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続報、Windows 10 Technical Preview。新しいビルドの私的衝撃山市良のうぃんどうず日記(19)

本連載第16回で「Windows 10 Technical Preview」を取り上げましたが、2014年10月末に新しいビルドが利用可能になったので続報をお送りします。タイトルの“衝撃”ですが、一つはダウンロードされるファイルサイズにちょっとびっくり、もう一つは画面解像度です。

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連載目次

新しいビルドへの更新は、なんと「アップグレードインストール」です

 「Windows 10 Technical Preview」は、新しいビルドが公開されると簡単な方法でアップグレードできるようになっています。新しいビルドのダウンロードとインストールは、「PC Settings」(PC設定)の「Update and recovery > Preview build」から行えます。なお、Windows Server Technical Previewにこの機能はありません。

 Windows 10 Technical Previewは2014年10月1日に公開されたばかりですが、10月21日(いずれも米国時間)には新しいビルド「9860」(以前のビルドは9841)が利用可能になりました。現在ダウンロード提供されているWindows 10 Technical Previewはビルド9841のままですが、ビルド9841のインストール後に「PC Settings」を開けば、すぐに新しいビルドを入手してアップグレードすることができます(画面1)。

画面1
画面1 「Install now」で新しいビルドのインストールを開始すると、インストールソースが「C:\$Windows.~BT」フォルダーに展開され、自動的なアップグレードインストールが開始する。このときの「C:\$Windows.~BT」は2〜2.74GBほど

 新しいビルドへのアップグレードは、「Windowsストア」で提供されたWindows 8からWindows 8.1への無償アップグレードによく似ています。Windows Updateによる更新ではなく、新バージョンのアップグレードインストールが実行され、設定やアプリが新しいビルドへ引き継がれるようになっています。

 ダウンロードサイズは32ビット版で2GB、64ビット版で2.74GB程度で、Cドライブにダウンロードされた上でアップグレードインストールが開始されます。Cドライブに十分な空き領域がないとアップグレードが成功しないでしょうから、その点はご注意ください。

 アップグレード完了後は「ディスクのクリーンアップ」(Cleanmgr.exe)を実行して、「Previous Windows Installation(s)」(C:\Windows.old)と「Temporary Windows installation files」(C:\$Windows.~BT)をクリーンアップすることで、アップグレード後に不要になったファイルを削除してディスク領域を解放できます(画面2)。

画面2
画面2 新しいビルドへのアップグレードが完了したら、「ディスクのクリーンアップ」(Cleanmgr.exe)を実行してディスク領域を解放しよう

 「ディスクのクリーンアップ」画面で「Temporary Windows installation files」(C:\$Windows.~BT)が626MBしかないことに疑問を抱くかもしれません。これは、アップグレードインストールの完了後にWindowsのインストールイメージを含む「C:\$Windows.~BT\Sources\Install.esd」(Install.esdは標準的な圧縮のInstall.wimをさらに圧縮したもの)が、「C:\RecoveryImages\Install.esd」に移動され、PCのリフレッシュやリセットで利用される回復イメージとして設定されるからです。

 複数のPCや仮想マシンでWindows 10 Technical Previewを試しているという場合、PCや仮想マシンごとに2GB以上のダウンロードが発生するのは非常に無駄ですし、時間もかかります。筆者は試していませんが、インストール開始直後の「C:\$Windows.~BT」からISOイメージを作成することで、新規インストールに利用することもできるようです。筆者は全て(数台)のWindows 10 Technical Previewの評価環境を通常の方法でアップグレードしました。次回のビルドでは、「C:\$Windows.~BT」を利用した方法を試してみるつもりです。

「for Enterprise」はプロダクトキーの入れ替えが必要

 「Windows 10 Technical Preview for Enterprise」(企業向けのEnterpriseエディション)ですでに評価をしているという場合は、ビルド9860にアップグレードするとWindowsライセンス認証が失敗するという不具合があるようです。

 Technical Previewはライセンス認証することで2014年4月15日(UTC)まで評価できますが、ライセンス認証しないと一部の機能(パーソナル設定など)が制限され、30日で使用期限が切れてしまいます。

 この問題は、Windows 10 Technical Preview for Enterpriseのダウンロードサイトに掲載されている「プロダクトキー」に変更することで解消できます(画面3)。筆者の環境では、プロダクトキーを変更してもライセンス認証が失敗するという問題がありましたが、PCを再起動することで自動的にライセンス認証が完了しました。

画面3
画面3 Windows 10 Technical Preview for Enterpriseをビルド9860にアップグレードするとライセンス認証が成功しないが、プロダクトキーを入れ替えることでこの不具合は解消される

Build 9860のSysprepができない?

