正式版となった「Azureポータル」では何が変わる?:Microsoft Azure最新機能フォローアップ(10)(3/3 ページ)
マイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Azure」では、日々、新たな機能やサービスが提供されています。今回は、2015年12月に正式リリースとなった新しい「Azureポータル」を紹介します。
クラシックデプロイモデルからリソースマネージャーへの移行
新しいAzureポータルの最大の変更点は、サービス管理API(Application Programming Interface)として「Azureリソースマネージャー(ARM)」が採用されたことです。
従来のサービス管理APIによるデプロイは「クラシックデプロイモデル」と呼ばれ、新しいAzureポータルはクラシックデプロイモデルとAzureリソースマネージャーの両方をサポートします(画面9)。
例えば、Azure仮想マシンは、仮想マシン、ストレージ、仮想ネットワーク、クラウドサービスといった、Microsoft Azureの複数のリソースで構成されます。クラシックデプロイモデルでは、個々のリソースを個別に管理、調整する必要がありました。Azureリソースマネージャーは、依存関係にあるリソースを「リソースマネージャー」という単位でまとめてデプロイ、管理、監視できるようにします。
Azure仮想マシンのリソースグループは、ストレージ、仮想マシン、可用性セット、仮想ネットワーク、ロードバランサー、IPアドレス、ネットワークセキュリティグループ(NSG、ファイアウォールとNAT機能を提供)などで構成され、クラウドサービスを必要としません。
また、Azure IaaS(Infrastructure as a Service)だけでなくPaaS(Platform as a Service)のサービスを含めてグループ化することができます。さらに、JSON(JavaScript Object Notation)形式のテンプレート(Azureリソースマネージャーテンプレート)を使用することで、複雑なアプリケーションのデプロイを大幅に簡素化できるようになっています。
マイクロソフトは今後のデプロイでは、新しいリソースマネージャーデプロイモデルを使用することを推奨しています。ただし、現状はクラシックデプロイモデルでなければ利用できないサービス(例えば、Azure BackupによるAzure仮想マシンのバックアップなど)も存在するため、クラシックデプロイモデルからリソースマネージャーデプロイモデルへの移行期と考えるべきでしょう。
クラシックデプロイモデルとリソースマネージャーデプロイモデルは、考え方や管理方法が大きく異なります。複雑なデプロイは、JSONテンプレートの記述やAzure PowerShellによる操作が必要です。従来のAzureクラシックポータルに慣れている人にとっては、少々難解かもしれません。
基本的なデプロイ操作は新しいAzureポータルのGUIで実行できるので、新しいAzureポータルの正式リリースを機に、簡単なデプロイからチャレンジしてみることをお勧めします。その際には、以下のホワイトペーパーが参考になるでしょう。
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筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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