「そういえばもらったかな?」源泉徴収票を見てみるお茶でも飲みながら会計入門(81)

「源泉徴収票」の読み方と給与所得者の納税の仕組みについて、元ITエンジニアの公認会計士に聞いてみよう(2014年3月更新)。

» 2013年03月18日 00時00分 公開
[吉田延史公認会計士]

本連載の趣旨については「ITエンジニアになぜ会計は必要なのか」を、その他の会計用語解説はバックナンバーをご覧ください。


 皆さん、昨年2012年(平成24年)分の源泉徴収票はもらいましたか?

 会社員の方であれば、12月か1月の給与と同時に配られたと思います。ですが源泉徴収票は自己主張が少ないため、忙しい人はもらったかどうかも覚えていないかもしれません。

 いったい何を教えてくれるものなのでしょうか。今回は、源泉徴収票を解説します。

【1】源泉徴収票は、所得税のレシート

 源泉徴収票とは、以下のような書類です。

平成24年分 給与所得の源泉徴収票
  氏名 B
種別
支払金額
給与所得控除後の金額
所得控除の額の合計額
源泉徴収税額
給料・賞与
5,000,000円
3,460,000円
1,130,000円
135,500円

……

……

 

 源泉徴収票は、一言で表せば「所得税のレシート」です。

 右端の欄の「源泉徴収税額」に記載されている金額が、皆さんが1月〜12月の給与に応じて納めた所得税の額です。Bさんの場合は、13万5500円になります。

 会社は毎月の給与のうち、所得税相当分を計算し、その分を差し引いて皆さんに支給します。そして全員分の合計額をまとめて、税務署に納めているのです。

 ぜひ、もらった源泉徴収票からご自分の源泉徴収税額をチェックしてみてください。

【2】納税額は、収入によって結構違う

 皆さん、「累進課税」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。これは、所得が多い人ほど高い税率が適用される制度のことです。

 ただ、一口に「高い」といっても、適用される税率がどのくらい変わってくるのか、イメージがわかないかもしれません。そこで年収の異なるAさん、Bさん、Cさんの3人を例に、2012年の税率を用いて、実際の納税額にどれだけの違いが出てくるのか見ていきましょう。

Aさん:年収300万円
Bさん:年収500万円
Cさん:年収700万円

(比較のため、全員独身で住宅ローンなどの特別要素はないものとします)

 想定される3人の源泉徴収票は、次のようになります(実際にはさまざまな条件が加味され、それによって大きく変わることがあります)。

Aさん
平成24年分 給与所得の源泉徴収票
  氏名 A
種別
支払金額
給与所得控除後の金額
所得控除の額の合計額
源泉徴収税額
給料・賞与
3,000,000円
1,920,000円
830,000円
54,500円

……


Bさん
平成24年分 給与所得の源泉徴収票
  氏名 B
種別
支払金額
給与所得控除後の金額
所得控除の額の合計額
源泉徴収税額
給料・賞与
5,000,000円
3,460,000円
1,130,000円
135,500円

……


Cさん
平成24年分 給与所得の源泉徴収票
  氏名 C
種別
支払金額
給与所得控除後の金額
所得控除の額の合計額
源泉徴収税額
給料・賞与
7,000,000円
5,100,000円
1,430,000円
306,500円

……


 源泉徴収税額は

Aさん:5万4500円
Bさん:13万5500円
Cさん:30万6500円

となりました。

 Bさんの年収はAさんの約1.7倍ですが、納税額は約2.5倍になっています。同様にCさんの年収はAさんの約2.3倍ですが、納税額は実に約5.6倍にもなっています。年収の上がり具合よりもずっと大きく納税額が上がっていくのがお分かりいただけると思います。このような計算結果になる主な理由について、次に解説します。

【3】所得税の計算方法は、「コップに注ぐ方式」

 所得税の税率表は、以下のようになっています。

課税される所得金額 税率
195万円以下 5%
195万円を超え 330万円以下 10%
330万円を超え 695万円以下 20%
695万円を超え 900万円以下 23%
900万円を超え 1800万円以下 33%
1800万円超 40%
(注:平成24年分に適用される内容)

 上記の所得金額は、年収から一定の金額を控除して計算します。控除の項目については、第41回「アプリ開発ビジネスで独立するなら、知っておきたい『所得税計算』」でも解説していますので、参考にしてください。

 今回関係する控除は以下のものです。

給与所得控除:給与所得を得るのに掛かった経費を控除する。実際の発生額を用いるのではなく、年収から自動的に計算される金額を用いる。

所得控除:下記のようなものを控除できる。

  ・社会保険料控除:健康保険などの社会保険料の支払額を控除できる。

  ・基礎控除:すべての人が38万円控除できる。

 例えば、Bさんの所得金額は

給与所得控除後の金額−所得控除の額の合計額=346万円−113万円=233万円

です。

 ここで注意したいのは、所得金額が税率表のボーダーを超えた場合です。Bさんの所得金額は233万円で、先ほどの税率表では「195万円を超え330万円以下」の範囲です。表からは

233万円×10%=23万3000円

が納税額になりそうですが、そうではありません。以下のように計算します。

195万円部分について
195万円×5%=9万7500円

233万円−195万円=38万円部分について
38万円×10%=3万8000円

合計:13万5500円

となります。

 5%、10%、20%……とそれぞれの税率のコップがあると考え、税率の低いコップから順に所得を注いでいき、いっぱいになったら次のコップに注ぐというイメージを持つと分かりやすいでしょう。

 最初は5%ですが、次の段階では倍の10%になり、その次はさらに倍の20%になる税率の差が、大きな納税額の違いを生んでいるのです。

【キーワード】 累進課税

所得が多くなるほど、税率が上がっていく仕組みのこと。所得が2倍になると納税額は2倍を上回ることとなる。


 なお、2013年(平成25年)より復興特別税制がスタートし、税率は少し上がっていますのでご注意ください。

 源泉徴収票について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。会社員にとっての所得税は、懐から直接お金が出ないこともあり、消費税ほど身近に感じられないかもしれませんが、今回の解説で少しでもイメージを持っていただければ幸いです。それではまた。

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筆者紹介

吉田延史(よしだのぶふみ)

京都生まれ。京都大学理学部卒業後、コンピュータの世界に興味を持ち、オービックにネットワークエンジニアとして入社。その後、公認会計士を志し同社を退社。2007年、会計士試験合格。仰星監査法人に入所し現在に至る。共著に「会社経理実務辞典」(日本実業出版社)がある。

イラスト:Ayumi


2014年3月最終更新


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