アップグレードは既定路線に?:その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(20)
前回は10月中ごろから始まったWindows 8.1への“半強制的”なアップグレードを取り上げました。「Windows 10 Technical Preview」を見る限り、マイクロソフトは今後もこの路線で行きたいようです。
Technical PreviewでOSのアップグレードまわりをテストしているらしい
マイクロソフトは2014年10月初めに、2015年後半にリリース予定の次期Windows「Windows 10」の早期プレリリース版となる「Windows 10 Technical Preview」(ビルド9841)の一般公開を開始しました。次のWindowsに興味のある多くのITプロフェッショナルが「Windows Insider Program」に参加し、Windows 10 Technical Previewを試していることと思います。
Windows 10 Technical Previewには、「PC Settings」の「Update and recovery」(Windows 8.1の「PC設定」の「保守と管理」に相当)に「Preview builds」という新しい項目が用意され、新しいビルドがリリースされた場合、ここから数クリックでダウンロードとアップグレードが実行できるようになっています(画面1)。すでに10月21日に「ビルド9860」、11月12に「ビルド9879」がリリースされています。
画面1 ビルド9860からビルド9879へ手動でアップグレードしているところ。この画面、前回のWindows 8.1への半強制的なアップグレードとよく似ている。違いは「Windowsストア」からではないこと
Windows 10 Technical Previewを評価している人の多くは、すぐにでも新しいビルドを試したいと、手動でアップグレードを実行したことでしょう。しかし、Windows 10 Technical Previewを起動したまま放置、またはスリープで復帰できる状態にしておけば、「自動メンテナンスタスク」(通常は午前2時に開始)で実行される「Windows Update」で、新しいビルドへのアップグレードが自動実行されます。
意図せず、この方法で新しいビルドにアップグレードされてしまった人は、さぞ驚いたことでしょう(画面2)。なお、ビルド9860の「Preview builds」で「Slow」を選択した場合は、11月の最終週からビルド9879の配布が始まっています。
Windows 10 Technical Previewの新しいビルドの提供方法は、より新しいビルドをいち早く評価できるという特典のようにも思えますが、マイクロソフトは新しいビルドの提供を通じてWindows 10の配布方法やダウンロード、アップグレードのプロセスをテストしているようです。これは筆者の想像ではなく、以下の公式ブログに書いてあることです。
Getting the update & install data from our Preview Builds mechanism is super important for us. It helps us ensure smooth ESD distribution, download, and upgrade success for this program going forward, and also will help us ensure great upgrades for people once we release Windows 10.
Windows 10 Technical Previewが手元にある方は、「PC Settings」やコントロールパネルのWindows Updateの設定画面を開いてみてください。“Some settings are managed by your system administrator(設定のいくつかは、システム管理者が管理します)”と表示され、「Install updates automatically」(更新プロプログラムを自動的にインストールする)以外のオプションに変更できないことに気が付くでしょう(画面3)。新しいビルドのアップグレードをTechnical Previewの使用者全員にやってもらおうという思惑がここからも感じられます。
これからWindows 10 Technical Previewの評価を始めるという場合は、何度もアップグレードさせられるかもしれないことにご注意ください。ビルド9841のISOイメージでインストールした場合は、ビルド9860を経由しないとビルド9879またはそれ以降にはアップグレードできないようです。以下のURLから入手できるビルド9879のISOイメージを使用すれば、最新のビルドから評価を始めることができます。
- Windows 10 Technical Preview(Download Windows Technical Preview November Update)
- Windows 10 Technical Preview for Enterprise(TechNet Evaluation Center)
理由があって、最新ビルドに勝手にアップグレードされたくない場合もあるでしょう。例えば、筆者が実際に遭遇したことですが、「Windows Server Technical Preview」の機能のいくつかは、Windows 10 Technical Previewの最新ビルド9879との組み合わせで問題が発生しました。「ローカルコンピューターポリシー」(Gpedit.msc)の以下のポリシーでWindows Updateの自動更新を無効化すると、新しいビルドへの自動アップグレードも機能しなくなるはずです(画面4)。
Computer Configuration\Administrative Templates\Windows Components\Windows Update\Configure Automatic Updates
画面4 新しいビルドを自動インストールさせられたくない場合は、「ローカルコンピューターポリシー」(Gpedit.msc)で「Configure Automatic Updates」ポリシーを無効にする
Windows 8では「Windowsストア」を通じて、Windows 8.1への無償アップグレードが提供されました。Windows 10へのアップグレードがどのような方法になるのかまだ分かりませんが、もしかしたらWindows Updateを通じて提供されることになるかもしれません。
多くのプレビューアーさんが犠牲にした(これからする)ダウンロードおよびアップグレードに掛かる時間とネットワーク帯域が、Windows 10の製品版へのアップグレードをより良いものにしてくれることを期待しています。
アップデートは失敗からの回復が簡単になる?
