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最近のWindows Updateって……山市良のうぃんどうず日記(6)

「Windows Update」で毎月配信される更新プログラム。Windows 8.1やWindows Server 2012 R2に配信される量が、以前のOSに比べて半端なく多い気がします。もしかしたら気がするだけかもしれません。そこで、やってみました。

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Patch Tuesdayの悪夢

 筆者は評価・検証用に複数の物理マシンを持ち、うち3台の物理マシンにはかなりの数のHyper-V仮想マシンが存在します。企業のように「Windows Server Update Services」(WSUS)や「System Center」のようなパッチ管理システムを導入しているわけではないので、Windowsの定例アップデートの毎月第2火曜日(Microsoft Patch Tuesday)の翌水曜日は、全ての物理マシンとよく使う仮想マシンを手動で1台ずつ確実に更新して回ります。これが結構大変な作業で、毎月、半日から1日がかりです。

 そんな中、最近感じるのは、最新バージョンのWindows 8.1やWindows Server 2012 R2に対する更新プログラムの数やダウンロードサイズが、他のバージョンのリリースからの同時期より多いような気がすること。

 そこで、Hyper-V仮想マシンを作成し、Windows Server 2012 R2と前バージョンのWindows Server 2012を新規インストールしてWindows Updateを実行し、2014年4月までの全ての重要な更新プログラムを適用して比較してみました。2014年4月までなのは、この検証を2014年4月24日〜25日にかけて実施したからです。

Windows Server 2012の場合

 Windows Server 2012は2012年9月のリリースですから、更新プログラムの数は約2年半ぶんということになります。新規インストール後の初めてのWindows Updateでは、82個、823.3〜823.5MBの重要な更新プログラムが自動選択されました(画面1)。ちなみに、この中から2012年9月から半年後の2013年3月までの重要な更新プログラムだけを選択した場合、14個、285.2MBになります。この数とサイズを覚えておいてください。

画面1
画面1 Windows Server 2012をインストールした直後のWindows Updateでは、82個の重要な更新プログラムが自動選択された

 初回のWindows Updateを実行して、コンピューターを再起動したら、2回目のWindows Updateを実行します。2回目に自動選択された重要な更新プログラムは、17個、562.4MBになりました(画面2)。

画面2
画面2 Windows Server 2012の2回目のWindows Updateでは、17個の重要な更新プログラムをインストール。2014年4月末時点ではこれが最後

 Windows Update後に再起動して3回目のWindows Updateを実行したところ、重要な更新プログラムは検出されませんでした。つまり、Windows Server 2012のリリースから2014年4月までに提供された重要な更新プログラムの数は合計99個、サイズは約1.35GBという結果になりました。

 実は、2回目のWindows Updateはすんなりとはいきませんでした。以下の更新プログラムの既知の問題に引っ掛かり、その問題の回避にかなりの時間をとられました。この問題については、後で説明します。

Windows Server 2012 R2の場合

 続いて、Windows Server 2012 R2でも同じようにやってみました。Windows Server 2012 R2は2014年10月リリースですから、約半年ぶんの更新プログラムになります。

 新規インストール直後のWindows Updateでは、38個、823.6MB〜823.7MBの重要な更新プログラムが自動選択されました(画面3)。更新プログラム数は38個ですが、そのサイズは既にWindows Server 2012の初回実行時と大差ありません。しかも、Windows Server 2012のリリースから半年までの数14個、サイズ285.2MBと比べると、2.8倍くらいになります。

画面3
画面3 Windows Server 2012 R2をインストールした直後のWindows Updateでは、38個の重要な更新プログラムが自動選択された。そのサイズは、Windows Server 2012の初回実行時と同等

 2回目のWindows Updateでは2個、805.1MBの重要な更新プログラムが自動選択されました(画面4)。その1つは、2014年4月にリリースされた、さまざまな仕様変更を含む大規模な更新「Windows Server 2012 R2 Update(KB2919355)」です。Windows 8.1向けにも提供された「Spring Update」や「Update 1」と呼ばれているものです。

