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システム導入にかかるコストを損益インパクトで見るお茶でも飲みながら会計入門(4)

意外と知られていない会計の知識。元ITエンジニアの吉田延史氏が、会計用語や事象をシンプルに解説します。お仕事の合間や、ティータイムなど。すき間時間を利用して会計を気軽に学んでいただければと思います。

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今回のテーマ:システムに関する支出

 情報システム部門にとって、システム導入の稟議(りんぎ)を通すに当たり、最も重要なのは導入にかかわるコストおよび導入効果だと思います。システムに関する支出のすべてが支払時点の費用になるとは限りません。今回は、システム構築の典型例を基に、一般的な費用化について解説します(※2008年度税制改正を踏まえています)。

【1】支出と費用の違い

 本題に入る前に、支出と費用という言葉の使い分けについて説明します。同じような意味合いで使われることも多くありますが、ここでは、

支出……実際に金銭の支払いを行うこと

費用……損益計算書上に計上される費用

のことを指すこととします。冒頭でも触れましたが、支出と費用計上のタイミングは必ずしも一致しません。そのポイントは、システムに関する支出が、そのまま一時に当期の費用として処理されるのか、固定資産として計上された後に償却されるのかという点にあります

【2】実際に見積もりを見てみよう

 3月に決算を行う某社の稟議書・見積書を例に、2008年度費用がいくらになるのかを考えてみましょう(表1)。※金額は以下、消費税抜きとします。

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 以下、項目別に会計処理を見ていきましょう。

(1)ハードウェア

 サーバは、1台100万円で有形固定資産として計上され、減価償却によって費用化されます。サーバは定率法、耐用年数5年で償却されます。定率法では最初にたくさん費用が計上されるので、初年度は半額に相当する50万円/台の減価償却費が計上されます。同様にルータ(大)も有形固定資産として計上され、定率法、耐用年数6年で償却されます。

 また、単価10万円未満のものは少額のため、固定資産ではなく一時の費用として処理されます。よって、ルータ(小)・PCは全額費用となります。

(2)ソフトウェア

 ソフトウェアは、無形固定資産として計上され、有形固定資産と同様に償却され費用化されます。ここでは、自社利用のソフトウェアのため、定額法、耐用年数5年で償却されます。定額法では、毎期一定の費用が計上されます。さらに、設定に要した付随費用も併せて計上されます。よって、取得価額は3600万円+400万円=4000万円になり、償却費は4000万円÷5年=800万円となります。

(3)作業

 導入支援費用は、費用として直接計上されます。

(4)継続

 保守・ライセンス更新費用は費用として直接計上されます。

 (1)〜(4)をまとめると以下のようになります(表2)。

【3】まとめ

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 支出は6200万円、当期の費用は約2800万円となります。固定資産残額については当期の損益計算書上の費用とはならず、翌期以降の費用となります。翌期の具体的な費用は以下です(表3)。

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 翌期には、初期投資からの支出はありませんが、そこからも、費用が継続的に償却費として計上されてしまう点に注意が必要です。得意先や上司へのシステム導入の説明は支出面ばかりでなく、こういった損益インパクトの観点でも行うと多面的になりますね。それではまた。

筆者紹介

吉田延史(よしだのぶふみ)

京都生まれ。京都大学理学部卒業後、コンピュータの世界に興味を持ち、オービックにネットワークエンジニアとして入社。その後、公認会計士を志し同社を退社。2007年、会計士試験合格。仰星監査法人に入所し現在に至る。

イラスト:Ayumi



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