企業エンジニアとフリーエンジニアの社会保険料を比較するお茶でも飲みながら会計入門(67)

意外と知られていない会計の知識。元ITエンジニアの吉田延史氏が、会計用語や事象をシンプルに解説します。お仕事の合間や、ティータイムなど、すき間時間を利用して会計を気軽に学んでいただければと思います。

» 2012年03月21日 00時00分 公開
[吉田延史公認会計士]

本連載の趣旨について、詳しくは「ITエンジニアになぜ会計は必要なのか」をご覧ください。


  前回のサラリ−マン編に続き、今回はフリ−ランスの社会保険料について解説します。今回も、健康保険と年金にスポットを当てて見ていきます。

 果たしてサラリ−マンと比べて、多いのか少ないのか……!?

※以下、平成23年度分のデ−タを使用しています。

【1】サラリーマン/フリーランスが入る保険・年金の種類

 まずおさらいです。サラリーマンは、健康保険と厚生年金保険に加入します。

  • 健康保険
  • 厚生年金保険

 個人事業主や無職の人の場合、下記のものに加入します。

  • 国民健康保険
  • 国民年金制度

【2】自治体ごとに値段が違う「国民健康保険」

 国民健康保険は、各地方自治体が運営しています。保険料の算定方法は各自治体が決めます。

 金額には、地方ごとに意外と差があります。3つの都市の算定方法を下表にまとめました(分かりやすくするため、40才以上の方が対象となる介護分は除きます)。

 保険料は複数の計算方法を組み合わせて算定したものの合計額です。それぞれの計算方法の概要は以下のとおりです。

  • 所得割……前年度の所得をもとに算定
  • 均等割……世帯の保険対象者の人数をもとに算定
  • 平等割……世帯単位ごとの固定額
※どの方法も、採用している自治体とそうでない自治体がある

●東京都世田谷区の場合

  • 所得割:(昨年の所得額−33万円)×8.09%
  • 均等割:世帯の被保険者数×3万9900円

●埼玉県さいたま市の場合

  • 所得割:(昨年の所得額−33万円)×9.39%
  • 均等割:世帯の被保険者数×3万6600円

●大阪府大阪市の場合   

  • 所得割:(昨年の所得額−33万円)×10.5%
  • 均等割:世帯の被保険者数×2万5872円
  • 平等割:4万4596円

【3】 「国民年金保険」は一律

 次に、年金です。個人事業主や無職の人は、国民年金制度に加入します(20才以上のすべての人が強制加入)。

 こちらは、地方によって差は発生しません。毎月1人当たり1万5020円です。

 ちなみに、サラリ−マンが加入している厚生年金保険は、国民年金が対象とする基礎年金部分を含んでいるため、サラリ−マンの方が保険料は高いのですが、その分、将来もらえる年金は多くなります。さらにサラリ−マンの配偶者は国民年金を負担する必要がありません。

【4】 フリーランスエンジニアの例で計算してみよう

 計算方法が分かったところで、フリ−エンジニアDさんの国民健康保険料と国民年金保険料を、各地方ごとに算出してみましょう。

●Dさんのスペック

  • 家族構成:妻(専業主婦)
  • 昨年所得:
    事業収入:700万円
    必要経費:100万円
    事業所得:600万円(他に所得なし)

●国民年金保険料を計算する

  • 所得割:(600万円−33万円)×○%
  • 均等割:世帯の被保険者数(2人)×○円
  • 平等割:固定額
  東京都世田谷区 埼玉県さいたま市 大阪府大阪市
所得割 45万8703円 53万2413円 59万5350円
均等割 7万9800円 7万3200円 5万1744円
平等割 4万4596円
月額 4万4875円 5万467円 5万1744円
※大阪市の健康保険料は「最大65万円」のため、合計が65万円を超えた場合はすべて保険料は65万円になる(Dさんの場合、合計額が69万1690円だったので、実際に支払う金額は65万円)

●国民年金保険料は一律

  • 1万5020円×2人=3万40円

●参考:サラリーマンエンジニアの月額

【5】 サラリーマンの負担料と比較してみる

 サラリ−マンが払う社会保険料と比べてみると、どうでしょうか? 計算方法が違っているため、簡単に比較することはできませんが、ここでは2点の特徴を挙げておきます。

  • サラリ−マンの場合は企業が半分払ってくれている分、基本的に有利
  • 年金については、サラリ−マンは将来の給付が手厚くなる厚生年金に加入しているため、サラリ−マンの方が支払額が大きい

 フリ−ランスの社会保険料について見てきました。場所による国民健康保険料の違いが結構大きいため、驚くかもしれません。同じ都道府県でも、市や区が違うだけで算定方法が違いますので、住んでいる地区の保険料を調べてみるといいでしょう。それではまた。

お知らせ

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吉田延史(仰星監査法人/公認会計士) 著
インプレスジャパン
2012/02/17
ISBN-10: 4844331485
ISBN-13: 978-4844331483
1575円(税込)

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筆者紹介

吉田延史(よしだのぶふみ)

京都生まれ。京都大学理学部卒業後、コンピュータの世界に興味を持ち、オービックにネットワークエンジニアとして入社。その後、公認会計士を志し同社を退社。2007年、会計士試験合格。仰星監査法人に入所し現在に至る。共著に「会社経理実務辞典」(日本実業出版社)がある。

イラスト:Ayumi



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