画面4
画面4 Windows Server 2012 R2の2回目のWindows Updateで、Windows Server 2012 R2 Updateがインストール対象に

 Windows Server 2012 R2の場合、3回目のWindows Updateでさらに1個、2MBの重要な更新プログラムが自動選択されました。これで、Windows Server 2012 R2のリリースから2014年4月までの半年間に提供された重要な更新プログラムの数は合計48個、サイズは約1.88GBという結果になりました。数でこそWindows Server 2012の半分以下ですが、サイズは既にWindows Server 2012を追い抜いています。

Windows Server 2012 R2 Update適用済みの場合

 ボリュームライセンスやMSDN(Microsoft Developer Network)サブスクリプションでは、Windows Server 2012 R2 UpdateやWindows 8.1 Updateが適用済みのインストールメディアを入手できます。参考までに、この最新のインストールメディアを使用した場合でも試してみました。

 インストール直後のWindows Updateの初回実行時に、8個、198.5MBの重要な更新プログラムが自動選択されました(画面5)。その中には、適用済みであるはずのKB2919355(ただし小さいサイズ)も含まれます。実は、Windows Server 2012 R2 Updateの最初のリリース(4月9日配信)はWSUS環境で問題が発生したため、WSUSへの配信が一時停止されたという経緯があります。検出された小さなサイズのKB291935は、その問題の修正を行うもののようです。同様に、4月16日(米国時間)より前にKB291935をインストールしたWindows Server 2012 R2やWindows 8.1には、少なくとも2回はKB291935が配信されています。

画面5
画面5 Windows Server 2012 R2 Update適用済みインストールメディアでインストールした場合のWindows Updateの初回実行。既に8個、198.5MBの重要な更新プログラムが検出されている

“ラピッドリリース”ってこういうことなの?

 想像通り、Windows Server 2012 R2(およびWindows 8.1)に対する更新プログラムの状況は、その数もダウンロードサイズも急増中です。

 マイクロソフトはWindows Server 2012 R2およびWindows 8.1から「ラピッドリリース」(Rapid Release)という開発スケジュールを採用し、ユーザーからの要望に迅速に対応して、短いサイクルで機能強化や改善を行っていくとしています。

 Windows Server 2012 R2 UpdateやWindows 8.1 Updateは、ラピッドリリースで提供された初めての大規模更新でした。しかし、この大規模更新を別に考えたとしても、重要な更新プログラムの数とサイズは尋常ではありません。

 Windows Server 2012 R2 UpdateやWindows 8.1 Updateのドタバタ劇も気になります。当初はこの大規模更新が5月からの重要な更新プログラムの前提となるはずでしたが、WSUS関連の不具合やインストールが失敗して間に合わないユーザーがいることを受け、企業ユーザー(WSUSやWindows Intuneを利用している場合)には8月12日まで、それ以外の一般ユーザーは6月10日まで(いずれも米国時間)、猶予されることに変更されました。

 このような状況を見ると、ラピッドリリースになって“品質よりもスケジュールを優先してとりあえず市場に出してしまえ、問題があれば修正すればいいし”みたいな考えでマイクロソフトが動いているようにどうしても見えてしまいます。製品や更新プログラムの品質に関わるテストの一部分を、エンドユーザーがさせられているような感じも受けます。この先、こういうドタバタが繰り返されないことを願うばかりです。

5月の定例更新でもやってくれました

 ここまでは2014年4月までの更新の話です。5月のPatch Tuesdayについても振り返ってみましょう。

 Windows XPに関しては、予告通りに新しい更新プログラムは提供されませんでした。とは言っても、Windows XP環境にインストールされているサポートライフサイクルが切れていないマイクロソフト製品や、定義ファイルの更新が続いている「Microsoft Security Essentials」(および企業向けマルウェア対策製品)については引き続き更新プログラムが配信されています。「悪意のあるソフトウェアの削除ツール」も配信されました(画面6)。

