ここ最近の筆者はクラウドへのWindowsの展開や次期Windowsバージョンの評価などで、Windowsを英語環境で操作する機会が多くなっています。英語環境でWindowsを使っていると、いろいろと気付くことがあります。
さて、新しい年を迎えましたが、2015年は後半にWindowsの次期バージョンである「Windows 10」のリリースが予定されています。
2014年10月に最初のプレビュー版となる「Windows 10 Technical Preview」(ビルド9841)が公開され、その後、10月にビルド9860、11月にビルド9879と、立て続けに更新ビルドが公開されました。本連載でもTechnical Previewについて、ビルド9841とビルド9860を取り上げました。
Windows 10 Technical Previewは現在、英語(米国)、英語(英国)、簡体字中国語、ポルトガル語(ブラジル)の四言語でのみ提供されています。日本語版や日本語言語パックは提供されていませんが、日本語の表示と入力は可能です。日本で試している方の多くは、英語(米国)版に日本語のサポートをセットアップして評価していることと思います。
1月中には新しいビルドが公開されるそうです。そして、新しいビルドでは日本語版の提供もあるというウワサがあります。Windows 10 Technical Previewには「Preview Builds」という新しいビルドへの簡単なアップグレード機能がありますが、もし今月、日本語版が出るとしてもPreview Buildsの機能で日本語版に移行することはできないはずです。なぜなら、そもそもWindowsは、異なるベース言語へのアップグレードインストールに対応していないからです(画面1)。
現在の英語版を新しいビルドにアップグレードした場合は、アップグレード後の英語版の環境に日本語言語パックを追加することで日本語化することはできるかもしれません。しかし、その時点で日本語言語パックが提供されるかどうかは不明です。日本語言語パックが提供されないようなら、日本語版の環境で評価するには日本語版の新しいビルドを新規インストールする必要があります。もちろん、英語版の環境のまま評価を続け、提供されるかどうか分からない日本語言語パックを待つというのも選択肢の一つです。
すでにご存じのことかもしれませんが、Windowsは非常に多くの言語に対応しており、表示言語や入力言語を切り替えることができます。Windows 7 EnterpriseおよびUltimateでは、35の言語パックが提供されました。Windows 8からは対応言語が100以上に増え、エディションにかかわらずコントロールパネルから言語パックをダウンロード、追加して、言語を切り替えることができるようになっています。
Windows 10 Technical Previewは日本語版が提供されず、日本語言語パックも提供されていないので、英語版をインストールした場合は英語のGUI(Graphical User Interface)で試用することになります。筆者は英語が得意な方ではありませんが、Technical Previewに限らず、英語版のWindowsを操作していると、日本語版よりも英語版の方が見た目や使い勝手が良いと感じることがあります。
Windows 8が登場してから筆者がずっと気になっているのが、「スタート画面」のデザインです(画面2)。筆者だけかもしれませんが、「スタート」というカタカナ表記に違和感を覚えずにはいられないのです。
Windows 95のタスクバーの左端に登場したときから「スタート」というカタカナ表記は個人的に気に入らなかったのですが、Windows 8からのスタート画面の「スタート」はそれとは違う違和感があるのです。どこに違和感があるのか調べてみたところ、同じメイリオフォントで書いた「スタート」と比べて「ト」の位置が左寄りになっていました。日本語版Windowsでは間延びした感じをなくすために、わざわざ字間を調整しているのでしょうか。
筆者個人としては、「スタート」よりも「Start」のままの方がデザイン的にカッコイイと思うのですが、お子さまからお年寄りまで幅広く使ってもらうためには「スタート」の方がよいのでしょうね。ちなみに、繁体字中国語(香港、台湾)版では、「Start」は「開始」という表記になるようです。つまり、Windowsの対応言語の数だけ異なるスタート画面があるということ。
以下のサイトの表示言語をいろいろと切り替えると、世界各国のスタート画面を見比べることができます。例えば、イスラエル−ヘブライ語(he-il)や中東−アラビア語(ar-xm)に切り替えてみると、不思議な感覚を体験できるでしょう。
コントロールパネルの「すべてのコントロールパネル項目」をよく開くという人にとって、英語版のWindowsのコントロールパネルはとても使いやすいと思います。
日本語版のWindowsの場合、「すべてのコントロールパネル項目」を開くには、エクスプローラーのアドレスバーで「コントロールパネル」の下の階層から、上から三つ目、「コンピューターの簡単操作」「システムとセキュリティ」の下の「すべてのコントロールパネル項目」を選択します。英語版のWindowsの場合、「Control Panel」の下の階層の最上位に「All Control Panel Items」があり、素早く選択することができます。
また、「All Control Panel Items」を開くと、多数のアプレットのアイコンが存在しますが、英語版のWindowsではアルファベット順にアイコンが並んでいるため、素早く目的のものを見つけられます(画面3)。例えば、「管理ツール」は「Administrative Tools」なので、上の方にすぐに見つかります。
日本語版のWindowsの場合、「すべてのコントロールパネル項目」はアルファベット順の次にアイウエオ順でアイコンが並び、その後に漢字で始まるタイトルのアイコンという表示になります(画面4)。「自動再生」の次に「色の管理」が来ることを考えると、漢字のアイコンの並びはフリガナ順ではありません。よくよく調べると、全てのアイコンはASCII/JISコード順に並んでいます。このような並び順であるため、目的のアプレットを素早く見つけるのが難しくなっています。ところで、「管理ツール」はもう見つかりましたか?
