このままではヤバイ! ということで、事業者などが中心になって対応を取り始めている。無線LANビジネス研究会でもそのあたりは活発に議論されていた。
対策のポイントは次の3つだ。
無線LANには、2.4GHz帯の他に、5GHz帯の周波数も国際的に割り当てられている。「5GHz帯は、電波もクリーンで実質19チャンネルの利用が可能」(小林氏)ということなので、各社とも最も有効な対策としている。
ただ、スマートフォンの5GHzへの対応はまだまだこれから。SBMの場合「冬モデルから対応」(小林氏)という。ちなみにiOS製品でいうと、iPhoneは未対応だが、iPad2、iPad 3rdは対応している。「5GHzと2.4GHzが使える場合は優先的に5GHzに接続するので、ユーザーが意識する必要はない」(小林氏)そうだ。
キャリアや無線LAN事業者間で話し合いながらアクセスポイントを設置しようという話だ。無線LANビジネス研究会では、事業者間連携に関して、総務省に対し「積極的に音頭をとってほしい」という意見が出された。
ただ、これはどうだろうか。認定機器さえ利用すれば自由に設置できるのが、無線LANの魅力だ。「官」がガイドラインのようなものを策定して、「あーしろ、こうしろ」というのは、ちょっとばかりスジが違うような気もする。それに、事業者間でも競争があるわけだし……。
各社が1つのアクセスポイントに相乗りしましょう、という考え方だ。すでにこの取り組みは始まっており、SBMの場合は「大阪の市営地下鉄で他社との共用型アクセスポイントが稼働している」(小林氏)そうだ。
例えば3〜4社の事業者が相乗りした場合、アクセスポイント数は3分の1〜4分の1に削減できるので、効果がありそうに思える。しかし、SBMが実施したある実験の結果を見ると、さほど「効果的」というわけではなさそうだ。
図2は、新宿の街を歩いて調査した2.4GHz帯無線LANアクセスポイントのSSIDの検知回数だ。SBMと他キャリアの合計が147回であるのに対し、その他(Wi-Fi事業者、個人設置、モバイルWi-Fiルータ系)の検知回数が665回もある。
ここから分かるのは、たとえキャリア系のアクセスポイントを共用型にしても、その他のアクセスポイントの数の方がはるかに多いということ。この結果、アクセスポイントの「数減らし」という意味では大きな効果は期待できない、というのがSBMの主張だ。
というわけで、最も効果的な対策は「みんなで5GHzに移行しよう」ということに尽きるようだ。
となると、ユーザーの多いiPhoneが、いつ5GHz帯のWi-Fiに対応するのか気になるところ。iPhone4Sには、村田製作所のWi-Fi/Bluetooth/FM送受信のコンボモジュールが搭載されているようなので、それがデュアルバンドに対応し、次期iPhoneに実装されることが必要になるだろうか。期待したいものだ。
最後にSBMの面白い取り組みをご紹介しよう。コミックマーケット(コミケ)の会場に無線LANアクセスポイントを背負ったWi-Fi忍者を忍び込ませているというのだ(図3)。
コミケには、3日間で延べ数十万人の来場者が訪れる。そうなると「どのキャリアも接続できなくなる」(小林氏)そうで、各社ともに3Gの移動基地局が出動するのだが、それでも追いつかないそうだ。
そこで考えたのが、無線LANアクセスポイントを背負った要員を会場内で移動させながら電波を拾うという手段。別にわざわざ人を配置しなくても、固定の無線LANアクセスポイントを臨時に設置すればよいと思うのだが、「アクセスポイントの設置は主催者側から許可が下りなかった。要員が背負って移動するのであればOKだった」(小林氏)という事情がある。バックボーンは、前述の1.5GHz帯の3G回線を利用するそうだ。涙ぐましい努力というか、ユニークなアイデアに脱帽だ。
山崎潤一郎
音楽制作業に従事しインディレーベルを主宰する傍ら、IT系のライターもこなす。大手出版社と組んで電子書籍系アプリもプロデュースしている。ヴィンテージ鍵盤楽器アプリ「Manetron」「Pocket Organ C3B3」の開発者でもある。音楽趣味はプログレ。OneTopi「ヴィンテージ鍵盤楽器」担当。近著に、『心を癒すクラシックの名曲』(ソフトバンク新書)がある。TwitterID: yamasaki9999
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