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Windows as a Serviceを正しく理解しませんか――Windows 10とOffice 2016のブランチ更新概論その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(42)(4/4 ページ)

「Windows 10はWindowsの最後のバージョン」となり、「Windows as a Service」で継続的にセキュリティ更新と新機能が提供されるといわれています。Windows 10から導入されたWindows as a Serviceの考え方、まだきちんと認知されていないようなので、筆者なりにまとめてみました。

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Enterpriseエディションは“LTSBに簡単切り替えられる”ワケじゃない

 CBでは年に4回ほど(4カ月ごと)、CBBでも年に少なくても1回(最大8カ月ごと)のアップグレードが必要です。しかし、PCの用途や基幹業務システムなどミッションクリティカルなシステムでは新機能の提供よりも、長いスパンで変更されることがなく、安定稼働できることが求められるはずです。

 LTSBはそのような目的のために、Windows 10 Enterpriseに用意された企業向けのBranchモデルです。LTSBに対しては新機能、つまり新しいビルドは提供されず、セキュリティ更新やバグフィックスだけが、最低10年(5年のメインストリームサポートと5年の延長サポート)の製品ライフサイクルサポート期間中、継続して提供されます。

 マイクロソフトはWindows 10の一般提供と同時に、最初のLTSBリリースである「Windows 10 Enterprise 2015 LTSB」の提供を開始しました。マイクロソフトはその後12カ月の間に、いくつかの新機能を追加した、次のLTSBをリリースする予定です。おそらくこれは「Windows 10 Enterprise 2016 LTSB」になるでしょう。

 その後、2〜3年ごとにLTSBをリリースする計画のようです。LTSBを選択した場合、次のLTSB、あるいはさらに新しいLTSBにいつでもアップグレードできますが、最低10年間はアップグレードせずに同じビルドを使い続けることも可能です。

 Windows 10 EnterpriseとWindows 10 Enterprise LTSBは、ボリュームライセンスでのみ提供されるエディションです。Windows Enterpriseソフトウエアアシュアランス(SA)やWindows Virtual Desktop Access(Windows VDA)のライセンスがある場合は、Windows 10 Enterpriseの代わりに、Windows 10 Enterprise LTSBをインストールできます。また、Windows 10 Enterprise LTSB Upgradeライセンスで、Windows 10 Enterprise LTSBの永続的ライセンスを取得することも可能です。

 Windows 10 Enterprise LTSB(現在はWindows 10 Enterprise 2015 LTSB)は、Windows 10 EnterpriseのCBやCBBから簡単に切り替えできるものではなく、別のエディションと考えてください。Windows 10 Enterprise LTSBは、Windows 10 Enterpriseから一部の機能が削除されています。

 具体的には、Windows 10 Enterprise LTSBには新しいWebブラウザーである「Microsoft Edge」とCortanaが搭載されていません(画面8)。また、ストア、メール、カレンダー、OneNote、天気、ニュース、スポーツ、マネー、フォト、ミュージック、マップ、電卓といった標準のユニバーサルアプリ(ストアアプリ)も提供されません。

画面8
画面8 Windows 10 Enterprise LTSBには、新しいWebブラウザー「Microsoft Edge」は搭載されず、「Internet Explorer 11」のみが提供される。Cortanaやストアアプリも提供されない。Windows 10では電卓がユニバーサルアプリ化されたが、LTSBには従来と同じWindowsアプリ版が搭載されている

 LTSBへの切り替えは、Windows 10 ProやWindows 10 Enterprise、あるいはサポートされる以前のバージョンからWindows 10 Enterprise LTSBにアップグレードすることで可能です。古いLTSBから新しいLTSBリリースに切り替える場合も、アップグレードになります。

最新版のOffice 2016もBranch更新モデルを採用

 先日、Windows向けのMicrosoft Officeの最新バージョンである「Office 2016」がリリースされました。Branchモデルによる新機能の提供方法は、Office 2016およびOffice 2016バージョンのOffice 365アプリにも採用されています。ただし、Office 2016のBranchモデルは、Windows 10と統合されるものではありません。

 「クイック実行(Click-To-Run:C2R)」というテクノロジで提供されるOffice 2016では、更新プログラムがWindows UpdateやWSUS/SCCMを通じて提供されることはなく、Office 2016のアプリ自身に備わる「自動更新機能」で管理されます(ボリュームライセンスのMSI版を除く)(画面9)。

画面9
画面9 クイック(C2R)実行版のOffice 2016には、Windows Updateではなく、Officeアプリに備わる自動更新機能で更新される。この画面はOffice 365 ProPlusの先行リリース(FR CBB)

 Office 2016には次の三つBranchモデルがあり、Office 365 ProPlusの既定はCBB、Office 365 ProPlus以外の既定はCBとなります(表2)。Office 365 ProPlusは、オプションで先行リリースを選択することができ、組織全体またはユーザー単位で新しいバージョンをパイロット展開できます。

Branchモデル 内容
Current Branch(CB) 新機能を随時追加、セキュリティ更新、バグフィックスも随時提供。Office 365 ProPlus以外の既定のBranchモデル
Current Branch for Business(CBB) 4カ月ごとに新機能を提供。セキュリティ更新とバグフィックスは、次の次のCBBの開始まで提供。Office 365 ProPlusの既定のBranchモデル
First Release Current Branch for Business(FR CBB) 次の(4カ月後の)CBBの先行リリース。アプリ互換性の評価のためのパイロット展開が可能
表2 Office 2016で用意された三つのBranch更新モデルの違い

 この既定のBranchモデルの関係で、Office 365 ProPlus(Office 365 Enterprise E3プラン他)にOffice 2016バージョンのアプリが提供されるのは、4カ月後の2016年2月からになります。Office 365 ProPlusにとって現在は、Office 2016バージョンの評価期間であり、先行リリースとして導入することが可能です。詳しくは、以下のドキュメントと記事をご覧ください。

 10月1日にOffice 2016向けの緊急のセキュリティ更新(MS15-099など)がリリースされていますが、すでにOffice 2016を実行している環境にこの更新はWindows Updateで配布されなかったはずですし、手動でインストールすることもできなかったはずです。この更新はボリュームライセンスのMSI版向けのものだからです。ボリュームライセンス以外の全てのOffice 2016はクイック(C2R)実行版であり、Officeに組み込まれた更新機能で自動更新されます。

「その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説」バックナンバー

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2015)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。


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