本当は怖い? Windows 8/8.1のPC簡単修復[その2]その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(14)

前回は、Windows 8/8.1の「PCのリフレッシュ」と「PCのリセット」の仕組みと違いを説明しました。今回は、「PCのリフレッシュ」と「PCのリセット」を実行することで予想されるトラブル例をいくつか紹介しましょう。

» 2014年09月10日 18時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
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連載目次

「PCのリフレッシュ」と「PCのリセット」で遭遇するかもしれないトラブル

 前回説明した通り、「PCのリフレッシュ」や「PCのリセット」は、ローカルディスクに保存されている「回復イメージ」から、システムやアプリケーションをフォルダー(「Windows」や「Program Files」フォルダー)ごと書き戻すことでPCのトラブルを修復する機能です。

 プレインストールPCであれば通常、ローカルディスクの一部の領域に作成された「回復パーティション」に回復イメージは格納されています。ローカルディスクに回復イメージが存在しない場合は、WindowsのインストールDVDメディアまたはユーザーが事前に作成しておいた回復ドライブを指定します。「PCのリフレッシュ」では「カスタム回復イメージ」が利用されることもありますが、後述する方法でユーザー自身が作成していない限り、カスタム回復イメージは存在しません。

 これも前回説明したように、Windows 8やWindows 8.1のプレインストールPCで、プレインストールされたものと同じバージョンのWindowsを実行している場合、「PCのリフレッシュ」や「PCのリセット」は期待通りに動作し、短時間でトラブルを解決できる有効な手段になるでしょう。しかし、そうでない場合、非常に厄介なことになるかもしれません。

[ケース1]Windows 8プレインストールPCを8.1にアップグレードしたPCで「PCのリセット」を実行した場合

 Windows 8プレインストールPCは通常、ローカルディスクの一部がパーティションで区切られ、そこにPCベンダーが回復パーティションを構成し、PCの工場出荷時の状態を含む回復イメージを配置しています。

 そのPCをWindowsストア経由で無償アップグレードした場合、あるいは購入したWindows 8.1のパッケージ(ダウンロード製品またはDVDメディア)を使用してアップグレードインストールした場合は、現在のシステム設定やドライバー、インストール済みアプリケーション、個人設定を引き継いだ状態でWindows 8.1にアップグレードできます(画面1)。

画面1 画面1 Windows 8を実行するPCは、Windowsストア経由でWindows 8.1に無償でアップグレードできる

 この場合、以前の回復パーティションはそのまま残され、古い回復イメージがWindows 8.1の新しいイメージに更新されるということはありません。つまり、Windows 8.1にアップグレードしたPCには、依然として「Windows 8用の回復イメージ」が残されるのです。アップグレード直後であれば、アップグレードの失敗やアップグレード後の問題を解消するために、この回復イメージを使ってWindows 8に戻すことができます。

 Windows 8.1にアップグレードしてから時間がたつと、ローカルの回復イメージがWindows 8のものであるということを忘れてしまうでしょう。または、アップグレードした際、回復イメージもWindows 8.1のものに入れ替わっていると思い込んでいるかもしれません。ほとんどのユーザーは、回復イメージが何なのかさえ分からないはずなので、疑問に思うこともないでしょう。

 さて、Windows 8.1で「PCのリセット」を実行した際、Windows 8用の回復イメージが使用されるとどうなるでしょうか。答えは簡単です。Windows 8に戻ってしまうのです(画面2)。Windows 8のプレインストールPCの工場出荷時の状態です。それまで使っていたWindows 8.1の状態に戻すには、Windows 8.1にもう一度アップグレードする必要があります。

画面2 画面2 Windows 8.1にアップグレードしたPCの回復パーティションには、Windows 8の回復イメージが残っているため、「PCのリセット」を実行すると工場出荷時のWindows 8の状態に戻ってしまう

[ケース2]Windows 8プレインストールPCを8.1にアップグレードしたPCで「PCのリフレッシュ」を実行した場合

 それでは、ケース1と同じPCで「PCのリフレッシュ」を実行した場合はどうなるでしょうか。

 前回説明したように「PCのリフレッシュ」では、「Windows」や「Program Files」「Users」フォルダーが「Windows.old」フォルダーに退避され、回復イメージからこれらのフォルダーを書き戻したあとに、Windowsのシステム設定とユーザーデータが復元されます。修復しようとしているWindowsのバージョンはWindows 8.1、回復イメージのWindowsバージョンはWindows 8です。

