Windows Update for Businessってどうなったの?:その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(47)(2/2 ページ)
Windows 10の登場ですっかり変わってしまったWindows Update。IT管理者の多くが戸惑っているに違いありません。「Windows 10 バージョン1511 ビルド10586」に合わせ、「Windows Update for Business」が利用可能になりました。しかし、筆者を含む多くの人が想像していたのとは違い、SaaSタイプのサービスではありませんでした。
Windows Update for Businessは、WSUSとともには機能しない
Windows Server 2012およびWindows Server 2012 R2のWSUS(WSUS 4.0)は、以下の修正プログラム「KB3095113」を適用することで、Windows 10 バージョン1511以降の機能アップデートに対応します。Windows Server 2008 R2以前やWindows Small Business Server 2011に含まれるWSUS 3.0 Service Pack(SP)2は、Windows 10の機能アップデートには対応しません。
- Update to enable WSUS support for Windows 10 feature upgrades[英語](Microsoft Support)
Windows Update for Businessを利用する場合は、極めて重要な点が一つあります。それは、WSUS 4.0(KB3095113を更新済みであっても)やSystem Center 2012 R2以前のConfiguration Managerとの組み合わせでは機能しないということです。
WSUS 4.0と組み合わせた場合、つまり「Windows Update¥イントラネットのMicrosoft更新サービスの場所を指定する」ポリシーが構成されている場合には、“「アップグレードおよび更新を延期する」ポリシーは無視される”と公式ブログでは説明されています。System Center 2012/2012 R2のConfiguration ManagerにおけるWindows 10のサポートは、Windows 10の初期リリースバージョン(ビルド10240)を2016年2月までと、Windows 10 Enterprise 2015 LTSBまでとなっています。
- System Center Configuration Manager: Support for Windows 10 and Microsoft Intune[英語](System Center Configuration Manager Team Blog)
Windows Update for Businessの対象となるのは、Windows Updateに直接(またはプロキシサーバー経由で)接続するWindows 10 バージョン1511以降です。次に説明する最新バージョンのSystem Center Configuration ManagerおよびMicrosoft Intuneでは、Windows Update for Businessがサポートされます。
大規模環境はMicrosoft Intuneまたは次期Configuration Managerでリングをコントロールできる
マイクロソフトのクライアントPC/モバイルデバイス管理サービスである「Microsoft Intune」では、モバイルデバイス管理(MDM)機能を利用して、Windows Update for Businessに対応できるようです。すでに利用可能なのか、今後、利用可能になるのかを筆者は確認していません。
先日リリースされたばかりの最新のSystem Center Configuration Manager バージョン1511(2015年12月リリース)は、Windows Update for BusinessおよびWindows 10 Enterprise LTSBの管理に完全対応しており、更新サイクルを「展開リング」(Ring)で制御できるようになっています(画面4)。具体的には、CBへ新しいビルドを展開するまでの日数を0〜120日、CBB(CBの4カ月後)へ新しいビルドを展開するまでの日数を0〜120日の範囲で、1日単位で調整することができます。
画面4 System Center Configuration Manager バージョン1511の「Windows 10のサービス」機能。サービスプランを作成して、デバイスコレクション(コンピューターのグループ)ごとにCBとCBB、およびCBBのスケジュールを細かく制御できる
なお、今回リリースされたSystem Center Configuration Manager バージョン1511は、Windows as a Serviceとして提供されるWindows 10と同じように更新ブランチの考えが取り入れられ、最新のIT環境に合わせて継続的に機能強化されていく予定です。これとは別に、System Center 2016のConfiguration Managerが、CBBに相当するバージョンとして他のSystem Center 2016のサーバーと合わせて提供されることになる予定です。
- The GA of System Center Configuration Manager 1511[英語](Microsoft TechNet Blogs)
Windows 10が企業クライアントOSの標準として本格的に採用されるのは、このような周辺サービスが対応し、問題なく運用できるということを自社の評価環境や先行ユーザー事例で確認できてからになるでしょう。ですから、それまでには、まだしばらく時間がかかるかもしれません。
Windows Update for Businessの公式ドキュメントも先日公開されたばかりです。十分な検討、検証をお勧めします。
- Windows Update for Business[英語](Microsoft TechNet)
少なくとも、企業のクライアントPCをコントロールできないCBで運用するのでは、現場は仕事にならないでしょう。Windows 10 バージョン1511がリリースされてからの1カ月、CBのPCには毎週のように累積的な更新プログラムが配布され、再起動が要求されました(画面5)。CBBで更新の延期を構成したPCには、その間、「Windows Defender」の定義ファイルの更新のみが配布されました(画面6)。
画面5 Windows 10リリース後3週間で再起動を伴う累積的な更新プログラムが3回提供された。安定稼働のためには、CBBを選択し、さらに日々の更新をWindows Update for Businessで制御することが必要
クライアントPCの安定的な運用のためにはCBBが必須になるでしょう。Windows Update for Businessなら、さらなる安定運用を望めそうです。
2016年8月18日追記
2016年8月17日(日本時間)より、WSUS 4.0でWindows 10 Anniversary Update(Windows 10 <エディション>、バージョン 1607、<言語名>の機能更新プログラム)の展開が可能になりました。WSUS 4.0でWindows 10 Anniversary Updateを配布するには、WSUSに更新プログラムKB3159706が適用されている必要があります。
- Windows Server 2012 / 2012 R2 WSUS 用の更新プログラム KB3159706 について(Japan WSUS Support Team Blog)
また、この記事では「Windows Update for Businessは、WSUSとともには機能しない」としていますが、実際には共存できるようです。簡単な検証結果を筆者の個人ブログに掲載しました
- Windows 10 の更新方法、WSUS と Windows Update for Business は共存できるかも(筆者個人ブログ:山市良のえぬなんとかわーるど)
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筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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