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うっかり混乱する“よく似た会計用語”まとめお茶でも飲みながら会計入門(71)

意外と知られていない会計の知識。元ITエンジニアの吉田延史氏が、会計用語や事象をシンプルに解説します。お仕事の合間や、ティータイムなど、すき間時間を利用して会計を気軽に学んでいただければと思います。

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本連載の趣旨について、詳しくは「ITエンジニアになぜ会計は必要なのか」をご覧ください。


今回のテーマ:うっかり間違えやすい「会計用語」

 どの業界にも、似ているけれど意味が全然違う言葉があります。

 プログラム開発で0と'0'は違う意味ですし、マイクロソフトのOutlookとOutlook Expressは異なる製品です。JavaとJavaScriptもまったく別物です。

 これらは、エンジニアの皆さんなら「知っていて当然」かもしれません。しかし、専門外の人にとっては「何が違うの?」という感じでしょう。

 同様に、会計でも「似ているけれど意味が違う」会計用語がたくさんあります。今回はそのうち、多くの人を惑わせてきた代表的な単語について、解説します。

  • 【資産】vs.【純資産】
  • 【収益】vs.【利益】
  • 【営業利益】vs.【経常利益】

【1】資産vs.純資産

●資産

 「資産」は、文字の意味そのまま、「資産価値のあるもの」を言います。現金、売掛金、土地などが相当します。

 エンジニアが開発したソフトウェアも資産に含まれます。自社開発の場合、開発に要した人件費も資産となることがあります。

●純資産

 「純資産」は、純情な資産……なわけではありません。「資産」から「負債」を差し引いた金額を表します。純資産は一言でいえば「会社の価値」です。

 例えば、あなたのフィアンセが、1000万円の貯金とローンで購入した4000万円のマンションを所有しているとします。その場合、資産と純資産はこうなります。

  • 資産:5000万円(マンションと貯金の合計額)
  • 純資産:1000万円(貯金)

 マンションは、ローンで購入したものであり、マンションという4000万円の資産が増えると同時に、ローンという4000万円の負債が増えています。そのため、純資産が増えません。いわゆるお金持ちは「純資産」の多い人のことを言い、会計でいう「資産」をたくさん持っている人ではないのです。

 異性の経済力が気になる方は、相手の資産と純資産を会計的に考えてみることをおすすめします。

【確認問題1】

A精機は、1億円の借り入れを行って、1億円の新基幹システムを完成させた。これによりソフトウェアという(  )は増えるが、会社の価値を示す(  )は増えない。

【2】収益vs.利益

●収益

 「収益」は、会社が手にする金額の総額です。売り上げという言葉が一番なじみ深いかと思います。

●利益

 「利益」は、収益からコストを差し引いた金額です。それだけたくさん収益があっても、コストがかかっていたら、利益は上がりません。利益を上げることにより、純資産が増加し、会社の価値が上がります。

 具体的に両者の違いを見るために、昔話の「わらしべ長者」を考えてみましょう。

 この話の主人公は、わらからスタートして、物々交換によって家を手に入れます。この中に、「反物」と「馬」を交換するくだりがあります。反物の価値は10両、馬の価値は100両とします。収益と利益はそれぞれいくらになるでしょうか。

 収益は手に入れたものの価値を指すので100両となります。利益は収益からコストを差し引いて計算するため、手に入れた馬から差し上げた反物を引いた金額、100-10=90両となります。

【確認問題2】

B商事の営業部門は大型のシステム案件(3億円)を受注した。この案件のプロジェクト管理がうまくいかず、開発コストも3億円かかってしまった。その結果、(   )目標は達成したが、(  )目標は未達となってしまった。

【3】 営業利益vs.経常利益

●営業利益

 営業利益は、「売上から売上原価・販売費・一般管理費を差し引いた金額」を言い、“本業”でどれくらいの利益が出たかを示します。

●経常利益

 経常利益は、営業利益から、支払利息や受取配当金といった“本業以外”の部分から発生する損益を加減した金額を言い、経常的にどれくらいの利益が出ているかを示します。

 今度は、2人のフリーエンジニアに登場してもらいましょう。Cさんはシステム開発の実装を請け負って、今月30万円を得ました。一方、Dさんは、今月はシステム開発がなかったため、普段から腕を磨いているパチンコをして30万円を得ました。

※ 通常、会社では人件費(給与)がコストとなりますが、フリーエンジニアのため、ここでは考えないこととします。

 Cさんは営業利益30万円、経常利益30万円です。Dさんについては、パチンコで得た収入は、本業で得たものではないので、営業外収益となります。その結果、営業利益は0円、経常利益は30万円となります。

 この例でもイメージできるように、営業利益をあげている会社は、自社で本業と掲げている事業でもうかっている会社です。一方、経常利益を上げている会社は、本業かどうかは別として、取りあえずもうかっている会社です。

【確認問題3】

Eソフト社は、今期業績が好調で( )利益は1億円だったが、本業以外に銀行借入金の支払利息が1億円あったため、( )利益は0円となった。


 間違いやすい言葉、いかがでしたでしょうか。IT業界でも、専門外の人が使う表現に違和感を覚えることがあると思います。上記の言葉の違いを理解すれば、経理関係の方ともちょっとした違和感を持たれず話せるかもしれませんね。それではまた。

※ 確認問題の答え

1.資産、純資産

2.収益、利益

3.営業、経常

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筆者紹介

吉田延史(よしだのぶふみ)

京都生まれ。京都大学理学部卒業後、コンピュータの世界に興味を持ち、オービックにネットワークエンジニアとして入社。その後、公認会計士を志し同社を退社。2007年、会計士試験合格。仰星監査法人に入所し現在に至る。共著に「会社経理実務辞典」(日本実業出版社)がある。

イラスト:Ayumi



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