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Androidアプリはビジネスになるのかものになるモノ、ならないモノ(38)(2/2 ページ)

「iPhoneアプリの次はAndroidだ!」と盛り上がっている開発者も多いと思う。今回は、大手プロバイダのNECビッグローブが始めたAndroidアプリ販売サイト「andronavi」を通して、Androidビジネスの可能性に迫ってみた。

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胴元が抜く「テラ銭」は3割

 もう1つ気になるのが、「テラ銭」だろう。つまり、胴元としてアプリの売上から何%抜くのだろうか。「基本は3割」(徳間氏)だそうだ。まあ、App StoreもAndroid Marketも開発者に7割が分配されるわけであり、それが相場というか、世界基準として市民権を得ている感がある。だからそんなものかなとも思う。

 ただ、その一方で、もっと積極果敢な肉食系のテラ銭システムを打ち出してほしい気持ちもある。例えば、「オタクのアプリを独占的に扱わせてくれたら9割をバックしますぜ、ダンナ〜」みたいな、アメとムチ型だ。

 おそらく今後、ほかにもAndroid向けアプリの販売サイトは立ち上がると思う。そこでみんながみんな「じゃ7割っつーことで」と右へ倣えするようなことになると、何ともAndroidらしくないし、キモチワルイではないか。

 そうえいば、NTTドコモもAndroid向けアプリのマーケットを立ち上げると発表しているが、まあ、あの会社のことだから、インディに門戸を開放するとは思えないので、この際ドコモのことは忘れていいと思う。あっちは、NTTドコモとお付き合いするにふさわしい大手コンテンツプロバイダさんたちにお任せしましょ(なんて皮肉ってしまったりして……)。

iモード的な月額継続課金の導入も検討中

 一方で、Androidアプリで心配になるのはセキュリティのこと。先日も、「Androidアプリに不正ソフト、パスワード盗難の恐れ」などというニュースが報じられただけに、この先セキュリティ環境がどうなるのか心配ではある。ビッグローブのandronaviでも当然そのあたりのことを強く意識しているようで、「不正アプリやウイルスの温床といった場にだけはしたくない」(徳間氏)という。

 コンテンツ保護の面でも同様のことがいえる。良質なアプリが登場するためには、やはりコンテンツホルダーが安心してアプリを登録できる仕組みが用意されていなければならない。自分が苦労して作ったアプリのリソースが第三者に勝手に使われたら、誰だって憤慨するだろう。

 その点「Androidは1.6以降でコンテンツ保護の仕組みなどが入り始めている」そうで、「OSのレイヤとサービスレイヤ、両方で保護の仕組み作りができればいい」(徳間氏)と今後の環境整備に意欲を燃やしている。

CamangiのAndroidタブレット端末「WebStation」
CamangiのAndroidタブレット端末「WebStation」

 大いなる可能性を感じるAndroidアプリビジネスの世界だが、その一方で不安もある。その不安とは、「本当にもうかるのか」という、ビジネス的そもそも論の部分だ。現状のAndroid Marketを見ると、有料のアプリを見つけるのに苦労するくらい「Androidアプリ=無料」という世界観が出来上がってしまっている。

 もちろん、有料アプリは無理とまではいわないが、ビジネスとしての体裁を保てるだけの市場が形成されるのだろうか。そのあたりの疑問について徳間氏は「継続的なビジネスを可能にする意味でも、例えば、月額課金の導入も有力な選択肢」という。つまり、コンテンツやサービスを使おうが使わまいが、あるいは、ユーザーがその存在を忘れていても、自動的に課金されるiモードちっくで日本的なアレである。

 この国のコンテンツ(アプリ)課金というのは、結局はそこに行き着くのネ、という気がしないでもないが、コンテンツ提供者やアプリ開発者が安定的に事業を継続するための有力な手段であることは間違いない。それに、ビッグローブやドコモといった日本の胴元がAndroidアプリのマーケットを開始することで、そのような継続課金導入を期待する開発者がたくさんいることも事実だ。ただし、それを受け入れるかどうかはユーザーが決めることであり、ガラパゴスケータイと同じビジネスができる保証はない。

 登場して1年余のAndroidだが、端末が本格的に登場する今年こそがAndroidビジネス元年といえる。そんな中、多くのインディ開発者が、iPhoneアプリに次ぐ希望の沃野としてAndroidに期待をかけていることだろう。素晴らしいことだと思うし、応援もしたい。

 ただそれには、インディに対しオープンな、しっかりとした課金や販促の仕組みを構築する胴元の登場が不可欠だと思う。NECビッグローブのandronaviがそのけん引役となってくれることを切望する。

「ものになるモノ、ならないモノ」バックナンバー

著者紹介

iPhoneアプリで週末起業

山崎潤一郎

音楽制作業に従事しインディレーベルを主宰する傍ら、IT系のライター稼業もこなす蟹座のO型。大ヒットアプリ「PocketGuitar」の笠谷真也氏とのコラボ「Pocket Organ C3B3」は、iPhone上にハモンドオルガンを徹底してクローン化した渾身の力作。近著に、『iPhoneアプリで週末起業』(中経出版)がある。


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