ここまではWindowsのアップグレードの話でした。つまり、Windows 8.1からWindows 10へのアップグレード、あるいはWindows 10から次のバージョンへのアップグレードに関係すると思われる話です。
マイクロソフトはWindows 10で、アップデートの失敗から容易に回復できる新しい手段を用意しようとしているようです。こちらは、OSのアップグレードではなく、Windows Updateのアップデート(更新)の話になります。
「Windowsシステム回復環境」(Windows Recovery Environment:WinRE)には、PCの起動問題や安定性を回復するために、以下に示す機能が用意されています。
- Refresh your PC(PCのリフレッシュ)
- Reset your PC(PCを初期状態に戻す)
- System Restore(システムの復元)
- System Image Recovery(イメージでシステムを回復)
- Startup Repair(スタートアップ修復)
Windows 10では、新しいオプションの追加が計画されているようです。Windows 10 Technical PreviewのWinREに、「Uninstall Preview updates」という新しい項目を見つけました(画面5)。説明には“If Preview updates prevent Windows Technical Preview from loading, you can uninstall them(プレビュー更新がWindows Technical Previewの起動を阻んでいる場合に、それらをアンインストールできます)”とあります。
“Preview updates”という表現は誤解されそうですが、Windows Updateでインストールされた更新プログラムのことを指しているようです。少なくとも、新しいビルドのアップグレードインストールをロールバックしてくれるような機能ではありません。アップグレードインストールの失敗はこの機能とは関係なく、アップグレードインストールのプロセスの中で必要に応じてロールバックされるようになっています。
正常に動作しているWindows 10 Technical Previewで、このオプションを実行した前後でインストールされた更新プログラムの一覧を確認してみましたが、全く変化はありませんでした。どうやらインストールが成功(完了)した更新プログラムは対象ではないようです。
そこで、更新プログラムをインストールした後でWindowsを再起動ではなくシャットダウンし、Windows 10 Technical Previewのインストールメディアから起動後、WinREを開始して、「Uninstall Preview updates」を実行してみました(画面6)。すると、シャットダウン前にインストールした更新プログラムの変更を元に戻す処理が始まり、更新プログラムがインストールされていない状態で起動しました(画面7、画面8)。
今年はWindows Updateで配布された更新プログラムの不具合が特に多かったような印象があります。実際に不具合の影響を受けてしまった人は、毎月のWindows Updateが怖いと感じるでしょう。特に、更新プログラムの不具合が原因でPCが起動不能になると、PCの初心者には対処しようがありません。
問題発生時にこの新しい機能にうまく誘導できれば、Windows Updateをより安心して使えるようになるかもしれません。“うまく誘導できれば”とは、その場面で適切とは思えない「Reset your PC」や「Startup Repair」ではなく、より適切な「Uninstall Preview updates」を実行するように誘導できるかということです。オプションだけが増えても、どれを実行してよいか分からないのでは役に立ちません。
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筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2014)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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