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» 2013年10月15日 18時00分 公開

スルー防止も? BLEがもたらすビジネスチャンスものになるモノ、ならないモノ(53)(2/2 ページ)

[山崎潤一郎,@IT]
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儲かるビジネスモデルを構築できれば大いなるフロンティアが待っている

 BLEとは一切関係ない仕組みだが、LINEは「LINE@」という小規模店舗向けのマーケティングツールを提供している。

 これは、「友だち」登録してくれた店舗の顧客にセール情報やクーポンを配信する仕組みだ。登録済みの「友だち」は基本的に得意顧客ということ、LINEがプッシュ型のリアルタイムなメディアということもあり、メッセージの開封率は、店舗によっては6割〜7割を超えることもあるという。メルマガとは大違いだ。中にはLINE@の導入により、売り上げの数字が目に見える形で上がったという例もあり、注目している関係者は多い。

「LINE@」で「友だち」登録した店舗からのメッセージは、通常の「友だち」と同等の扱いでリアルタイムに通知されるので開封率が高い

 LINE@は、導入を判断する店舗の責任者自身がLINEのユーザーであることが多いので、仕組みが分かりやすく、導入に対する抵抗が少ないという利点もある。また、料金も月額5250円とリーズナブルだ(運用や管理にかかるコストもお店側の負担)。

 ただ、そのように導入ハードルの低いLINE@にしても、多くの店舗責任者は、LINE@が集客や売り上げ増に結びついているかどうかを徹底的に精査し、費用対効果を常に気にしている。店舗側は、それだけシビアだということだ。そんなLINE@と比較して、iBeaconsやPayPal Beaconは、あまりにも未知の領域だ。

 そのような未知の仕組みを売り込むのは大変なことだ。仮にあなたがiBeaconsのシステムを販売する営業担当として、あるお店に売り込みに行ったとしよう。店舗責任者は、矢継ぎ早に次の質問を投げかけてくるだろう。「初期導入コストは?」「アプリは誰が用意するの?」「毎月の運用コストは?」「情報を準備する手間はどれだけかかるの?」「集客効果を数字で示せる?」。そして最後に、「これを導入したら売り上げがいくら上がるの?」と。それらすべてに明確で合理的な回答を用意できないと、店舗責任者は首を縦に振らない。

 estimateのサイトやAppleの開発者向け資料の中には、美術館や博物館での展示品説明にiBeaconsを利用している例がある。展示品の前に立つと、iBeacons経由で展示品の説明がプッシュで送信されるというわけだ。とても便利だと思うし、自分の持っているiPhoneやiPadが使えるのはユーザーとしてうれしい。だがこれにしても、美術館側はもちろん、音声ガイド専用端末を供給している出入りの業者に対して儲かるスキームを用意してやらないと、そっぽを向かれるだけだ。

 同じBluetoothでも、ヘッドフォン、フィットネス系のセンサーといったデバイスの販売は、ある意味分かりやすい。無線の便利さや健康管理が効率的に行えることを訴求し、それにウン千円、ウン万円を支払ってもよいというユーザーにアピールすれば、刺さる人には刺さり、可処分所得の中からコストを度外視してお金を出してくれる。だが、BLEを利用したマイクロロケーション系のインフラとなると、費用対効果が厳しく精査されるのだ。

 何だか話が進むにつれて否定的なニュアンスになってしまったが、逆に考えると、BLEを利用した儲かるビジネスモデルを構築し、インフラ設置者を納得させるすることができたら、その先には、大いなるフロンティアが待っているのかもしれない。Bluetooth SMART READY対応のスマートフォンを持ち歩くほとんどの人が見込み客となるわけだから。

 最後に、BLEインフラが町中に普及した場合を夢想して、とても心配していることがある。町を歩くと、iPhoneの画面がとんでもないことになりそうだ。例えば、渋谷のセンター街を100メートル歩いただけで、セール情報やクーポンの「通知」で画面が埋め尽くされるようなことになったら、ウザッ!となって「通知」を即ブロックするか、該当アプリを削除する。そうなったら、マーケティングツールの意味がない。

 まあ、ブロックしないまでも、どこかの大手ショッピングモールの広告メールのように、受け取っても麻痺して開封すらしなくなるかも……。

著者プロフィール

山崎潤一郎

音楽制作業に従事しインディレーベルを主宰する傍ら、IT系のライターもこなす。大手出版社とのコラボ作品で街歩き用iPhoneアプリ「東京今昔散歩」「スカイツリー今昔散歩」のプロデューサー。また、ヴィンテージ鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」の開発者でもある。音楽趣味はプログレ。OneTopi「ヴィンテージ鍵盤楽器」担当。近著に、『AmazonのKindleで自分の本を出す方法』(ソフトバンククリエイティブ刊)がある。TwitterID: yamasaki9999


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