、鍵は「運用のテクニック云々以前の問題」であるということだ。ここまでLINE@個人の運用についての話を書いて、最後に読者を突き放すようで申し訳ないのだが、木村氏の成功の背景にあるのは、自身の情報発信力の高さ以外の何物でもない。LINE@がどれだけポテンシャルを秘めたツールであっても、発信力が低いと無用の長物だ。
もちろん、これはLINE@に限らずどのようなソーシャルメディアにも言えることだが、木村氏は「インターネットで情報発信を行う限りは、ぼこぼこにdisられても受け流せるくらいの精神的なタフさがないとだめ」と言い切る。実際、家族のことなど、プライベートな情報に関するメッセージも多く配信している木村氏だが、ここまで徹底して自分をさらけ出すことに批判もあるそうだ。だが、「そのような僕を知ってくれた上で来店してくれた顧客は、固定客になってくれるし、基本的に相性の良いお客さん」だという。
うーん、強い。記事に対してたくさんの褒め言葉をTwitterでもらっても、たった1つのdisられたメッセージで凹んでいる筆者とは大きな違いだ。木村氏のように自分をさらけ出す勇気のない筆者は、ネットを利用して幾ばくかの収入を得ている身であるにもかかわらず、えらく中途半端存在なのかもしれないと思い知らされた取材でもあった。
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著者紹介
山崎潤一郎
音楽制作業に従事しインディレーベルを主宰する傍ら、IT系のライターもこなす。大手出版社とのコラボ作品で街歩き用iPhoneアプリ「東京今昔散歩」「スカイツリー今昔散歩」のプロデューサー。また、ヴィンテージ鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」の開発者でもある。音楽趣味はプログレ。近著に、「コストをかけずにお客さまがドンドン集まる!LINE@でお店をPRする方法」(KADOKAWA中経出版刊)がある。TwitterID: yamasaki9999
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