Windows 95で初めて登場し、Windows 7まで続いた「スタートメニュー」は、システムツールやインストールされているアプリを探すのに便利だったと思います。スタートメニューのアイコンの並び順は、コントロールパネルと同様にASCII/JISコード順でしたが、プログラムグループで階層構造になっているため、たとえ名前を知らないツールやアプリであっても探すのにさほど苦労はしませんでした。Windows 8で採用されたスタート画面が不評だったのは、このような操作ができなくなったことが大きな要因の一つだと思っています。
Windows 8からはよく使うアプリをスタート画面にピン留めしておき、それ以外のものは「アプリの一覧」(すべてのアプリ、アプリビュー)から探すか、検索機能を使って探すというスタイルになりました。このアプリの一覧は、コントロールパネルの並び順とは違って、アルファベット順のアイコンに続いて、日本語のアイコンがフリガナ順(ひらがなとカタカナは区別しない)に並び、その後にプログラムグループが続きます。
インストールされているアプリが多くなると平面的な画面が横に伸びるため、順番に並んでいても探しやすいとは思えません。「Windows 8.1 Update(KB2919355)」からは、「A」「B」「C」「あ」「い」「う」のインデックスで分類表示されるようになったため、一見すると使いやすくなったようにも見えます。
しかし、英語タイトルのアプリだけならインデックスは最大でも26ですが、日本語ではインデックスは最大で50にまで増えてしまいますし、インデックスの表示領域が増えた分、画面はさらに横に伸びてしまいます(画面5)。
アプリビューでは縮小表示でインデックス表示に切り替え、特定のインデックスの場所にジャンプできるようになっていたり、インストール順や使用頻度順、カテゴリ順に並べ替えたりできるのですが、これらの機能をきちんと使いこなせているでしょうか。使い方を知っているとしてもインストールされているアプリが多いと、インデックスだけで画面がいっぱいになっているかもしれませんね。
新しいUIも戸惑うのは最初だけで、慣れれば使いやすいという人もいますが、最近のWindowsは慣れたころにガラリと変更してくるんですよね。Windows 10 Technical Previewの現在のビルドには、スタートメニューがWindows 7のそれとはちょっと違った形で復活しました。
この新しいスタートメニューはマウスとキーボードで操作するユーザー向けのもので、今後のプレビューではタッチデバイス向けのスタート画面や、「Continuum」と呼ばれるUIの切り替え機能が新たに登場してくるでしょう。Technical Previewプログラムに参加したなら、日本語環境の改善のために積極的にフィードバックしましょう。
もう一度、前出の画面3を見てください。Windows VistaからWindows 8.1の英語版のコントロールパネルのトップには、青い旗のアイコンの「Action Center」が配置されていました。タスクバーの通知領域の旗のアイコンで、セキュリティやメンテナンスに関する問題を指摘してくれる「アクションセンター」のことです。画面3は、ビルド9879のものですが、Action Centerが存在しません。実は、一つ前のビルド9860まではAction Centerが存在しました。
ビルド9860まで存在していたAction Centerはどうなったのかというと、ビルド9879で「Security and Maintenance」という名称に変更されました。
ビルド9860では、従来のものとは異なる新しい「Actions(sが付く) Center」が新機能として追加され、コントロールパネルのAction Centerと、新機能のActions Centerが存在するという分かりにくい状態になっていました。
これがビルド9879において、整理されたということになります。以下の画面6のように、新しいActions Centerは通知を集中的に行うものとして機能し、セキュリティ設定やメンテナンスに関係する旧Action Centerの通知は、新しいActions CenterにSecurity and Maintenanceの通知として分類されて表示されます。
これは、Windows 10 Technical Previewの各ビルドを注意深く見ていかないと気付かない変更点です。Windowsの使用や正常性に関する通知を集約するのはよい設計だとは思いますが、長い間、使われてきた名前が変更されるのは賛成できません。例えば、ヘルプデスクの担当者なら、“旗のアイコンを右クリックして、アクションセンターを開いてください”という指示が通じない場合が出てくるでしょう。
ちなみに、通知領域のアイコンのオン/オフ設定では「Actions Center」ではなく「Notification Center」となっています。筆者は、Windows 10 Technical Previewの「Windows Feedback」アプリを使って、新機能はNotification Centerという名前にして、旧Action Centerの名前を戻してほしいとフィードバックしておきました。
日本語版のWindowsを使っていると、当たり前のように「Microsoft IME」を使って日本語を入力、変換していると思います。ジャストシステムの「ATOK」や「Google日本語入力」など、自分好みの日本語入力システムをインストールして利用している人もいるでしょう。