 VHDブート環境やEnterpriseエディションの「Windows To Go」を利用して、Windows 10 Technical Previewを評価している人もいると思います。残念ながら、これらの環境はアップグレードインストールができません。つまり、通常の方法で新しいビルドにアップグレードすることができないのです。

 筆者は新しいビルドのWindows To Go環境を作成するために、仮想マシン環境にWindows 10 Technical Preview for Enterpriseのビルド9841を新規インストールして、ビルド9860にアップグレードしたものを「システム準備ツール」(C:\Windows\System32\Sysprep\Sysprep.exe)で汎用化し、Windows To Go用のカスタムイメージ(.wim)を作成しようとしました。

 ところが、Sysprepは失敗します。レジストリの変更などいろいろ試してみましたが、どうあがいてもSysprepを完了させることはできませんでした。

 結論から言うと、Sysprepはアップグレードインストールをサポートしていませんでした(画面4)。これまでアップグレードインストールをしたWindowsに対してSysprepを実行したことがなかったので気が付きませんでしたが、以下のドキュメントにちゃんと書いてありました。

インストールの種類がアップグレードインストールである場合にSysprepツールを使ったり、すでに展開されたWindowsの既存のインストールを再構成したりすることは、サポートされていません。Sysprepは、Windowsの新しいインストールの構成にのみ使用してください。

画面4
画面4 アップグレードインストールであるビルド9860の環境は、Sysprepによる汎用化がサポートされない

 筆者は、Sysprepで汎用化していないイメージからWindows To Go用のカスタムイメージ(.wim)を作成しましたが、問題なくWindows To Goで起動できました。ちなみに、Windows To Go用のカスタムイメージ(.wim)は、オフラインのディスクイメージに対して「DISM /Capture-Image」コマンドを実行することで作成できます。

ビルド9860の隠れた新機能? 低解像度でもアプリOK

 ビルド9860の新機能については、以下の公式ブログのアナウンスや他のIT系メディアの記事でも取り上げられていると思いますので、本連載では詳しく掘り下げることはしません。

 メディアで取り上げられている主な新機能には、次のようなものがあります。

  • 新しい通知機能(Action Center for Windows PC)(画面5)
  • 仮想デスクトップ間のアプリケーションの移動
  • 仮想デスクトップの切り替えのアニメーション効果
  • アプリやウィンドウを開いたときのアニメーション効果
  • コントロールパネルの各種項目を取り込んだ新しい「zPC Settings」(画面6)

 “アクションセンター(Action Center)なんて前からあるじゃん”と思うかもしれませんが、これはWindows Phone 8.1(日本国内では出回っていないはず)のAction Centerの通知機能をWindowsに実装したものであり、「コントロールパネル」の「アクションセンター」とは全く別ものになります。ややこしいので、「通知センター」(Notification Center)とかにしてくれるといいのに。

画面5
画面5 ビルド9860の新機能「Action Center」。コントロールパネルの「アクションセンター」とは全く別の、Windows Phone 8.1の機能から取り入れられた新しい通知機能
画面6
画面6 何やら実験的な匂いのする「zPC Settings」。アスタリスク(*)が付いている項目は空っぽ。これが「コントロールパネル」を完全に置き換えることになるのかは不明

 筆者が最も注目したというか、最も驚いたのは、モダンアプリの解像度要件が撤廃された“らしい”ということです。

 Windows 8が登場して以降、Windows 10 Technical Previewのビルド9841までは、モダンアプリ(Windowsストアアプリ)を起動するには、最低でも1024×768ピクセルの画面解像度が要求されました(画面7)。今回、ビルド9860で作成したWindows To Go環境で、いくつかのPCを起動して試したところ、最大解像度1024×600のPC(昔のUltra Mobile PC)でもアプリを起動できることを発見しました(画面8)。

画面7
画面7 ビルド9841までは、1024×768未満の解像度ではモダンアプリの起動ができない
画面8
画面8 ビルド9860では、1024×768未満の解像度でもアプリを利用できた。筆者のUMPC(Ultra Mobile PC)では、最小320×200でもOK

 また、この最大解像度1024×600のPCの解像度設定を開くと、最小320×200の解像度に設定できることも発見。モダンアプリは320×200の解像度でも利用できました。

 PC向けWindows、タブレット向けWindows RT、スマートフォン向けWindows Phoneの三つのプラットフォームを一つに統合するという、マイクロソフトの「One Windows」戦略に何か関係していそうな感じがします(あくまで筆者の個人的な感想です)。なお、先ほど解像度要件が撤廃された“らしい”といったように、正式リリースでどうなるのかは分かりません。

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筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2014)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手がける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。


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