上場企業が投資家に向けて提供する「適宜開示」には、いろいろな情報があります。
今回は適時開示について、解説します。上場企業は投資家に向けてさまざまな情報を提供することが義務付けられています。今回は適時開示の仕組みと、過去の開示のうち話題となったものを紹介します。
東京証券取引所が上場企業に求める開示情報は、以下のようなものが主にあります。
1カ月以内に開示された情報は、東証Webサイトの適時開示情報閲覧サービスで、誰でも閲覧できます。
4月末〜5月にかけては、3月決算の決算発表シーズンです。最近の代表的な開示を見てみましょう。
代表執行役の異動に関するお知らせ(2014年5月8日 オリックス)
長らく経営を担ってきた宮内会長が取締役を退任し、シニアチェアマンとなることが注目されました。
平成26年3月期 決算短信「日本基準」(連結)(2014年4月30日 東京電力
赤字の印象が強い東京電力ですが、昨年度は値上げの影響により増収増益となりました。
業績予想の修正に関するお知らせ(2014年5月7日 東芝)
原子力発電事業、光学ドライブ事業の業績予想を見直して、当期純損益が半分になると予想を修正しました。
たくさんの上場企業が、日々いろいろな事象を開示しています。
次に、過去の開示のうち話題となった開示を紹介します。
当社保有の絵画の譲渡に伴う特別利益の計上および業績予想の修正について(2013年10月4日 DIC)
「アンナの光」という美術品を売ることによって、103億円の売却益が出ています。リンク先に作品の画像が載っています。美術品の価値は分からないものですね。
代表取締役の異動、役員の異動、業務執行体制の改正などについて(2013年6月13日 川崎重工業)
三井造船との経営統合交渉を強行に進めようとした社長らが、他の取締役の反発に遭って解任されたことで、話題となりました。
当社の虚偽決算情報に関する報道の真偽などについて(2010年5月16日 エフオーアイ)
粉飾額は100億円規模に上がるとみられると報道された数日後に、「おおむね上記報道の内容の通りであり……」と、あっさりと認めてしまった珍しい開示です。開示には今後の予定も書かれていますが、5月中に破産手続開始が決まり、倒産しました。
希望退職者募集の結果に関するお知らせ(2012年7月31日 アルデプロ)
全従業員12人に対して希望退職を募って、その半分以上の7人が希望したという内容で、残された人の負担はかなり大変そうです。ついつい対象者で影響額を割り算したくなります。
上場10周年および単月黒字化達成記念株主優待に関するお知らせ(2014年4月4日 メガネスーパー)
「32カ月ぶりに単月黒字化」とありますが、2年以上赤字が継続している中で、記念株主優待実施を決定する点に引かれました。
適時開示について見てきました。適時開示情報から発信されている新聞報道もたくさんあります。自社のWebサイトにも「IRニュース」などのタイトルでたいてい載っていますので、上場企業にお勤めの方は一度見てみるといいかもしれませんね。それではまた。
イラスト:Ayumi
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