Microsoft IMEのような入力システムを必要とするのは、日本語、中国語、韓国語といった、キーボードに収まらない多数の文字を持つ東アジアの少数の言語に限られるということは、日本語環境しか利用しない人にとってはなかなか気が付かないことだと思います。
筆者もそうですが、お隣の中国語や韓国語の入力環境がどうなっているのかも知っている人は少ないと思います。同様に、Microsoft IMEのような入力システムを持たない言語圏の人にとって、Microsoft IMEのような入力システムはその存在すら知られていないのでしょう。
昨年末、とある民放テレビで日本の救急医療の現場をドイツと米国の医療の専門家が視察するという番組を見ました。その中でドイツと米国の専門家たちは、電子カルテを短時間で作成できるシステムに非常に驚いていました。
驚いていたのは3文字程度のキーを入力するだけで定型文を入力するというものだったのですが、筆者には単に日本語入力システムのユーザー辞書を利用した入力に見えました。医療現場専用の製品やソリューションを使っているのかもしれませんが、Windows標準のMicrosoft IMEだけでも60文字以内の文ならユーザー辞書への単語登録で簡単に対応できます。
年末年始に年賀状の宛名を書く際、Microsoft IME標準の「郵便番号辞書」を活用した人もいるでしょう。郵便番号を入力すれば、対応する住所に変換でき、後は番地を入力するだけで済みます。これも他国の人にとっては、信じられない機能なのかもしれません。
ちなみに、Windows 7やWindows 8.1標準のMicrosoft IMEを利用していて、Windows Updateで最新の状態に更新していれば、日本郵便が公開している「平成26年9月30日更新版」のデータに基づいた郵便番号辞書を利用できます。Microsoft Office IME 2010(Officeユーザーに無償提供)の場合は、ちょっと古くて「平成25年9月30日更新版」のデータに基づいた郵便番号辞書が最新です。
Microsoft IMEやMicrosoft Office IME 2010ではこの他にも、拡張辞書、カタカナ英語辞書、人名地名辞書、顔文字辞書、記号辞書、Outlook用の辞書など、さまざまな辞書を利用できます(画面7)。あまり知られていないかもしれませんが、「オープン拡張辞書」という機能もあり、Excelで独自の辞書を作成したり、作成した辞書を配布したりすることもできます。
このような充実した辞書機能は、日本語入力環境独自のもののようです。Windows 10 Technical Previewに中国語(Microsoft Pinyin、Microsoft Bopomofo)や韓国語(Microsoft IME)のサポートを追加して試してみましたが、ここまでの辞書機能は備えていませんでした。反対に、中国語(簡体字)のMicrosoft Pinyinには、「クラウドIME(Cloud IME)」という日本語Microsoft IMEにはない変換機能が備わっていました。
日本語サポートを追加していない、英語版のWindowsでは入力環境はどうなるのか、Windows 10 Technical Previewを「English(United States)」でセットアップしてみました。
英語(米国)だけの言語では、Microsoft IMEのような入力システムは存在しません。テキストの入力作業は、キーボードのキートップ通りに入力していくだけです。英単語をユーザー辞書に登録したくても、ユーザー辞書というものがないのです。テキストの入力支援機能があるとすれば、Internet ExplorerやMicrosoft Word、Outlookなどのアプリケーションが提供するものくらいのようです。
Windows 8からは「スペルチェック機能」(ミススペルの強調表示、自動訂正)や簡単な辞書登録機能が追加されていますが、Windowsの全ての場所、全てのアプリで使えるわけではありません。モダンアプリで部分的に利用できるだけのようです(画面8)。
Windows 10 Technical Previewでは、入力時にテキスト候補を表示する機能(Show text suggestions as I type)など、入力支援機能が追加されました。Microsoft IMEがある日本語環境で、いままでなかったことにちょっと驚きます。この機能は全ての入力場所で使えるようですが、タッチキーボードによる入力でのみ利用できます(画面9)。
現在のWindowsは言語に依存しない設計(言語ニュートラル)になっているそうですが、同じバージョンのWindowsであっても言語環境によって見た目も使い勝手も大きく違ってきます。
同じPCをユーザーの母国語で使えるのは素晴らしいことですが、複数の言語環境をサポートする必要がある企業のIT担当者は苦労していることでしょう。
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2014)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手がける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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