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円安で得する会社、得しない会社お茶でも飲みながら会計入門(96)

輸出企業と輸入企業、円安で得するのはどっちかな?

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本連載の趣旨については「ITエンジニアになぜ会計は必要なのか」をご覧ください。

「お茶でも飲みながら会計入門」

連載目次


 ここ数カ月で、円が対ドルで大幅に安くなりました。その結果、自動車を中心としたメーカーは増収増益が見込まれています。具体的には円安はどのように決算に影響するのでしょうか。今回は、円安が決算に与える影響について解説します。

【1】影響するポイント

 ドル建てで取引する輸出企業は、販売代金をドルで回収します。1ドル=100円の時には1万ドルの回収は100万円に相当します。円安で1ドル=110円になれば、1万ドルの回収は110万円に相当して、10万円得することとなります。

 企業の損益計算書上、具体的に以下の項目に影響します。

  • 売上高:外貨建てで販売した場合には、売上計上した日の為替レートを用いて換算します
  • 為替差益:売上計上時点と入金時点の為替レート差を為替差益(営業外収益)とします

【2】実例で見てみよう

 3月決算の輸出企業A社について、以下の例を用いて見ていきましょう。

5月31日(1ドル=100円):B社にA社製品を1万ドルで販売する契約を結んだ

6月30日(1ドル=100円):A社がB社に向けて製品を船に積んで売上計上した

9月30日(1ドル=110円):B社より売上代金1万ドルが振り込まれた

 仮に上記取引だけならば、A社損益計算書数値は以下のようになります。

売上高 100万円 1万ドル×売上日6月30日のレート100円
為替差益 10万円 売上代金1万ドルは、回収後に円転すれば110万円になるため、当初売上100万円よりも10万円得している。得した10万円は為替差益として表示される

 つまり、売上時までの円安効果は売上高に反映され、売上時から回収時までの円安効果は為替差益に反映されます。その結果、増収増益が見込まれているのです。

 今年の為替相場をまとめました。最近特に円安が進行しているのが、分かりますね。

7月末 102.78円
8月末 104.05円
9月末 109.64円
10月末 112.3円
11月末 118.2円

【3】海外子会社が販売している場合

 先の例は、日本の会社が輸出しているケースでした。海外子会社が直接製造・販売している場合も確認しておきましょう。

 海外子会社の業績は連結損益計算書に反映されます。具体的には、ドル建ての現地決算書を円に換算して親会社決算書と合算します。換算は1年間の平均レートを用います。

 A社の海外子会社B社が作成した現地損益計算書を見てみましょう。

売上高 5万ドル
売上原価 4万ドル
売上総利益 1万ドル
販売費および一般管理費 7000ドル
営業利益 3000ドル

 1年間の平均レートを100円とすると、換算した損益計算書は以下のようになります。

売上高 500万円
売上原価 400万円
売上総利益 100万円
販売費および一般管理費 70万円
営業利益 30万円

 換算といっても、単純に全てに同じレートをかけるだけです。円安が進むと、子会社損益計算書の売上高や利益にかけるレートが高くなりますから、合算した連結損益計算書にも増収・増益の好影響が出ます。

 円安と決算の関係について見てきました。ちなみにドル建てで取引している輸入企業の場合には、マイナスの効果が出てしまいます。そのため全体をみれば、安定的な為替レートになるのがいいとの意見もあります。それではまた。

イラスト:Ayumi


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筆者プロフィール

吉田延史(よしだのぶふみ)

吉田延史(よしだのぶふみ)

京都生まれ。京都大学理学部卒業後、コンピューターの世界に興味を持ち、オービックにネットワークエンジニアとして入社。その後、公認会計士を志し同社を退社。2007年、会計士試験合格。仰星監査法人に入所し現在に至る。共著に「会社経理実務辞典」(日本実業出版社)がある。



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