RDPとRemoteFXのお話[その3]:その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(3)(2/2 ページ)
これまで「RDP」と機能「RemoteFX」を説明してきましたが、ややこしい説明でかえって混乱させてしまったかもしれません。今回は、Q&A形式でRDPとRemoteFXの疑問に答えたいと思います。
【質問】Windows Server 2008 R2 SP1のRDセッションホストもRDP 8.0対応にできる?
【回答】できません。
マイクロソフトは、Windows 7 SP1およびWindows Server 2008 R2 SP1向けに、以下のRDP 8.0対応の更新プログラム「KB2592687」およびRDP 8.1対応の更新プログラム「KB2830477」を提供しています。
- KB2592687:Description of the Remote Desktop Protocol 8.0 update for Windows 7 SP1 and Windows Server 2008 R2 SP1(マイクロソフト サポート)
- KB2830477:Update for RemoteApp and Desktop Connections feature is available for Windows(RDP 8.1)(マイクロソフト サポート)
RDP 8.0の更新プログラム「KB2592687」は、Windows 7 SP1のRDPクライアント(Mstsc.exe)とRDPサーバーの両方をRDP 8.0対応にしますが、Windows Server 2008 R2 SP1に対してはクライアントの更新のみを提供します。
また、RDP 8.1の更新プログラム「KB2830477」は、RDPクライアントをRDP 8.1対応に更新するものです。そのため、これらの更新プログラムの有無に関わらず、Windows Server 2008 R2 SP1のRDセッションホストは標準のRDP 7.1でしか動作しません。
Windows 7 SP1でRDP 8.1クライアントとRDP 8.0サーバーを利用したい場合は、RDP 8.0対応の更新プログラム「KB2592687」の適用後、RDP 8.1対応の更新プログラム「KB2830477」をインストールします。
【質問】Windows 8/8.1ならクライアントHyper-VでRemoteFXが使える?
【回答】どのRemoteFXの機能かによりますが、RemoteFX仮想GPUのことを言っているのであれば、使えません。
Windows 8 Pro/EnterpriseおよびWindows 8.1 Pro/Enterpriseの64ビット版は、「クライアントHyper-V」を利用することができます。クライアントHyper-Vは、Windows Server Hyper-Vと互換性はありますが、全ての機能をサポートしているわけではありません。繰り返しになりますが、RemoteFX仮想GPUは、Windows Server 2008 R2 SP1以降のHyper-VとRD仮想化ホストが提供する機能であり、クライアントHyper-Vの環境では利用できません(画面5)。
無償のMicrosoft Hyper-V Server 2008 R2 SP1以降はRD仮想化ホストの役割をサポートしているため、RemoteFX仮想GPUを提供するHyper-Vサーバーとして利用できます。ただし、これを利用すれば、RemoteFX仮想GPUの環境をタダで構築できると期待しないでください。RemoteFX仮想GPUはRDSの機能であり、RDSの他の役割を実行するサーバーやRDS CALが必要になることを忘れてはいけません。
【質問】Windows 8.1のクライアントHyper-VではUSBデバイスのリダイレクトがサポートされた?
【回答】もろもろの条件が整えばリダイレクト可能です。
Windows Server 2012 R2 Hyper-VおよびWindows 8.1のクライアントHyper-Vでは、「仮想マシン接続」(vmconnect.exe)で「拡張セッションモード」が新たに利用可能になりました(画面6)。拡張セッションモードは、ゲストOSとしてWindows Server 2012 R2、Windows 8.1 Pro、またはWindows 8.1 Enterpriseが動作している場合にのみ利用でき、ホストとゲスト間でのコピー&ペーストによるファイルのやり取り、双方向オーディオ、スマートカードやローカルドライブ、プリンターのリダイレクト、マルチモニター表示、USBデバイスリダイレクトなどの機能を提供します。
画面6 Windows 8.1のクライアントHyper-Vの「拡張セッションモード」では、RemoteFX USBデバイスリダイレクトの機能を利用してUSBデバイスをゲストOSにリダイレクトできる。しかし、この環境を準備するのは大変
実は、拡張セッションモードは内部的にRDSのコンポーネントを利用しています。つまり、USBデバイスリダイレクト機能は、「RemoteFX USBデバイスリダイレクト」のことを指します。そのため、接続元がRemoteFX USBデバイスリダイレクトを利用可能(ポリシー設定が必要)であり、接続先であるゲストOSがRemoteFX USBデバイスリダイレクトに対応していれば、USBデバイスをゲストOSにリダイレクトすることができます。
例えば、Windows 8.1 ProがゲストOSの場合や、RDセッションホストの役割をインストールしていないWindows Server 2012 R2がゲストOSの場合は、USBデバイスをリダイレクトすることはできません。
個人ユーザーがクライアントHyper-VでUSBデバイスリダイレクトを利用できる環境を準備するのは、ちょっとというか、とても難しいでしょう。
【質問】Windows 8をRDP 8.1対応にできる?
【回答】Windows 8のままでは不可能です。
RDP 8.1を利用したいのであれば、Windows 8をWindows 8.1にアップグレードしてください(無償です)。筆者が知る限り、それしか方法はありません。
Windows 8に対して、RDPクライアントやRDPサーバーをRDP 8.1に対応させる更新プログラムは提供されていません。その点を含め、表1にWindows 7 SP1以降で利用可能なRDPバージョンと機能を一覧にまとめてみました。
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筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2014)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手がける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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