皆さんがお使いのWindows PC、万が一の場合に絶望しないために定期的にフルバックアップを作成していますか。HDDが物理的に壊れてしまうと「システムの復元」や「PCのリフレッシュ」では復旧できませんよ。筆者はWindows 8以降の新しい保護機能は利用せず、いまだにフルバックアップ派です。
Windowsは、データやシステムをバックアップするためのツールを標準で備えています。この標準のバックアップツールですが、Windows VistaおよびWindows Server 2008で、それまで「NTBackup」と呼ばれてきた「バックアップ」から、「Windows Complete PCバックアップ」と呼ばれる新しいテクノロジに刷新されました。
Windows Server 2008以降では、サーバーの機能として「Windows Serverバックアップ」を追加することができます。Windows Vista以降のクライアントOSでは、バージョンによって状況が異なります。Windows Vistaでは「バックアップと復元センター」、Windows 7では「バックアップと復元」という名称でした(画面1、画面2)。
これらのうち、“システムのバックアップ”がWindows Complete PCバックアップの機能になります。Windows Vistaでは、Windows Complete PCバックアップによるシステムのバックアップは企業向けエディションおよびUltimateエディションの機能でしたが、Windows 7では全てのエディションで利用可能になっています(ネットワークへのバックアップ機能には企業向けエディションまたはUltimateが必要)。
Windows 8では、スタートメニューを廃した新しいUI(ユーザーインターフェース)への変更が良くも悪くも話題になりましたが、バックアップ機能についても大胆な変更が行われました。
ユーザーデータの保護とシステムの保護が分けられ、データの保護は「ファイル(の)履歴」(バージョンや場所によって表記が揺れている)機能が提供し、システムの保護は「システムの復元」「PCのリフレッシュ(PCをリフレッシュする)」、あるいは「PCのリセット(全てを削除してWindowsを再インストールする)」の簡単回復機能が提供するようになりました。
しかし、Windows Complete PCバックアップによるフルバックアップ機能が削除されたわけではありません。マイクロソフトお勧めのバックアップが、ファイル(の)履歴とPCの簡単回復機能になったということです。
マイクロソフトは新しい保護機能を強力にプッシュしたかったのでしょう。Windows Complete PCバックアップの機能はWindows 8にも残されましたが、「Windows 7のファイルの回復(Windows 7 File Recovery)」という名前に変更されたため、フルバックアップ機能が削除されてしまったと勘違いしたユーザーさんも多かったのではないでしょうか。今でもそう思っているユーザーさんがいるかもしれません。
変更された機能名からは、Windows 7でバックアップしたデータをWindows 8で回復したい場合に使うような印象を受けます。もちろん、そんな使い方もできるのかもしれません(試したことはありません)が、この名前は“Windows 7スタイルのバックアップツール”という意味だと思います。このツールを使用すれば、Windows 7と同じ操作で、Windows 8のデータやシステムのスケジュールバックアップや手動バックアップを実行できます(画面3)。また、システムイメージから、空のディスクへのベアメタル回復による復旧も可能です。
Windows 8.1では、「Windows 7のファイルの回復」機能がとうとう削除されてしまいました。この機能が削除されたことは、なぜかWindows Server 2012 R2から削除された機能として以下のドキュメントに記されていますが、Windows 8.1からの削除です。
念のために付け加えておくと、Windows Serverには「Windows 7のファイルの回復」機能はそもそも存在しませんし、「Windows Serverバックアップ」機能が削除されたということでもありません。
Windows 8.1からは「Windows 7のファイルの回復」機能が削除されましたが、PCのフルバックアップを作成する手段が提供されなくなったわけではありません。「コントロールパネル」の「ファイル履歴」ページの下にある「システムイメージバックアップ」のリンクから、システムイメージの手動バックアップをハードディスクドライブ(HDD)、DVD、ネットワーク共有に作成する機能は残されました。
「システムイメージバックアップ」はスケジュールバックアップ機能を持ちませんが、Windows VistaやWindows Server 2008以降に搭載されている「wbadmin」コマンドを使用したバックアップが実行可能です(画面4)。例えば、次のようなコマンドラインを「タスクスケジューラー」で自動実行させることで、スケジュールバックアップを実現できます。
wbadmin START BACKUP -backupTarget:E: -Include:C: -allCritical -vssFull
ちなみに、システムイメージからの回復方法は、Windows Vista以降、ほとんど変更はありません。システム回復環境から「トラブルシューティング」→「詳細オプション」→「イメージでシステムを回復」と選択して、HDD、DVDメディア、ネットワーク共有からベアメタル回復を実行できます(画面5)。
「Windows 7のファイルの回復」機能が削除されたことで、Windows 8.1では思わぬ副作用も出ています。それは、Windows 7やWindows 8からWindows 8.1にアップグレードした場合、Windows 8.1の「アクションセンター」にWindows 8以前のバックアップ関連メッセージが残ってしまうという不具合です(画面6)。
「アクションセンター」に表示されるボタンは全く反応しません。なぜなら、このボタンは「Windows 7のファイルの回復」のコントロールパネルを起動しようとするからです。このメッセージを消す方法は、「アクションセンターの設定を変更」で「Windowsバックアップ」からのメッセージを表示させないようにするしかありません。
2015年7月29日に正式リリース予定のWindows 10でバックアップ機能がどうなるのか気になり、2015年5月に公開された「Windows 10 Insider Preview」のビルド10074、10122、および最新ビルドの10130で確認してみました。
すると、ビルド10122から「設定」アプリの「更新とセキュリティ」に、「Windows 7からのファイルを復元します」という項目が追加されたことを発見しました。リンクをクリックするとコントロールパネルの「バックアップと復元(Windows 7)」が開きます。Windows 8.1から削除された、あの「Windows 7のファイルの回復」の機能が復活しているのです(画面7)。つまり、Windows 10 Insider Preview ビルド10122および10130では、再びデータおよびシステムイメージのスケジュールバックアップ機能が利用できるようになっていました(画面8)。
なお、これは開発中のプレビュービルドの話です。このまま実装されるのか、それともまた削除されてしまうのかは、正式リリースまで分かりません。例えば、「ファイル履歴」はビルド10074で「ローカルバックアップ」という名前になっていますが、ビルド10122および10130では「File History(ファイル履歴)」に戻っているように、Windows 10の機能や名称はビルドによってコロコロ変わります。Windows 7スタイルのバックアップ機能が残る(復活する)ことを願いながら、正式リリースまで見守りたいと思います。
Windows 7およびWindows 8.1ユーザーはWindows 10に無料でアップグレードできますが、失敗したときの備えとして、アップグレード前にはPCのフルバックアップ(システムイメージ)を作成しておくことを強くお勧めしておきます。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2015)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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