 Windows 8の「Windows」フォルダーにWindows 8.1のシステム設定を復元しようとしても、うまくいくはずがありません。当然のことながら、「PCのリフレッシュ」は失敗に終わります。なお、PCは「PCのリフレッシュ」実行前の状態に戻るので、修復しようとしていた問題はそのままですが、状況がこれ以上悪くなることはないと思います(画面3)。

画面3 画面3 Windows 8の回復イメージを使用して、Windows 8.1に「PCのリフレッシュ」を実行した結果。エラーが発生して、「PCのリフレッシュ」を実行する前の状態に戻る

[ケース3]回復パーティションが存在しないアップグレードPCで「PCのリセット」または「PCのリフレッシュ」を実行した場合

 回復パーティションがもともと存在しないPCをWindows 8.1にアップグレードした場合、「PCのリフレッシュ」や「PCのリセット」を実行するには、Windows 8.1のインストールDVDメディアが必要になります(画面4)。アップグレード後に、必要がなくなった回復パーティションを削除し、Cドライブの容量を拡張した場合も同様です。

画面4 画面4 ローカルに利用可能な回復イメージがない場合、Windows 8.1のインストールメディアが必要。この画面は、回復パーティションを削除したPCの場合

 「PCのリフレッシュ」では、Windows 8.1の初期状態の「Windows」や「Program Files」フォルダーが書き戻されることになるので、インストール済みのアプリケーションやドライバーは全て失われます。

 一方、「PCのリセット」は、Windows 8.1の新規インストールと何ら変わりません。失われるアプリケーションやドライバーがWindows 8.1にアップグレードした後に導入したものであれば、インストールソース(メディアやダウンロード)が簡単に手に入るでしょうから、もう一度セットアップできるでしょう。

 しかし、アップグレード前から引き継いだものである場合は、ちょっと厄介です。アップグレードで引き継げても、Windows 8.1に新規インストールできないというアプリケーションやドライバーもあるかもしれません。

 Windowsストア経由でWindows 8をWindows 8.1に無償アップグレードした場合は、手元にWindows 8.1のインストールメディアはないはずです。Windows 8.1の「PCのリセット」や「PCのリフレッシュ」で、古いバージョン(Windows 8以前)のインストールメディアは受け付けません(画面5)。もし、Windows 8以前のインストールメディアやリカバリディスクが手元にあるならば、それで古いバージョンを新規インストールするかリカバリできますが、その後、Windows 8.1への長いアップグレード作業が待っています。

画面5 画面5 Windows 8.1のメディアが手元にないことを想定し、Windows 8のメディアをドライブにセットしてみたが……

 古いバージョンのWindowsのインストールメディアやリカバリディスクが手元にない場合、これはもうお手上げです。次にできることがあるとすれば、リカバリディスクを入手できないかどうか、PCのメーカーに問い合わせることでしょう。

「PCのリフレッシュ」を実行する前に「システムの復元」を試してみよう

 正常に動いていたPCが、何らかのタイミングで不調になった場合には、「PCのリフレッシュ」よりも先に「システムの復元」(System Recovery)を試してみるべきです。

 「システムの復元」は、Windows Updateによる更新前や、ドライバー/アプリケーションのインストール前に自動作成される復元ポイント、手動で作成した復元ポイント、あるいは後述するバックアップ時のバックアップデータに含まれるシステムイメージ復元ポイントを使用して、PCを健全であった時点の状態に戻す機能です(画面6)。「PCのリフレッシュ」よりも「システムの復元」の方が、アプリケーションが失われるなどの修復による副作用が少なくて済みます。

画面6 画面6 Cドライブで「システムの復元」機能を無効化していなければ、Windows Updateやアプリケーションのインストール前に自動作成される復元ポイントにPCの状態をロールバックできる

 「システムの復元」はシステム回復環境(Windows RE)からも開始できるので、8月のWindows Updateのトラブル(更新プログラムの不具合で一部のPCが正常に起動しなくなる問題)の影響を受けた場合でも、この方法で簡単に復旧できたはずです(画面7)。

