iPhoneアプリに広告を挿入してガッチリもうけるのだ:ものになるモノ、ならないモノ(36)(2/2 ページ)
iPhoneアプリに広告を挿入して1日に50万円ももうけている!と聞き、その仕組みを知りたくて、日米のアドネットワーク企業に聞いた
SDKを追加するためだけのバージョンアップでもAppleは審査を通してくれる!?
さあ、皆さん、iPhoneアプリを作って広告掲載でもうけてみたい! っていう気持ちになったでしょ? ということで、iPhoneアプリから、広告収入を得るまでの流れを紹介しよう。まず、広告収入を得るためには、無料アプリであることが重要。AdMobとトラフィックゲートともに、特に無料でなければならないという規定があるわけではないが、「有料アプリに広告が表示されると、レビューや評価でたたかれる」(ラーゲリン社長)というから、やはり無料がよさそうだ。
両者ともに、無料のユーザー登録あるいはアフィリエイト加盟手続きを行うことでSDKをダウンロードすることができる。
- アプリにSDKを組み込んでApp Storeに出す。もちろんAppleの審査が通らなければApp Storeで頒布できないのは通常どおり。ちなみに、アドネットワーク企業のSDKが組み込まれているという理由でアプリがリジェクトされるようなことはない。
- 無事にApp Storeに公開されたら、アドネットワークの会社に申請を行う。すべてWebから可能。
- アプリ内容の審査を経てから広告配信が開始される。
おおむねこのような手順なのだが、Appleの審査のほかに、アドネットワーク側の審査も必要なのかと、ちょっと面倒な感じもする。ただし、「弊社のアフィリエイト基準に沿っていれば問題なくパスする」(梅澤氏)、「Appleの審査を通過したアプリであれば、通常は問題ない」(ラーゲリン社長)ということなので、他人の権利を侵しているとか、公序良俗に反するとか、わいせつなどといった問題がなければ、おおむねOKだそうだ。ちなみに、すでに無料アプリをApp Storeで配信している人は、バージョンアップでSDKを追加してもOKだ。「AdMobのSDKを追加するためだけのバージョンアップでもAppleは審査を通してくれている」(ラーゲリン社長)と太鼓判を押してくれた。
梅澤氏は「自分のアプリがグレーな領域にあると感じたらSDKを組み込む前に相談してほしい。個別に対応する」と心強いお言葉を付け加えてくれた。ただ、アプリ開発者の気持ちとしては、Appleの審査を通過してもトラフィックゲートの審査に通らなかった具体例があるならぜひ知りたい。せっかくAppleの審査が通ったのにトラフィックゲート側ではねられたのでは機会損失になるからだ。
そこで、「個別事例は勘弁して!」と嫌がる梅澤氏を無理やり押さえ付けて(ウソ)具体例を聞き出したところ、大手ニュース配信サイトからヘッドラインとニュースを取得して表示する無料アプリへの広告掲載は許可できなかったそうだ。そのようなアプリの場合、発信元の許諾が取れない以上、そこで、広告料収入を得るという行為が、著作権的にグレーな部類に入るというところであろう。
では、広告料収入を稼ぐのであれば、どんなジャンルのアプリが適しているのだろうか。両者ともに、口をそろえて「日々継続的に立ち上げたくなるアプリであればジャンルは関係ない」という。想像するに、SNSアプリ、Twitterビュワー、グルメのようなコミュニケーション・情報系は有利だろう。また、単純な暇つぶしゲームなども、すき間時間に立ち上げたくなる。半面、使用に集中が要求されるゲームや楽器系のアプリは、広告がうざったく感じる人もいると思う。
筆者のアプリで広告効果を試してみた! が、結果は悲惨……
さて、ここまでは、アプリ開発者として広告料収入を得たい人の観点で書いてきた。しかし、その一方で、自分の作った有料アプリをiPhoneアプリ向けのバナー広告で宣伝したいという人もいるだろう。そこで、筆者自ら試してみた。筆者は、「マネトロン」というヴィンテージ鍵盤楽器をシミュレートしたiPhoneアプリを販売している。これを、AdMobを利用して宣伝してみた。実際、ラーゲリン社長によるとiPhoneアプリ広告の場合「アプリの宣伝が約半分を占める」というから、iPhoneアプリの宣伝はiPhoneアプリ内で行うのが手っ取り早いのかもしれない。
やり方は至って簡単。AdMobにログインして、「iPhone広告の作成」というメニューからアイコン付きの広告を簡単に作り発信することができる。前述のように、配信地域を選択することも可能。広告料金は先払いになるので、入金のメニューからクレジットカードを利用して簡単に支払うことが可能。ただし、最低入金額が50ドル(約5000円)は高くないか……。GoogleのAdWordsは、1000円から可能だ。
また、iPhone広告の場合、画面2のように配信先の端末をターゲティングできる。筆者の場合、すべての地域を選び、「Wi-Fiのみ」(アプリのサイズが35MBあるため)、「iPhone+iPod touch」という設定にした。
そして、最後に、1クリック当たりの広告料金を入札するのだが、初めてだし、よく分からなかったので、「0.04ドル」という初期値のままにしておいた。
さて、実際に自分のアプリを宣伝してみた結果だが、結論からいうと、まったくもって効果がなかった。まず、AdMob側で広告が承認されてから、約3時間であっという間に予算の50ドルを使い果たしてしまった。その結果が、画面3だが、8万5593回表示され、実際にクリック(タップ)されたのは1133回。ここではダウンロードされたかどうかまでは、トラッキングできない。で、その後のアプリの販売状況はというと、まったくもって変動なし。笑っちゃうくらい変化がなかった。ちょっと寂しかった……。
まあ、だからといってAdMob効果なしとはいわない。筆者が提供するようなロングテールのテールに位置するマニアックなアプリは、AdMobが提供するマス型の一斉配信宣伝には向かないのかもしれない。万人が好むゲームなどであれば、効果が得られるのであろう。
そしてもう1つ。のっけから「すべての地域」に配信してしまったのもいけなかったようだ。すでにアプリを販売している人であれば、どこの国でダウンロードが多いのかつかめているはず。であれば、まずは、その国や地域だけを設定してさらに深掘りするなど、国を限定して配信した方がいいだろう。でないと、筆者のように短時間で予算を使い果たして効果なし、という結果に終わる可能性もある。さらに付け加えるなら、配信広告は、文言やアイコンを変えて複数作成することが望ましい(簡単にできる)。実際、ラーゲリン社長によると「広告は5パターン程度作って配信し、効果が高いものをプッシュする方法を推奨する」と教えてくれた。
筆者のiPhoneアプリ宣伝作戦は、残念ながら結果を残せなかったが、iPhoneアプリで稼ぎたいと考えている人にとって、アプリ販売だけではない別の方法論が用意されているというのは素晴らしいことだ。さあ、「21世紀のゴールドラッシュ」ともいわれているiPhoneアプリでどんどん稼ぎましょう!
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著者紹介
山崎潤一郎
音楽制作業に従事する傍ら、IT系のライターもこなす蟹座のO型。最近、iPhone楽器系アプリ演奏ユニット「The Manetrons」を結成し、iPhone楽器アプリの可能性を追求中。近著に、『iPhoneアプリで週末起業』(中経出版)
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