Windows 8.1ユーザーには関係のない話ですが、ワケあってWindows 8のままのユーザーは「8.1」へのアップグレードの誘導を回避するのに大変だったようです。10月中旬に“ついに8.1への強制アップグレードが始まった”とちょっとした騒ぎになりました。
マイクロソフトはWindows 8のユーザーに対して、Windows 8.1への無償アップグレードをWindowsストアで提供しています(ボリュームライセンスを除く)。@IT読者の皆さんのように、PCにある程度精通していて、それでもまだWindows 8.1にアップグレードせず、Windows 8のままで使用しているユーザーは、アップグレードできないそれなりの理由があるはずですよね。
例えば、PCのハードウェアがWindows 8.1に対応していない、重要なアプリケーションやデバイスがWindows 8.1に対応してない、アップグレードに必要なディスクの空き領域が足りない……といった理由でしょうか。
筆者は最新版との比較用に、Windows 8を含むいくつかのWindowsのバージョンを仮想マシンとして持っていて、毎月のセキュリティ更新でそのバージョンの最新状態に維持しています。Windows 8であることが重要なので「Windows 8.1(無料)に更新する」のお誘いは、毎回表示されるたびにお断りしてきました(画面1)。
10月中ごろからWindowsのユーザーフォーラムなどでは、更新をスキップできない“強制アップデート”が行われていると話題になっていました。その真偽を確かめるため、筆者は自分のWindows 8の仮想マシンを長時間起動した状態にして待ってみることにしました。
10月25日時点では、画面1のいつもと変わらない通知が表示されました。その後、数日間様子を見ても話題の通知は来ませんでした。
しかし、11月に入ってもう一度試してみると、話題の通知がついに筆者のWindows 8仮想マシンにも表示されました。最初の通知には「今すぐ再起動」「1時間」「2時間」「4時間」「後で通知する」の選択肢があり、筆者はここでも「後で通知する」を選択しました(画面2)。
翌日、もう一度通知がありました。今度は「後で通知する」の選択肢はありません(画面3)。「今すぐ再起動」「1時間」「2時間」「4時間」のどれかを選択するしかありません。ここで「今すぐ再起動」を選択した場合は、そのままWindows 8.1への更新が始まります。帯状のメッセージを消すことはできず、画面を切り替えても最前面に表示されたままなので、更新が完了するまで待つ以外にありませんでした。
「1時間」「2時間」「4時間」を選択した場合は、その時間が経過した後に自動的に更新が始まるようです。ちなみに筆者の場合は仮想マシンなので、事前に作成しておいたチェックポイント(スナップショット)で、いつでもWindows 8に戻せるようにしてあります。
このような半ば強制的な更新を、事前のお知らせなしで実施するのは、混乱とトラブルを招くだけのような気がします。
10月中旬に話題になったこの動作は、2014年9月に配布された以下の「推奨される更新プログラム」で実施されたようです。これが事前のお知らせといえばそれまでですが、実施時期も、どのような方法で行われるのかも明記されていません。そもそも毎月の更新プログラムの内容を全て確認する個人ユーザーはいないでしょう。
推奨される更新プログラムを、Windows 8は既定で自動インストールの対象としているので、大多数のWindows 8 PCに自動的にインストールされているはずです。なお、ボリュームライセンスのWindows 8 Pro/Enterpriseには、この推奨される更新プログラムと次に説明する更新プログラムは配布されません。
筆者の場合は、2014年10月末に配布された以下の推奨される更新プログラムで実施されました。この更新プログラムは、上記の更新プログラムを置き換えるものです。
ちなみに、Windows 8をクリーンインストールした環境で試したところ、2回目のWindows Updateで「KB3008273」がインストールされ、翌日にはWindows 8.1への半強制的な更新の最初のメッセージが表示されました。また、Windows 8でMicrosoftアカウントを使用していなくても、Windowsストアによる更新は行われました。
ユーザーフォーラムやさまざまなコミュニティで問題視されたからでしょうか、2014年11月4日になって以下の記事がマイクロソフトの公式ブログに投稿されました。
結局のところ、最後またはその前の通知が表示されたら「今すぐ再起動」以外を選択して時間的な猶予を確保し、Windows 8.1への更新が開始される前に更新プログラム「KB3008273」をアンインストールすれば自動的な更新の開始を回避できます(画面4)。
その後、Windows Updateを実行して、再検出された更新プログラム「KB3008273」を「非表示」にしてインストールされないようにすることで、今後もWindows 8のまま使用できるようです(画面4)。しかし、4時間以内にこの情報にたどり着いて、Windows 8.1への更新が始まる前に対処できるとは到底思えません。
マイクロソフト製品の「サポートライフサイクルポリシー」によると、Windows 8とWindows 8.1のライフサイクルポリシーは同じであり、延長サポートは「2023年1月10日」まで提供されます。しかし、Windows 8に関しては「サービスパックサポートポリシー」が提供されるため、Windows 8.1の一般公開から24カ月後の「2016年1月12日」にサポートが終了します。
引き続きサポートを受けるには「2016年1月12日」までにWindows 8.1に移行する必要があるわけですが、それを承知の上でWindows 8.1に更新したくてもできない、あるいはWindows 8のままである必要があるというユーザーも少なからずいるのです。少しお節介が過ぎるのではないでしょうか。
経緯はともかく、めでたくWindows 8.1に更新できたという場合は、PCのリフレッシュやリセット(初期状態に戻す)を実行できるように、Windows 8.1のインストールメディアを準備しておきましょう。Windows 8.1にしてしまってからでは、Windows 8のインストールメディアでPCのリフレッシュやリセットはできません。
2014年10月末から以下のサイトで公開されている「メディア作成ツール」(mediacreationtool.exe)を使用すると、言語やエディション、アーキテクチャ(32ビット/64ビット)を選択して、Windows 8.1のインストール用のUSBメモリまたはISOイメージを作成できます。
Windows 8.1にアップグレードしたPCで不具合が発生し、PCのリフレッシュで解決できない場合はどうしましょうか。クリーンなWindows 8.1環境を取り戻すために、Windows 8にいったん戻してから、もう一度Windowsストア経由でWindows 8.1にアップグレードするという面倒な手順が必要だと思っていませんか。
このメディア作成ツールで作成したWindows 8.1のインストールメディアは、PCのリフレッシュやリセットだけでなく、新規インストールやアップグレードインストールにも使用できます(画面6)。
通常のインストールメディアとは異なり、Windows 8とWindows 8.1の両方のプロダクトキーを受け付けるので、アップグレードユーザーはPCに付属するWindows 8のプロダクトキーを使用して、Windows 8.1を新規インストールすることもできます。ディスクの空き領域が足りなくてアップグレードができずにいる場合は、この方法でWindows 8.1に移行できるかもしれませんね。
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2014)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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