さて、freetelの1万2800円は安価で素晴らしいのだが、LTEのサポートなど、より性能がアップした端末を期待する自分がいるのも確かなのだ。しかも価格はできる限り安価にお願いしたいと、わがままも言っておく。特にfreetelはテザリングが可能なので、回線縛りのない安価なモバイルWi-Fiルーター代わりに使うことができれば、モバイルライフがこの上なく充実すること間違いない。
朗報がある。プラスワン・マーケティングでは、2014年末をめどに4.5インチ画面のLTEスマートフォンの発売を予定しているそうだ。「価格は1万5000円以内に抑えたい」(増田氏)というから頼もしい限り。ただ、商品の企画から完成まで45日を実現しているのに、LTE版の登場が2014年末とは悠長な話に聞こえる。
現時点では、LTEチップの供給に絡む問題があり、LTEへの対応を見送っているそうだ。LTEチップの生産は、現状、クアルコムがほぼ独占している状態だという。そのため価格は「約80ドル」(業界関係者)と高止まりした状態が続いている。
そんなLTEチップのビジネスに、台湾のチップメーカー、MediaTekが参入するというニュースが流れた。となると、現時点で公表されているわけではないが、スプレッドトラムのような中国企業もLTEチップに対し沈黙したままでいるとは考えにくい。
そこで期待できるのがLTEチップの価格下落だ。業界関係者の中には、台湾や中国の企業が参入することで「価格は4分の1まで下がる」と占う者もいる。なるほど、LTE版freetelは、それを待ってからという話のようだ。また、タブレット端末への参入も予定しているそうだ。「7インチ画面でクアッドコアを搭載し、セルラーモデルで1万9800円を実現したい」(増田氏)というから、こちらも期待が膨らむ。
今回、freetelを取材して感じたのは、コモディティ化が極限まで進んだ今、デジタルデバイスにおける「メーカー」って何? という疑問だ。
突き詰めてしまうと「端末ブランドの構築とサポート業務」がメーカーの仕事となっているわけで、「Designed by Apple in California Assembled in China」と製品に刻印しているAppleなどは、その大規模な例といえるのだろう。「デザインコンシャスな端末」というブランドを構築したAppleに対し、徹底した安売りブランドのfreetelといった構図といえるだろうか。
なるほど、こんな時代だからこそ、工場然とした巨大な施設と千人を超える従業員を抱えるPMCのような企業が生き残っていくのは、難しいということを再確認させられる取材でもあった。
実際、PMCにもリストラの嵐が吹き荒れ、日本国内でのスマートフォンの製造を休止すると発表している。iモードの全盛期、ガラケーが破竹の勢いを保ち、日本メーカーがわが世の春を謳歌していた時代がつい先日のように感じられ、筆者は、書斎の窓を開けて叫びたくなった。「ぜんぶスマホのせいだ!」
山崎潤一郎
音楽制作業に従事しインディレーベルを主宰する傍ら、IT系のライターもこなす。大手出版社とのコラボ作品で街歩き用iPhoneアプリ「東京今昔散歩」「スカイツリー今昔散歩」のプロデューサー。また、ヴィンテージ鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」の開発者でもある。音楽趣味はプログレ。OneTopi「ヴィンテージ鍵盤楽器」担当。近著に、『コストをかけずにお客さまがドンドン集まる! LINE@でお店をPRする方法』(中経出版)がある。TwitterID: yamasaki9999
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