Windows 10では多くの新機能が追加されていますが、一方で削除された機能もいくつかあります。今回は、Windows 8.1でOSにビルトインされていたサードパーティのVPNクライアントのサポートについてです。Windows 10では削除されたように見えますが、実は別の方法で引き続き提供されていました。
Windows 8.1では、以下のTechNetサイトの「Windows 8.1の最新情報」で説明されている通り、Windows標準のVPN(Virtual Private Network)プロバイダーによるPPTP(Point-to-Point Tunneling Protocol)、L2TP(Layer 2 Tunneling Protocol)/IPSec(IP Security Protocol)、SSTP(Secure Socket Tunneling Protocol)、IKEv2(Internet Key Exchange version 2)のVPN接続に加えて、新機能としてサードパーティのVPNクライアントのサポートが標準搭載されました。
Windows 8.1の場合、サードパーティのVPNクライアントは「PC設定」→「ネットワーク」→「接続」にある「VPN接続を追加する」を使用して作成するVPN接続でセットアップできます。Windows 8.1は標準で、Windows標準のVPNプロバイダー「Microsoft」に加えて、以下の4つのサードパーティのVPNプロバイダーを標準でサポートしています(画面1)。
では、次の画面2を見てください。この画面は、Windows 8.1をWindows 10に無料アップグレードしたPCの「設定」→「ネットワークとインターネット」→「VPN」にある「VPN接続を追加する」のVPN接続セットアップ画面です。VPNプロバイダーとして選択できるのは、唯一、Windows 8.1のVPNプロバイダー「Microsoft」に相当するであろう「Windows(ビルトイン)」だけになっています(画面2)。
さて、サードパーティのVPNクライアントのサポートは、Windows 8.1で終わってしまったのでしょうか。
Windows 10の「ストア」アプリで“VPN”を検索してみると、Windows 8.1にあったVPNクライアントに相当するものと思われる3つのアプリが見つかりました(画面3)。なお、「Juniper Networks Junos Pulse」は、本稿執筆時点(2015年8月7日)では「ストア」には見当たりませんでした。
「F5 VPN Client」アプリの詳細には、本稿執筆時点で以下のように説明されています(画面4)。
This is planned to be the replacement for the Inbox F5 VPN Client application that was part of Windows 8.1 OS.(筆者による翻訳:このアプリは、Windows 8.1のインボックスF5 VPNクライアントの代替として計画されています)
「ストア」で提供されている「F5 VPN Client」アプリは現在、開発者向けのプレビューリリース(Developer Preview release)の段階であり、Windows 10もF5ネットワークスではサポートされていないそうですが、どうやらこのアプリがWindows 8.1に標準搭載されていたVPNプロバイダーの後継になるようです。他の2つのVPNアプリにはそのような説明はありませんが、おそらく同じような対応になると思われます。
Windows 10に「ストア」から3つのVPNクライアントアプリをインストールすると、「スタート」メニューの「すべてのアプリ」にこれらのアプリのアイコンが追加されます。しかし、これらのアプリを開始しても“アプリの情報”が表示されるだけで、アプリからVPN接続をセットアップすることはできません。その代わり、VPN接続のセットアップは「設定」アプリから行うように指示されます(画面5)。
VPNアプリをインストール後にWindows 10の「設定」→「ネットワークとインターネット」→「VPN」にある「VPN接続を追加する」のVPN接続セットアップ画面を開くと、インストールしたVPNアプリに対応するVPNプロバイダーが追加されていました(画面6)。これで、Windows 8.1と同じスタイルでVPN接続をセットアップすることができます。
ここで気になるのは、Windows 8.1に内蔵されているサードパーティのVPNプロバイダーを使用して作成されたVPN接続は、Windows 8.1からWindows 10へのアップグレードで引き継がれるのかということです。
現在、Windows 8.1でビルトインのサードパーティのVPNプロバイダーを利用してVPN接続をセットアップしている場合は、アップグレード後に既存のVPN接続ができなくなるといった問題が発生するかもしれません。VPNアプリのインストールだけで問題を解決できるかもしれませんし、VPN接続の再セットアップが必要になるかもしれません。
実際のところがどうなのかは、検証してみないことにははっきりしたことは言えませんが、VPNプロバイダーが「ストア」にあることさえ知っていれば、素早く問題を解決できるはずです。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2015)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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