MacにおけるSMBへの対応状況の変化は、Mac同士のファイル共有においてはほとんど問題になることはないでしょう。すでに紹介したように、過去にいくつかトラブルはあったようですが、最新のOS X 10.10 Yosemiteでは解消されているはずです。ハードウエアやOSバージョンの制限はあるものの、OS X 10.10 Yosemiteへのアップグレードは無料です。
問題があるとすれば、WindowsやLinux(Network Attached Storageを含む)といった異なるOSとMacとのファイル共有、その他のSMB対応ネットワーク機器との接続でしょう。
そこで、今回は筆者がいろいろと試してみて遭遇したトラブルと、その解決方法を紹介します。どれも深刻なトラブルというわけではありませんが、今後、別の使い方で遭遇するかもしれないトラブルを解決するための、何らかのヒントになるかもしれません。
Windows XPは、SMB 1.0/CIFSでOS X 10.10 Yosemiteの共有フォルダーに接続できます。しかし、ワークグループ環境のWindows XPから接続しようとしても、入力した資格情報が弾かれ、接続できません。Windows Server 2003/2003 R2も同様です(画面8)。
このトラブルの原因は、OS X 10.10 YosemiteのSMBサーバー機能で古いLM(LAN Manager)認証やNTLM認証が既定で無効になっているからです。
回避策の一つは、Windows XP ProfessionalやWindows Server 2003/2003 R2の「ローカルセキュリティポリシー」を開いて、「セキュリティの設定\ローカルポリシー\セキュリティオプション\ネットワークセキュリティ:LAN Manager認証レベル」を既定の「LMとNTLM応答を送信する」から「NTLMv2応答のみを送信する」(これはWindows Vista以降の既定値)に変更して、再起動します。
Windows XP Home Editionはポリシーに対応していないため、この方法は使用できません。レジストリを編集して対応する必要がありますが、もう使っている人はいないと思いたいので説明はしません。
なお、MacとWindowsの両方がActive Directoryドメインに参加しており、ドメインの資格情報でKerberos認証できる場合は、この問題は発生しません。Macの場合は「ディレクトリユーティリティ」(/システム/ライブラリ/CoreServices/Applicationsにある)を使用して、Active Directoryドメインへの参加設定が可能です。Active Directoryドメインに参加後は、Mac側の共有設定でドメインユーザーやドメイングループへのアクセス許可を設定できます。
Ubuntu 14.04 LTS(Long Time Support:長期サポート版)からOS X 10.10 Yosemiteの共有フォルダーに接続してみると、問題なく説明できました。前々回の記事で説明した通り、LinuxのSMBクライアント機能は既定でSMB 1.0/CIFSまでのダイアレクトをネゴシエートします。つまり、OS X 10.10 Yosemiteの共有フォルダーには、SMB 1.0/CIFSを使用して接続します。
前々回はまた、LinuxのSMBクライアント機能をSMB 2.1やSMB 3.0をネゴシエートするようにカスタマイズする方法も説明しました。試しに、SMB 3.0までネゴシエートするように変更してOS X 10.10 Yosemiteの共有フォルダーに接続してみると、エラーが発生して接続は失敗します。SMB 2.0までネゴシエートするようにした場合も失敗します(画面9)。
MacとLinuxのどちらに問題があるのか分かりませんし、Linuxの種類やバージョンでも違ってくるかもしれません。解決策は、既定のままSMB 1.0/CIFSで接続することです。あるいは、「afp://」のアドレスを指定して、AFPで接続する方法もあります。Windowsとのファイル共有の高速化のためにLinux側をカスタマイズしているのだとしたら、後者の方法がよいでしょう。
最後に、Windowsの次期バージョンとMacのファイル共有で発生するかもしれない問題について。
Windowsの次期バージョンのプレビュー版として、2014年10月2日(日本時間)に「Windows 10 Technical Preview」と「Windows Server Technical Preview」がリリースされました。Windows 10 Technical Previewについては、その後、何度かプレビューの更新ビルドが提供されています。Windows Server Technical Previewに関しても、この春に新しいプレビューが公開される予定です。
2014年10月2日に公開されたWindows Server Technical Previewのリリースノートには、Macに関して以下の記述があります。おそらく、Windows 10 Technical Previewにも該当する既知の問題です。
"This release cannot access Apple file servers running SMB 2.0 or later. There is no workaround at this time."
その問題とは、Technical Previewは、SMB 2.0以降を実行するMacのファイルサーバーにアクセスできないというものです。試しに、Technical PreviewからOS X 10.10 Yosemite(10.10.2)の共有フォルダーに接続してみたところ、何の問題もなく接続することができました(画面10)。
OS X 10.10 Yosemiteの提供開始は2014年10月中旬だったので、リリースノートの記述はMac OS X 10.9 Mavericksに限定された問題なのかもしれません。OS X Serverのことかもしれません。どちらも手元に検証環境がないため確認はできていないのですが、Technical Previewはまだまだ完成にはほど遠い段階なので、大きな問題にはならないでしょう。
Windowsのファイル共有プロトコルであるSMBとCIFSの話はひとまずこれで終わりにします。今回の記事が分かりにくいという方は、本連載のバックナンバーの第23回からご覧ください。SMBとCIFSに関する昔の常識にとらわれていると、新しいMacの「smb://」と「cifs://」の使い分けがピンとこないかもしれませんよ。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2015)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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