株を買うときに注目すべき指標、株価収益率(PER)と株価純資産倍率(PBR)について、具体例と可愛いイラストで解説します。
今回は投資のための指標について解説します。
指標といえば、新聞雑誌などではよく「アルファベット3文字 ○÷○」が登場しますが、なかなか頭に入ってこないのではないでしょうか。指標はさまざまな見方ができますが、投資家向けの指標については、実際に投資家の立場になって見てみると分かりやすくなりますので、具体例で見ていきましょう。
投資家が見ている指標の代表格は「PER」と「PBR」です。
株を買うときの候補として、真っ先に思いつくのは多額の利益を上げている会社でしょう。会社が利益を上げるほど、株式の価値は高まっていきます(連載第90回参照)。しかし、利益を上げている会社は当然人気も高く、すでに、株価は相当高い状態です。これからさらに高くなることもあるでしょうが、安く買って高く売るためには得策ではないともいえます。
そう考えると、「株価は安いけれど、多額の利益を計上している会社」を探したくなります。そういったニーズに対応するのが「株価収益率(PER)」です。
PER=株価÷利益
ただし株価と対応させるため、利益は1株当たり利益を用いる
「株価が安いほどPERは小さくなること」「利益が多いほどPERが小さくなること」が分かると思います。
トレンドマイクロと大塚商会を例に、平成25年12月末の株価・平成25年度の利益を用いてPERを計算してみましょう。
トレンドマイクロのPER=株価3680円÷利益104.53円=35
大塚商会のPER=株価1万3410円÷利益641.49=20
大塚商会の方がPERが低いことから、PERの面では割安であることが分かります。なお株価は日々変動するので、どちらが割安かは、そのときどきによって異なります。
PERは「同じ利益を続けたとして、何年たったら株価に到達するか」も示しています。先ほどの計算例では、大塚商会の場合「20年同じ利益を挙げ続けたら、現在の株価に到達する」こととなり、トレンドマイクロは35年かかることになります。
PERは利益面に着目しましたが、資産・負債サイドに着目した指標が「株価純資産倍率(PBR)」です。
PBR=株価÷純資産
ただし株価と対応させるため、純資産は1株当たり純資産を用いる。
同じように、「株価が安いほどPBRは小さくなること」「純資産が多いほどPBRが小さいこと」が分かります。つまりPBRは、「株価は低いけれど純資産は多い会社」を見つけられる指標なのです。
同じように、平成25年12月末の株価と純資産から、トレンドマイクロと大塚商会のPBRを計算してみましょう。
トレンドマイクロのPBR=株価3680円÷純資産1039.6円=3.5
大塚商会のPBR=株価1万3410円÷純資産4561.6円=2.9
大塚商会の方がPBRが低いので、PBRの面でも割安であることが分かります。
なお、PBRが「1」の場合には、株価と純資産が一致していることとなり、「1未満」となると株価よりも純資産が高いことを示します。株価は将来利益が上がることを前提に、純資産より高くなることが通常ですから、PBRが1未満というのは相当に割安(悪くいえば不人気)ということになります。
次に、配当利回りについて見ていきましょう。
配当利回りは、預金の利率に対応するものです。銀行にお金を預けると、利息が受け取れますね(最近は本当に少額ではありますが)。株を買うと、会社が利益を上げればそのうちの一部を配当として受け取れます。配当利回りは以下のように計算します。
配当利回り=配当額÷株価
先ほどと同様に平成25年12月末の株価と配当実績から、トレンドマイクロと大塚商会の配当利回りを計算してみましょう。
トレンドマイクロの配当利回り=配当額125円÷株価3680円=3%
大塚商会の配当利回り=配当額235円÷株価1万3410円=1%
この例では、銀行の利率と比較すると、利回りが良いことが分かります。もちろん、配当は約束されたものではなく、経営環境が悪化すれば「無配(配当なし)」となることもあります。
投資のための指標について見てきました。解説では実績数値を使用しましたが、代表的な株価サイトに掲載されている指標は予想利益を用いていることもあります。予想通り利益が出るかどうかは、もちろん分からないので、その点も注意が必要です。それではまた。
イラスト:Ayumi
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吉田延史(よしだのぶふみ)
京都生まれ。京都大学理学部卒業後、コンピューターの世界に興味を持ち、オービックにネットワークエンジニアとして入社。その後、公認会計士を志し同社を退社。2007年、会計士試験合格。仰星監査法人に入所し現在に至る。共著に「会社経理実務辞典」(日本実業出版社)がある。
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