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1ギガ、本当に「現時点ではそんなもん不要」なのか?ものになるモノ、ならないモノ(2)

本コラムでは、ネットワークの新しいテクノロジや考え方に注目する。注目するテクノロジへの、企業の新しいスタンダードとして浸透していくことへの期待を込めてコラムタイトル「ものになるモノ、ならないモノ」にした。 第1回目の「社内ブログ」に続き、今回はギガ回線サービスにスポットを当てたい。(編集部)

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ファイバ回線値下げ競争が激化する関西圏

 まいどおおきに! もうかりまっか? ボチボチでんな〜

 どんよりと曇った梅雨空の下、大阪の地に降り立った筆者を迎えてくれたのは、コテコテの大阪弁、ではなくて、下り416.6Mbpsという“超”速光ファイバがもたらす怒とうの突風的ダウンロードだった。

ケイ・オプティコムのネットワーク内に設置されたサーバとの間で計測された数値。下り416.6Mbps、上り196.3Mbpsを記録。インターネット上のサーバとのやりとりとなると、ここまでの数値は期待できないかも。また、パソコン、ルータ、NICにもギガ対応のスペックが求められる。
ケイ・オプティコムのネットワーク内に設置されたサーバとの間で計測された数値。下り416.6Mbps、上り196.3Mbpsを記録。インターネット上のサーバとのやりとりとなると、ここまでの数値は期待できないかも。また、パソコン、ルータ、NICにもギガ対応のスペックが求められる。

 「弊社のサービスは、ホンマもんのギガでっせ」とでもいいたげに、関西電力系の通信事業者であるケイ・オプティコムが7月から開始する「eo光ネット(ホームタイプ)1ギガコース」は、光終端装置の出口までしっかりと理論上の速度1Gbpsを実現している。これで料金は、プロバイダ接続料込みの月額8700円(参照記事:@ITニュース:ケイオプティコム、最大1Gbpsの戸建向けFTTHサービス開始)というから、“どてらい男(やつ)”が登場しくさりおったもんや! と、中学生まで大阪で過ごした筆者の脳は大阪弁モードに切り替わるのだった。

 いや、うすうすは感じていた。大阪地域の光ファイバは競争が激しく、一般ユーザーにはうれしい買い手市場だと。シェア47%のNTT西日本を筆頭に、くだんのケイ・オプティコムが29%、USENが6%、そして新たに参入したYahoo! BB 光を加え、熾烈なユーザー獲得合戦を演じている。だから、競争原理がイマイチ働いているようには見えない東京の高止まりしている感の強い光ファイバ市場と比べると大阪のそれは実にうらやましい。

 話はそれるが、平行して走る路線の多い、大阪圏の鉄道各社も利用客を奪い合ってサービス競争を激化させている。山手線を中心に各鉄道が放射状に伸びる東京圏では、そうそう見られない光景だ。まあ、福知山線の事故はその競争がために起きた不幸という一面を忘れてはならないが……。ただ、光ファイバのラストワンマイル上であのような事故は起きないであろうからFTTHのサービス競争はどんどんしてほしいものだ。

オール1Gbps、“濃い”ユーザーから浸透させるという戦略

 「一般家庭にギガが必要か!?」などとヤボなことはいいっこなしね。月額4900円(ケイ・オプティコムの100Mbpsコース)というサービスがあるにもかかわらず、ギガを導入しようという人は、本当に必要かどうかは、二の次なのだ。ギガを導入したその事実が大切なわけで、日々スピードテストを行ってモニタの前で、「ムフフフ」などとほくそ笑む、そして、MTUの数値をこまめにいじりながら、ひたすら限界に挑戦する、やっぱそれでしょう!

 ただ、その一方で、「現時点ではそんなもん不要」とクールに見る人がいても当然、っていうか、ほとんどの人がそうだろう。ケイ・オプティコム・企画室経営戦略グループ経営企画チームマネージャー・曽我武司氏も、「どの程度のユーザーが使ってくれるのか見当もつかない。数パーセントのコアなユーザーが導入してくれたら万々歳かもしれない」とちょっぴり不安な一面ものぞかせる。

 ただ、この手のサービスはそれでいいのだ。ケイ・オプティコムでも、月額4900円で全行程が100Mbpsの「100メガコース」、共有部分は1Gbpsだがユーザーインターフェイスは100Mbpsの「100メガプレミアムコース」(月額5400円)、そして、オール1Gbpsの「1ギガコース」と、スペックの違いにより3段階の選択肢を設けているわけで、例えていうなら、多くの人はデルの普及型パソコンを購入し、フル機能満載のハイスペックパソコンを購入する人は一握りの人、という状況と同じであって、オール1Gbpsコースを選ぶ人は、まあ、一部の“濃い”ユーザーだけであろう。

