エモーショナルな文字入力を可能にした「7notes」の秘密ものになるモノ、ならないモノ(45)(2/2 ページ)

» 2011年10月21日 10時00分 公開
[山崎潤一郎@IT]
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Android版も登場、夏モデル以降であれば快適に入力

 そんな快適手書き入力の「7notes」が、Android端末でも使えるようになった。10月7日から「7notes with mazec」の名称でベータ版が配布されている(10月31日まで)。

開発部門のリーダーとしてMetaMojiを引っぱる浮川初子専務。熱く語る社長とは対象的に、論点の核心をズバッと突いた受け答えが印象的だった 開発部門のリーダーとしてMetaMojiを引っぱる浮川初子専務。熱く語る社長とは対象的に、論点の核心をズバッと突いた受け答えが印象的だった

 Android版の最大の特徴は、他のアプリでも文字入力時にmazecを起動して手書きで文字入力できる点にある。iOSの場合は、サードパーティがIMEを提供できるようなスキームになっていないので、好きなアプリで「7notes」の手書き入力を堪能することはできないが、Androidならその点はバッチリだ。

 ただし、快適な手書き入力を堪能したいなら、夏モデル以降のスマートフォンでの利用を推奨する。というのは、筆者はauのIS05(2011年3月発売)とNTTドコモのXperia arc(2011年3月発売)にインストールして試してみたのだが、iOS版と比較して、その快適性はかなりスポイルされている。画面上を走らせた指への軌跡の追従性が悪く、iOS版で行っているような感覚で書くと、とたんに文字が切れ切れに描画されてしまい、文字認識もうまくいかない。

 だが、「夏モデル以降に発売されたスマートフォンは、どの機種もセンサ類などハードウェアの処理能力が各段に向上しているので、それで試してほしい」(浮川専務)という。

 実際、「GALAXY S II」(2011年夏モデル)にインストールされた「7notes with mazec」を試してみたのだが、iOS版に引けを取らない快適入力を体験できた。これなら「あめんぼ」のように指を滑らせることができ、手書き入力もまったく問題がない。自分の好きなアプリと組み合わせて手書き入力を実現できるAndroidならではの優位性がまさに発揮される部分だ。

iOS上でもサードパーティ製IMEを!

 それにしても、一度こうやってAndroid端末で快適な手書き入力を体験してしまうと、iPhoneやiPadでも、メーラーやTwitterクライアントなど好きなアプリ上で手書き入力をしたくなる。

 これについて浮川社長は「Apple側がIME周りのフレームワークを閉じているので、我々ではどうしようもない」と憤る。そういえば、パソコンでは定番の「ATOK」のiPhone版「ATOK pad for iPhone」も、他のアプリの入力に使うことができない。

 日本人としてこれはAppleに切に訴えたいのだが、iOS上で日本語入力のサードパーティ製IMEを使えるようにしてほしいものだ。セキュリティ対策などの理由から門戸を閉ざしているのだろうが、Mac OSではサードパーティ製IMEが使えることを思うと、何とも残念だ。

 方法がないわけではない。クリップボードやアプリ間でデータをやりとりする機能を経由して、入力した文字を他のアプリと共有するのだ。

iOS版の「7notes」や「7notes mini(J) for iPhone」では、アクションボタンのタップで、入力内容をテキスト、PDF、JPEGといった形式で他のアプリへ受け渡すことが可能 iOS版の「7notes」や「7notes mini(J) for iPhone」では、アクションボタンのタップで、入力内容をテキスト、PDF、JPEGといった形式で他のアプリへ受け渡すことが可能

 ただ、クリップボードを利用する場合などは、(1)入力した文字をコピーして、(2)アプリを切り替えてから、(3)ペースト、などとやっていると、面倒でしょうがない。このため、iOS版の「7notes」や「7notes mini(J) for iPhone」では、ワンタッチでクリップボードにコピーしたり、メーラーなど他のアプリへ受け渡すアクション機能が搭載されている。

 ただ、「7notes」→「他のアプリ」のデータ移動は簡単に行えても、受信メールに引用符を付けて返信文章を作成したり、Twitterクライアントなどで他人のツイートを引用して自分のツイートを書き込むような「データのピンポン」が必要な場合は、これまた面倒な操作が必要になる。とても実用的とはいえない。そうなると、他のアプリの側にも「7notes」にワンタッチでデータを受け渡せる機能が欲しくなる。

 故スティーブ・ジョブズ氏は、パソコンに「エモーション」というキーワードを持ち込んで、Macintoshを単なる情報ツールから、誰でもクリエイターになれるツールに仕立て上げた。

 指を使ってタッチパネルで操作するスマートフォンやタブレット端末は、右脳に訴えかけるエモーショナルな面を多分に持っていると思うのだが、文字を入力する段になって画面下部からせり上がるソフトキーボードを目にした途端、突然ロジカルな思考を要求されているようで気分が萎えることが多い。

 しかし、手書き入力を行っていて思うのは、エモーショナルな感覚を継続させたまま文字入力に移行できるという気持ちよさだ。浮川夫妻には、タッチパネル端末における手書き文字入力の分野でさらなる高みを目指してほしいものだ。

「ものになるモノ、ならないモノ」バックナンバー

著者紹介

iPhoneアプリで週末起業

山崎潤一郎

音楽制作業に従事しインディレーベルを主宰する傍ら、IT系のライター稼業もこなす蟹座のO型。iPhoneアプリでメロトロンを再現した「Manetron」、ハモンドオルガンを再現した「Pocket Organ C3B3」の開発者でもある。音楽趣味はプログレ。近著に、『ケータイ料金は半額になる!』(講談社)、『iPhone/Androidアプリで週末起業』(中経出版)がある。TwitterID: yamasaki9999


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