画面6
画面6 Windows XPにもサポート切れではないマイクロソフト製品の更新は来る

 先ほど、Windows Server 2012の更新プログラムのインストール失敗について触れましたが、5月の重要な更新プログラムの中にも同じ既知の問題がある以下の更新プログラムがWindows 8、Windows 8.1、Windows Server 2012、Windows Server 2012 R2に対して配信されました。

 上記のアドバイザリの既知の問題では、「このセキュリティ更新プログラムをインストールしようとすると0x800f0922エラーが表示されます」となっていますが、筆者の環境ではWindows Update後の再起動時に「Windows更新プログラムを構成できませんでした/変更を元に戻しています/コンピューターの電源を切らないでください」と表示されました(画面7)。この状態になってしまうと、変更を元に戻す処理が完了して復帰するまで、かなりの時間がかかります。筆者は待ちきれずに途中で電源を切ってしまいましたが、幸い、復帰することはできました。

画面7
画面7 5月の定例更新による既知の問題に引っ掛かってしまった第2世代仮想マシン

 インストールの失敗は、セキュアブートが有効なUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)システムで、かつ「BitLockerドライブ暗号化」の機能がインストールされていない場合に発生します。Windows Server 2012やWindows Server 2012 R2には、BitLockerの機能が標準では入っていないので影響を受ける場合があります。Windows 8やWindows 8.1にはBitLockerの機能は標準で入っているはずなので影響しないと思います。筆者はUEFIベースでセキュアブートが有効なHyper-Vの第2世代仮想マシンでWindows Server 2012やWindows Server 2012 R2を実行していたため、既知の問題に引っ掛かってしまったというわけです。“既知の問題なら自動選択してくれるなよ”です。

 MSI版のOffice 2013を利用している人は、5月の更新で腰を抜かしたことでしょう。筆者の場合は、Windows 8.1と合わせて1GBに迫るサイズの重要な更新プログラムが自動選択されました(画面8)。このうち、約850MBがOffice 2013を対象としたものです。ついこの前、Office 2013 Service Pack(SP)1が出たばかりですが、MSI版向けのOffice 2013 SP1のサイズは657.4MBでした。私のPCのOffice 2013は、見た目は変わりませんが、最初のころとはすっかり別物に入れ替わってしまった感じがします。

画面8
画面8 MSI版Office 2013がインストールされている場合、5月の更新はすごかった

 なお、プレインストール、パッケージ製品、Office 365のOffice 2013を利用している場合は、クイック実行版なので、Office 2013の更新プログラムがWindows Updateで配信されることはありません。詳しくは、「本連載第2回 “新しいOffice”はいろいろと新しい」を見てください。

 ラピッドリリースはクイック実行版Office 2013のように、クラウドから提供するサービスには都合が良さそうですね。大量の更新プログラムでユーザーを驚かせることもないし、問題をこっそり修正できるでしょうし……。

 ところで、Windows 8.1の一般ユーザーの方は、Windows 8.1 Updateをインストールしておかないと、6月以降の重要な更新プログラムを受け取れなくなる予定です。PCに詳しければ何とかすると思いますが、そうでない人はそもそもそのようなことは知らないでしょうし、失敗したまま放置する人が大部分なんじゃないでしょうか。

 Windows Updateサポートチームが次のような投稿をしていますが、この情報にたどり着ける人は少ないでしょうし、たどり着けたとしても難しすぎます。例えば、最初の手順「キーボードの[Windows]キーと[X]キーを同時に押します」でつまずく人が多そうです。

 さて、6月からの定例更新、どうなることやら。

 Windows 8からWindows 8.1へのアップグレードに失敗したけど、Windows 8の製品サポートが2023年1月まであるからとりあえず安心と考えている方へ。まったく安心していられませんよ。製品サポート上、Windows 8.1は「Windows 8のサービスパック」という扱いだそうです。2023年1月までの製品サポートを受けるには、Windows 8のサービスパックサポート終了日の2016年1月までにWindows 8.1 Updateへの更新を完了しないといけないんです。こちらの方も、どうなることやら。一ユーザーとしては更新プログラムに対するマイクロソフトの今後のスタンスが気になります。

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筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2014)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手がける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。


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