 それにしても、光ファイバのメニューに速度の違う3つのコースがあると、一般ユーザーは何を選んでよいのか分からない気もする。特に、オール100メガコースと共有部分だけ1ギガコースは、ユーザーインターフェイスは同じ100Mbpsであって、料金は500円しか違わない。

 ケイ・オプティコム・経営企画室経営戦略グループ部長・荒木誠氏は、ライバルが共有部分をGbpsにしたこともあり、競争政策上「100Mプレミア(共有部分だけギガのサービス)」をメニューに加えたことを認めたうえで「今後の主力は、徐々にプレミアム(共有部分だけ1ギガ)に移行していく」としている。

 また、荒木氏の発言でちょっと愉快だったのは、プレミアムの名称で正直者をアピールする点。「他社のギガものは、共有部分は確かに1Gbpsでもユーザーインターフェイスが100Mbpsですよね。ライバルはギガギガと宣伝してますが、弊社のプレミアムは、名称に100Mを入れてます」とのこと。Yahoo! BB 光をけん制しての発言か?

ギガファイバで家庭向けのトリプルプレイをサポート

 同社では詳しい数字は非公開としながらも、昨年9月に実施した料金戦略が功を奏し、光ファイバの申込数が約3倍に増えたとしている。特に、そのうちの7割が、光電話とのセットでの申し込みだそうだ。光電話とは、0AB〜J番号で使えるIP電話のことで、NTTの固定電話を解約できるので、電話基本料金の1785円(3級局)分のコスト削減が可能になるというもの。100MコースとセットでこのIP電話の利用を申し込むと、月額5200円(2年間の利用を約束しなければならない)となり、Yahoo! BBの12M版ADSL3710円にNTTの電話基本料金を加えた値段よりも安価になるというのが、ケイ・オプティコムの最大のコロシ文句だ。

 上記のような光ファイバとIP電話のセットに加え、テレビの配信をも光ファイバで行おうというトリプルプレイ政策もケイ・オプティコムが力を入れている戦略だ。同社のそれは2心の光ファイバを各戸に引き込み、1心をネットとIP電話で使い、残る1心をテレビ放送の配信に使おうというもの。注意しなければならないのは、テレビの配信といってもIP放送ではないという点。地元のCATV局に伝送路として光ファイバを貸し出しているので、64QAM方式で変調されたデジタル信号が流されている。IP方式ではないので、Yahoo! BBのBBTVやKDDIの光プラスのような、VODサービスは実現できないが、CATVの配信なのでアナログ地上波もしっかり見ることができるというのは、うれしい。

 ちなみに、現在各社が行っている光ファイバなどを使ったIP放送では地上波の配信は行われていない。これは、テレビ業界側が著作権の保護を理由に配信を拒んでいるため。これは筆者の私見だが、配信を拒むのは、著作権は都合のいい言い訳でその根底には「俺の目の黒いうちには、IPなんぞにデカイ顔をさせてなるものか」という心理が働いているように思う。

ビジネス向けの格安ギガ回線にも期待

 さて、@ITの読者であれば、「安価なギガサービスは分かった。じゃあ、それをビジネスに利用できるのか」といった点が気になるであろう。荒木氏は「法人向けのサービスは検討中」とだけしか教えてくれなかったが、個人向けの様子を見ながら、そう遠くない将来に提供する予定はあるようだ。

 ただ、今回の「eo光ネット(ホームタイプ)1ギガコース」、さすがに基幹インフラでの使用には耐えないであろうが、用途を割り切ればビジネスでも使える部分はあるだろう。

 接続可能なパソコンは5台までならOKとしているし、固定のIPアドレスも月額4200円でオプション設定されている。また、一切のサポートは受けられないが、サーバを設置することも禁じていない。マルチメディア系制作企業でのコンテンツのやりとりであったり、ヘビーなコンテンツ配信の試験運用などに利用できたりするのではなかろうか。また、パソコンが5台程度のSOHO系オフィスなどでは、そのパフォーマンスは十分過ぎるほどであろう。ベストエフォートとはいえ、1Gbpsをうたう回線が月額8700円で使えるのだ。イマジネーションを働かせて自社のビジネスでの利用方法を考えてみよう。ちなみに、ネットワークの設計等が異なるであろうから、まったく同列には語れないことを承知の上でいわせてもらうと、USENの「BROAD- GATE02 光ギガビットアクセス」は、月額50万4000円なり。

著者紹介

著者の山崎潤一郎氏は、テクノロジ系にとどまらず、株式、書評、エッセイなど広範囲なフィールドで活躍。独自の着眼点と取材を中心に構成された文章には定評がある。


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