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iPhoneアプリにアプリ内課金を導入してガッチリもうけるのだものになるモノ、ならないモノ(37)(2/2 ページ)

「iPhoneのアプリ内課金(In App Purchase)ってどーよ?」 そんな疑問に答えるべく、アプリ内課金のサポート業務を行っている企業に現状と今後の見通しを聞いた。

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インディ狙いのFEYNMANと大手コンテンツ企業を狙うコニット

 まあ、そもそも、一定以上のクオリティを保ったコンテンツを継続的に提供し続けることのできるインディというのは、そうそう数が多くはないと思うので、Appleもそのあたりの事情は折り込み済みなのだろう。

コニットの橋本謙太郎氏
「大手狙い」というコニットの橋本謙太郎氏

 現に、コニットの橋本氏は、「うちのサービスは、大手のコンテンツプロバイダーしか相手にしていない」と言い切る。コニットのサービスは、初期費用40万円〜、アプリごとに10万円〜と、それなりの規模のユーザーを相手にしていることが料金からも分かる。ちなみに、これは「サーバ用のソフト販売サービスなので、サーバは開発者側で用意してほしい」(橋本氏)とのこと。

 その一方で、FEYNMANの「dodaii」は、1アプリ当たり月額980円+1トランザクションにつき15円と、インディ狙いのサービス。コニットとは異なり、コンテンツダウンロード、課金アイテム管理、購入履歴管理、売り上げ管理などを含めたASP型のサービスを提供している。

 「iPhoneアプリを作るスキルとサーバを構築したり運用するスキルはまったく別のもの。サーバの運用・管理に時間を取られるくらいなら、その部分はアウトソースしてアプリ開発に専念してほしい」(川畑氏)との思いからだ。それにしても、一般的なホスティングサービスと比較しても料金的に安価な部類に入る「dodaii」だが、「ほかに類似のサービスがなかったのでエイヤッで決めた価格」(川畑氏)だそうだ。

FEYNMANのチーフエバンジェリスト、川畑雄補氏
インディ系開発者を狙うFEYNMANのチーフエバンジェリスト、川畑雄補氏

 ただ、そのようなFEYNMANの思いとはウラハラに、インディ系のアプリでコンテンツダウンロード型のアプリ内課金を実装している例は、筆者の知る限りでは見当たらない。「ユーザー登録のキャンペーンをやっているが、様子見の開発者が多い」(川畑氏)そうだ。やはり、コンテンツダウンロード型は、インディにとって敷居の高いスキームのようだ。

 その一方で、大手にターゲットを絞ったコニットには、想定どおり大手からの引き合いがあるし、すでに稼働している実装例もある。例えば、ビジュアル系バンド雑誌のアプリ版「Cure」や、チャリティ系アプリの「ストリートチルドレン」などがそうだ。また、2010年の早い時期をめどに「ASP型のサービスも開始したい」(橋本氏)と明かしてくれた。ちなみに、ASP型のサービスは、「Amazon EC2」を利用して構築する予定だとか。

アプリ内課金は、使えないのか?

 さて、そろそろ結論を導き出さなければならない。iPhoneのアプリ内課金は、大いに有望なビジネスフィールドだと思う。ただ、現状を見る限り、将来に投資できるだけの資金やリソースに余力がある企業のためのものであり、繰り返しになるが、インディにとってはちょっとばかり荷が重い仕組みだ。そのためか、App Store内を見渡すと、依然として「機能を限定した無料アプリで注目を集め、フル機能の有料版に誘導する」という従来型の方法論が廃れていない。

 それどころか、コンテンツダウンロード型の威力が最も発揮されるべき「電子書籍」カテゴリの有料ランキングを見渡すと、同一シリーズでコンテンツが違うだけのアプリ(アイコンが同じやつね)がスクリーンを占拠するような状況がいまだに大勢を占めている(これって、iPhone内にシリーズをダウンロード購入すると、同じアイコンが並んでちょっと迷惑……)。

 それに、その分、ランキング外に押し出されるアプリもある。アプリ内課金が開始されて半年を経過するいまでも、このような、1コンテンツ1アプリの方法論でアプリを配信しているのが、名前の通った大手企業だったりすると、「あんたらこそ早々に実装すべきでしょ」という思いが先行し、ちょっとばかり違和感を覚える。

 というわけで、インディ開発者におけるiPhoneアプリビジネスは、

(1)新作アプリをリリースし続ける
(2)機能限定無料版バラマキ作戦
(3)前回のコラム「iPhoneアプリに広告を挿入してガッチリもうけるのだ」で紹介した広告料収入

 あたりが依然として主役で、そこに少しグレードアップして、

(4)内蔵型のアプリ内課金

が加わる、といった状況が現実的な選択肢だと思う。

 さて、文中で触れた筆者プロデュースの鍵盤楽器系アプリ「Pocket Organ C3B3」には、各115円のアプリ内課金アイテムが7つ搭載されている。

画面1 内蔵型モデルのアプリ内課金の様子
画面1 内蔵型モデルのアプリ内課金の様子(開発中画面のためSandbox環境でのキャプチャ)。購入画面はアプリ開発者が準備する必要がある。価格情報などはApp Storeから取得している。価格の部分をタップする。
購入を確認する表示
購入完了の画面
画面2 購入を確認する表示(上)と購入完了の画面(下)
画面3 ユーザーがiPhoneからアプリを削除した場合に備えて購入済みアイテムのリストアボタンも装備
画面3 ユーザーがiPhoneからアプリを削除した場合に備えて購入済みアイテムのリストアボタンも装備

 正真正銘のインディである筆者が取り組んだ内蔵型のアプリ内課金ビジネスの成果がどうだったのか、ユーザーの購買動線はどのような感じなのかなど、もろもろの結果報告をこの連載コラムで行うつもりだ。

「ものになるモノ、ならないモノ」バックナンバー

著者紹介

iPhoneアプリで週末起業

山崎潤一郎

音楽制作業に従事しインディレーベルを主宰する傍ら、IT系のライター稼業もこなす蟹座のO型。大ヒットアプリ「PocketGuitar」の笠谷真也氏とのコラボ「Pocket Organ C3B3」は、iPhone上にハモンドオルガンを徹底してクローン化した渾身の力作。近著に、『iPhoneアプリで週末起業』(中経出版)がある。


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