先月、一部のWindowsで、1週間以上も「Microsoft Update」から更新プログラムを入手できないというトラブル(事件)がありました。放置しておけば自然に解消したトラブルだったのですが……。
先月の「Microsoft Update」のトラブルは2014年11月18日から始まり、10日後の27日にようやく解消しました。そのトラブルとは、Windows Server 2003やWindows Server 2003 R2の「Internet Explorer」(IE)で「Microsoft Update V6サイト」を開くと、以下のエラーで更新確認やインストール、設定変更といった操作が全くできなくなるというものでした(画面1)。Microsoft Update V6サイトを使用しない、Windows VistaやWindows Server 2008以降には影響しないトラブルです。
[エラー番号:0x80248015]
Webサイトに問題が発生したため、このページを表示できません
この問題が発生していても、「自動更新」を使用したMicrosoft Updateからの更新のダウンロードとインストールは問題なく機能しました。また、Microsoft Update V6サイトではなく、標準の「Windows Update V6サイト」を利用している場合は、影響を受けませんでした。
ただし、トラブルが発生した期間中、Windows UpdateからMicrosoft Updateに切り替えようとしても、同様に0x80248015のエラーで失敗するという状態でした。
今回のMicrosoft Updateサイトの問題は自動更新には影響せず、11月12日の定例更新の後に発生し、次の12月10日の定例更新の前に解消したので、自動更新に任せている場合は全く影響を受けることはなかったでしょう。「Windows Server Update Services」(WSUS)で更新を管理している企業も同様に影響を受けなかったはずです。
しかし、11月19日には定例外で、以下の緊急の更新プログラムがリリースされました。このセキュリティ問題はWindows Server 2003にも影響するものであり、急いで対応しようと19日にMicrosoft Updateサイトのトラブルに遭遇してしまった方もいるのではないでしょうか。
今回のトラブルは、発生から10日ほどかかりましたが、Microsoft Updateサイト側の修正により解消されました。サービスを提供するサイト側の問題であるため、トラブルを解決しようとクライアント側であがいても何もできなかったはずです。
前日の17日まで問題なく利用できていたMicrosoft Updateが翌18日になって突然利用できなくなるというトラブルに遭遇した場合、前日にインストールした更新プログラムのいずれかが原因と考える人は多いでしょう。該当する更新プログラムがない場合は、マイクロソフトや他社のマルウェア対策ソフトの定義ファイルを犯人と疑うかもしれません。
次に、Windows UpdateやMicrosoft Updateのトラブルを解決する一般的な対処方法である「クライアントコンポーネント」のリセットを試してみるでしょう。マイクロソフトが提供する「Fix It」ソリューションもその一つです。しかし、以前に「診断ツール Fix it:Windows Updateに失敗する問題」に公開されていたFix Itは、Windows Vista以降向けの以下のサイトにリダイレクトされるようになりました(画面2)。
以下のサポート技術情報には、以前のバージョンのWindowsに対応したFix Itが残っています。また、手動でクライアントコンポーネントをリセットする手順も説明されています。
実は、今回のMicrosoft Updateサイトのトラブルの場合、クライアントコンポーネントのリセットを行うと、さらに状況が悪くなるというジレンマがありました。クライアントコンポーネントのリセットを行うと、Microsoft UpdateからWindows Updateに強制的に戻されます。
今回のトラブルはWindows Updateサイトには影響しないため、問題が解消されたかのように見えますが、今度はMicrosoft Updateへの切り替えが失敗するようになります。リセットしていなければ自動更新を使用して、引き続きMicrosoft Updateから更新プログラムを入手できたものを、自ら問題を悪化させてしまったわけです。
今回のMicrosoft Updateサイトのトラブルの原因は明らかにされていません。筆者なりに調査して分かったこともありますが、問題は解消しているので原因についてここで言及する必要はないでしょう。筆者が今回のトラブルに注目するのは、Microsoft Update V6サイトを使用する全てのWindowsに影響したことです。
すでにサポートが終了しているWindows XPやWindows 2000も影響を受けました(画面3)。これらのWindowsについても、11月27日の朝のサイト側の修正により問題は解消しましたが、もし今回のトラブルが「2015年7月のWindows Server 2003のサポート終了後」に発生したとしたら、積極的に問題解消のためにマイクロソフトは対応してくれるのかと、そんな考えが頭をよぎりました。
よくよく考えれば、おそらく対応してくれるでしょう。なぜなら、Windows Server 2003/2003 R2がMicrosoft Update V6サイトを使用する最後のWindowsバージョンではないからです。
Windows Server 2003/2003 R2ベースのWindows Storage Server 2003/2003 R2は「2016年10月」まで、Windows XP EmbeddedベースのWindows Embedded for POSReady 2009は「2019年4月」までサポートが続きます(いずれも今回の問題の影響を受けました)。少なくとも、それまではMicrosoft Update V6サイトもWindows Update V6サイトも閉鎖されることはないでしょう。
「サポートが終了したWindowsに更新サービスなんて必要ないでしょ」と思われるかもしれませんが、サポートが終了したWindows上でサポート対象のマイクロソフト製品(Office 2007など)を利用している場合は、Microsoft Updateで毎月のようにセキュリティ更新プログラムが配布されています。
また、「Microsoft Security Essentials」や「System Center Endpoint Protection」は、定義ファイルの自動更新にMicrosoft Updateを使用します。何らかの理由があってサポートが終了したOSを新規インストールする必要があり、それを最新の状態にまでもっていくのには、Windows UpdateやMicrosoft Updateを利用するのが手っ取り早いのです。
Windows XPやWindows Server 2003/2003 R2は、サポート終了後も当面の間はWindows Update V6サイトやMicrosoft Update V6サイトを継続して利用できると予想しますが、いつまでも続くと思わない方がよいでしょう。事前のアナウンスもなく、突然サービスを停止することも十分に考えられます。
Windows NT 4.0やWindows 98、Windows Millennium Editionの更新環境が現在どうなっているか、知っておくべきかもしれません(画面4、画面5)。これらのOSは、Windows Updateの以前のバージョンである「Windows Update V4サイト」を使用して、更新プログラムを取得することができました。
現在、これらのOSでWindows Updateを実行すると、IEはWindows Update V4サイトからWindows Update V6サイトへ、Windows Update V6サイトからWindows Update V4サイトへと、アクセス先のリダイレクトがループする状態に陥ってしまいます。実は、Windows Update V4サイトは筆者が知る限り事前/事後のいずれのアナウンスもなく、2011年8月ごろに閉鎖されてしまったのです。
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2014)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手がける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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