「グループポリシーの基本設定」でIE 10およびIE 11のプロキシ設定ができるということは、前出の画面6が示す通りです。しかし、過去に試してみたけど思うようにできなかったという経験があるかもしれません。
実は、以下のサポート技術情報で説明されている不具合が修正される2014年4月まで、Windows 8、Windows 8.1、Windows Server 2012、およびWindows Server 2012 R2の基本設定によるプロキシ設定には不具合がありました。
Windows 8.1およびWindows Server 2012 R2は、「Windows 8.1 Update」として知られる2014年4月の大型更新「KB2919355」でこの不具合が修正されました。Windows 8およびWindows Server 2012の場合は不具合を修正するために、上記のサポート技術情報からリクエストできる修正プログラム(Hotfix)が必要です。
この不具合とは関係なく、「グループポリシーの基本設定」の操作方法が適切でないことが原因で、思うように設定を配布できないということもあります。「グループポリシーの基本設定」は、操作方法が通常のポリシー設定とは全く違っていて、適切に設定するには慣れが必要です。
基本設定の設定画面で、緑色の下線(実線)や緑色の丸の付いた設定が配布対象であり、赤色の下線(破線)や赤色の丸の付いた設定は無視されます。この緑色と赤色の状態は、[F5]キー(表示中のタブの全ての設定を緑色に)、[F6]キー(選択中の設定を緑色に)、[F7]キー(選択中の設定を赤色に)、[F8]キー(表示中のタブの全ての設定を赤色に)のファンクションキーで切り替えることができます。
例えば、「詳細設定」タブの一部の項目だけを配布する場合は、「詳細設定」タブを開いたら[F8]キーを押して全ての項目を赤色に切り替えてから、配布したい項目を選択して[F6]キーを押して緑色に切り替え、チェックボックスを設定します(画面7)。
基本設定の設定画面で不用意にタブを切り替えてしまうと、意図しない設定が配布されてしまうので注意が必要です。例えば、IEの基本設定で「詳細設定」タブの設定を配布するつもりがないのに、「詳細設定」タブに切り替えてしまうと、既定で有効になる緑色の項目の全てが配布対象になってしまいます。
「Internet Explorerのメンテナンス」や「グループポリシーの基本設定」にはあるIEのプロキシ設定が、なぜIEの管理用テンプレートにないのか疑問に思わないでしょうか。プロキシ設定用のポリシーを一つ追加することくらい難しくなさそうに思えます。その理由を筆者なりに探ってみました。
筆者の結論は、IEやWindows(プロキシ設定はIE以外からも参照されます)が、管理用テンプレートが扱うポリシーの場所を参照するように作られていないということです。筆者の結論が正しければ、管理用テンプレートを改造してプロキシ設定のポリシーを加えたとしても、IEやWindowsはそのポリシー設定を無視するはずです。
グループポリシーの仕組みに詳しい人なら、Windowsコンポーネントに関するポリシー設定はレジストリの「HKEY_LOCAL_MACHINE¥Software¥Policies¥Microsoft」(コンピューターの構成の場合)または「HKEY_CURRENT_USER¥Software¥Polices¥Microsoft」(ユーザーの構成の場合)に書き込まれることをご存じでしょう。
一方、もともとのローカル設定は「HKEY_LOCAL_MACHINE¥Software¥Microsoft」や「HKEY_CURRENT_USER¥Software¥Microsoft」に保存されています。グループポリシーはこのような仕組みで、ローカル設定を上書きすることなくポリシーを適用し、ポリシーの対象外になれば元の設定に戻すことができるようになっています。
IEを開始した際のレジストリに対する操作を、Windows Sysinternalsの「Process Monitor」(Procmon.exe)で監視してみました。
すると、ホームページ設定についてはレジストリのローカル設定の場所である「HKEY_CURRENT_USER¥Software¥Microsoft¥Internet Explorer¥Main¥Start Page」を参照した後に、ポリシーの場所である「HKEY_CURRENT_USER¥Software¥Policies¥Microsoft¥Internet Explorer¥Main¥Start Page」を参照していることが分かりました。この動作により、ローカル設定よりもポリシー設定が優先され、最終的なユーザーのホームページ設定が構成されます。
一方、プロキシ設定についてはローカル設定の場所である「HKEY_CURRENT_USER¥Software¥Microsoft¥Windows¥CurrentVersion¥Internet Settings¥ProxyServer」しか参照していません(画面8)。従って、ポリシーの場所にプロキシ設定があったとしても、それがIEに反映されることはないのです。
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2014)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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