意外と知られていない会計の知識。元ITエンジニアの吉田延史氏が、会計用語や事象をシンプルに解説します。お仕事の合間や、ティータイムなど、すき間時間を利用して会計を気軽に学んでいただければと思います。
本連載の趣旨について、詳しくは「ITエンジニアになぜ会計は必要なのか」をご覧ください。
前回「うっかり混乱する“よく似た会計用語”まとめ」に続いて、今回も間違えやすい会計用語を扱います。今回は、「同音異義語」を扱います。
【問題】
問題です。次のシステムに関する提案書には、漢字の間違いがあります。いくつあるでしょうか?
新システムの特徴は以下のとおりです。
いくつ見つけられましたか? 正解は「7つ」です。
間違いを順に見ていきましょう。
1.債券→債権
売上代金のうちの未収金額を表す時には「債権」です。「債券」は、国や企業が資金を調達する際に発行する国債や社債を表すときに用います。
2.減価消却→減価償却
固定資産を使ううちに生じる価値の減少を「げんかしょうきゃく」と呼びますが、正しくは「減価償却」です。
「償却」とは費用にすることを指します。一方、「消却」は、消えてなくなることを指します。
参考:
▼第37回「ゲームと現実の違いは? 「桃鉄」で減価償却を考える」
3.経費清算→経費精算
「清算」は、これまでの関係に決着をつける時に用います。「借金を清算した」「会社を清算しました」といった塩梅です。経費のように詳細に計算する場合は「精算」を使います。
4.決済→決裁
「決済」は、「クレジットカード決済」のように、お金の支払いを済ませることを指します。稟議や経費精算の際の承認行為は「決裁」です。
5.仕分け→仕訳
「仕分け」は、あるものを分類することです。少し前に事業仕分けという言葉がニュースによく登場しましたね。会計上、データの登録を行う時に用いるのは「仕訳」です。
6.残高資産表→残高試算表
仕訳を集計したものを「ざんだかしさんひょう」と呼びますが、これは資産以外の負債や純資産、収益、費用の項目が全部掲載されている表のことです。すべての項目について試算する表のため、「残高試算表」が正しいです。
7.貸借対象表→貸借対照表
「貸借対照表」は左に資産、右に負債と純資産が配置されています。左右で比べて見る表のため、「貸借対照表」が正しいです。
間違いやすい漢字について見てきました。意外とこういう漢字の間違いには気付きにくいのではないでしょうか。本記事が気付きになれば幸いです。それではまた。
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2012/02/17
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吉田延史(よしだのぶふみ)
京都生まれ。京都大学理学部卒業後、コンピュータの世界に興味を持ち、オービックにネットワークエンジニアとして入社。その後、公認会計士を志し同社を退社。2007年、会計士試験合格。仰星監査法人に入所し現在に至る。共著に「会社経理実務辞典」(日本実業出版社)がある。
イラスト:Ayumi
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