画面7 画面7 「システムの復元」は、システム回復環境からも開始できるので、起動不能になったPCの復旧にも使える

 Cドライブのディスク容量を節約するために、「システムの復元」を無効化している人がいるようですが、いざというときに有効な修復手段の一つを放棄してしまうことになるのでお勧めしません。しかしながら、サイズの限られたSSDをCドライブに使用していて、容量に余裕がない場合もあるでしょう。後述するバックアップを実施しておけば、そのバックアップデータをシステムイメージ回復ポイントとして「システムの復元」にも利用できるのでお勧めです。

カスタム回復イメージを準備しておけば安心してリフレッシュできる

 ここまで説明したように、現在実行中のWindowsと同じバージョンの回復イメージがローカルディスク上に保存されていなければ、「PCのリフレッシュ」や「PCのリセット」はPCのトラブル解決の簡単な手段にはならないということになります。

 適切な回復イメージがある場合でも、現在のWindows環境を長く使っていると、Windows Updateによる更新やシステム設定の変更、アプリケーションのインストールなどで、回復イメージとのギャップはどんどん広がります。そうなると、「PCのリフレッシュ」や「PCのリセット」で修復できたとしても、トラブルが発生する前の状態にまで完全に回復するには多くの追加作業が必要になるでしょう。

 そこでお勧めしたいのが、「カスタム回復イメージ」の作成です。カスタム回復イメージは「PCのリフレッシュ」だけに使用できる回復イメージであり、次のコマンドラインを管理者として実行することで、現在のWindowsやアプリケーションのインストール状態をイメージ化することができます。

RecImg /createimage <格納先のパス>


 システムに変更を加えるたびに(もちろんPCが健全な状態のときに)、カスタム回復イメージを再作成しておけば、アプリケーションやシステム設定を失うことなく、「PCのリフレッシュ」を安心して利用できるようになります(画面8)。

画面8 画面8 カスタム回復イメージを作成すると、現在の「Windows」および「Program Files」フォルダーがキャプチャされて「CustomRefresh.wim」に格納され、「PCのリフレッシュ」で使用されるようになる

やっぱりフルバックアップが最強!

 最後に、筆者が特にお勧めするPCの修復手段を紹介しておきましょう。それは、フルバックアップの作成です。「PCのリフレッシュ」「PCのリセット」「システムの復元」のどれも、回復イメージや復元ポイントが格納されたハードディスクが故障してしまえば、役に立ちません。

 回復イメージがある回復パーティションは通常、Cドライブと同じハードディスクに存在します。復元ポイントはCドライブに保存されるボリュームスナップショットです。どちらもCドライブが物理的に壊れてしまえば、共倒れです。

 Cドライブのハードディスクとは物理的に別の場所に作成できるバックアップなら、ハードディスクが故障しても大丈夫。新しいハードディスクに交換して、ベアメタル回復で簡単に復元することができます。Windows 8.1からは以前のバックアップツールは廃止されましたが、「システムイメージの作成」機能と「Wbadmin.exe」コマンドは残されました(画面9)。

画面9 画面9 Windows 8.1では以前のようなバックアップツール(Complete PCバックアップ)は廃止されたが、「システムイメージの作成」と「Wbamin.exe」コマンドは残された

 「システムイメージの作成」は、「コントロールパネル」の「ファイル履歴」を開くと下の方にある「システムイメージバックアップ」のリンクからウィザードを開始できます。ウィザードでは、ローカルディスク上のボリューム(Cドライブとは物理的に別のディスクを推奨)、USB外付けハードディスク、複数のDVDメディア(書き込み可能なドライブとメディアが必要)、またはネットワーク共有にフルバックアップを作成できます(写真1)。

写真1 写真1 USB外付けハードディスクにシステムイメージを作成しているところ。筆者は毎月1回、手動でシステムイメージを作成している

 「システムイメージの作成」はスケジュール実行に対応していませんが、「Wbadmin.exe」コマンドとタスクスケジューラーを組み合わせれば、スケジュールに基づいた自動バックアップも実現可能です。次の例は、Eドライブにバックアップを保存する場合のコマンドラインの例です。

wbadmin START BACKUP -backupTarget:E: -Include:C: -allCritical -vssFull


 Windows 8.1タスクスケジューラにこのコマンドラインをタスクとして登録しておけば、スケジュールによる自動バックアップも可能です。

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筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2014)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手がける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。


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