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個人に関わる、震災復興支援の税金制度まとめお茶でも飲みながら会計入門(50)

意外と知られていない会計の知識。元ITエンジニアの吉田延史氏が、会計用語や事象をシンプルに解説します。お仕事の合間や、ティータイムなど、すき間時間を利用して会計を気軽に学んでいただければと思います。

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本連載の趣旨について、詳しくは「ITエンジニアになぜ会計は必要なのか」をご覧ください。


今回のテーマ:税金における、震災復興支援制度

 3月11日に発生した巨大地震により、私たちの生活は一変しました。今回は、税金における震災復興支援制度について、エンジニア個人に関係する部分をまとめてご紹介します。

 ※4月15日までに決定した制度についての解説です。

【1】 所得税

 震災により、住宅や家財を失ってしまった場合は、雑損控除と災害減免法のうち有利な方を適用して所得税を軽減、あるいは免除できます。震災は2011年に発生したため、通常は2011(平成23)年分の税金に影響します。しかし、東日本大震災においては、被害の甚大さから、速やかに救済を行う必要性があります。そのため、2010(平成22)年分の税金計算から、所得税の軽減、あるいは免除を受けることが可能です。

  • サラリーマンの場合

サラリーマンの場合、被害状況と今年の所得見積もりなどの要件を満たしていれば、源泉所得税の徴収猶予、還付申請書を勤務先に提出することによって源泉徴収を受けられます。

  • 個人事業主の場合

 個人事業主が、震災によって備品や開発用ハードウェアなどの事業用資産を失った場合には、2010(平成22)年分の必要経費に算入できます。その結果、赤字(純損失)となった場合は、青色申告者については2009(平成21)年分の所得税にさかのぼって還付を受けられます。

  • 住宅ローン控除減税

 住宅ローン控除減税についても、税額控除があります。通常、住宅ローン控除減税を受けている人は、対象の購入住宅を離れてしまうと、残りの期間については住宅ローン控除減税を受けられません。しかし、今回の災害によって住めなくなってしまった場合は、残りの期間についても税額控除を受けられます。

  • 寄付金控除

 また、震災復興のために国や地方公共団体に寄付を行った場合は、2011(平成23)年分の確定申告において、寄付金控除を受けられます。寄付金控除は所得控除であり、大半の人にとっては、支出額の5〜20%の税額が軽減されます(第41回参照)。

 日本赤十字社や赤い羽根共同募金に寄付した場合でも同様です。東日本大震災に関連した募金であれば、最終的に募金は国・地方公共団体のもとに届いて支援に充てられるため、寄付金控除の対象となります。寄付金控除は、幅広い寄付が対象です。詳細は国税庁「義援金に関する税務上の取扱いFAQ」(PDF)を参照してください。

【2】 自動車重量税

 自動車重量税は、車検などの際に、自動車の区分や重量に応じて支払う税金です。通常は2〜3年分を前払いしますが、震災により廃車となった場合は、残りの期間に関しては納税額の還付が受けられます。

【3】 確定申告の期限延長

 青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県の5県では、所得税、贈与税の申告・納付期限が延長されています。いつまで延長されるかについては、4月15日段階では明らかになっていません。その他の県に住んでいる人でも、交通の途絶などによって申告が困難である場合には、延長が認められます。

 税制の支援制度について、中期的な対策は、まだ大半が明らかになっていません。今後の改正にも注意が必要ですね。それではまた。

筆者紹介

吉田延史(よしだのぶふみ)

京都生まれ。京都大学理学部卒業後、コンピュータの世界に興味を持ち、オービックにネットワークエンジニアとして入社。その後、公認会計士を志し同社を退社。2007年、会計士試験合格。仰星監査法人に入所し現在に至る。共著に「会社経理実務辞典」(日本実業出版社)がある。

イラスト:Ayumi



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