99年間のバックアップに対応、何を保存しましょうか?――Azure Backup最新情報フォローアップの巻:山市良のうぃんどうず日記(30)
Microsoft Azureが提供中のクラウドベースのバックアップサービス「Azure Backup」が、新しい料金体系に変わりました。変わるのは料金だけではありません。登場時にはなかった、いろいろな機能が追加されています。
Azure Backupの4月1日からの新料金にご注意を!
多くの企業では4月1日から新年度が始まったことでしょう。ニュースでは4月1日からの製品・サービス、税金などの値上げラッシュが報じられましたが、今回は「Microsoft Azure Backup」(以下、Azure Backup)の新料金の話から始めましょう。Azure Backupの料金は、4月1日からガラリと変わりました。
Azure Backupについては「Microsoft Azure Site Recovery」について取り上げた以下の記事で、Microsoft Azureの復旧サービスの一つとしてちょっとだけ触れたことがあります。今回の内容は、以下の記事のフォローアップになります。
Azure Backupは、Windows Serverのファイルとフォルダーをクラウド(Microsoft Azure)のバックアップ領域にスケジュールバックアップする機能や、System Center Data Protection Managerと連携してD2D2C(Disk to Disk to Cloud)のデータ保護を提供するサービスです。
2015年3月31日までは、1カ月当たりに保存されたバックアップデータ(圧縮された状態)に基づいて、最初の5GBまでは無料、5GBを超える分については1GB当たり20.40円/月の料金が掛かりました。
2015年4月1日から(すでに従量課金で利用中の場合は3月26日から)は、保護対象のインスタンスごとに510円/月(最大50GBまでのデータを持つインスタンス)または1020円/月(50〜500GBまでのデータを持つインスタンス)の月額定額料金の他、バックアップデータの保存に使用されたAzureストレージの使用料金2.45円〜/GBが加算された料金に変更になります(画面1)。また、データサイズが500GBを超えるインスタンスについては、500GBごとに1024円/月が加算されます。
例えば、50GBまでのデータを持つインスタンス10台で、合計500GBのバックアップデータが保存される場合、単純計算では以下の表1のような料金になります。
2015年3月31日まで | (500GB 〜 5GB)× 20.40円 = 1万98円 |
---|---|
2015年4月1日から | (510円 × 10台)+ 500GB × 約4.9円 = 7550円 |
表1 Azure Backupの新旧料金比較 |
- Azure Backupの料金(Microsoft Azure)
大きく値下げになりましたが、条件が変わると値上げになる場合があるかもしれませんのでご注意ください。なお、新料金になったAzure Backup用のAzureストレージでは、「ローカル冗長」と「ジオ冗長(標準)」を選択できるようになりました。ローカル冗長を使用すれば、Azureストレージのコストを半減できます(単価約4.90円/GB→約2.45円/GB)。
2014年12月からはWindows 7 SP1以降のクライアントOSをサポート
Azure Backupの変更は、新料金だけではありません。2014年12月以降にAzure Backupで利用可能になった新機能をざっと紹介しましょう。
Azure Backupは、Windows Server 2008 x64 Service Pack(SP)2以降のWindows Server、およびSystem Center 2012 SP1/2012 R2のData Protection Managerに対して、クラウドベースのバックアップと復元機能を提供しますが、2014年12月に更新されたエージェント(2.0.8694以降)は、新たに64ビット版のWindows 7 SP1、Windows 8、Windows 8.1のファイルとフォルダーの保護にも対応しました(画面2)。
2015年2月からはバックアップの「99年」超長期保管に対応?
2015年2月のエージェントおよびサービスの更新では、いくつか大きな変更が行われました。一つは、Azure Backupの初期バックアップをネットワーク経由で行うのではなく、オフラインでバックアップしたものを「Azureインポートサービス」を通じて転送する方法がサポートされました(画面3)。
バックアップのスケジュールや保持ポリシーをより詳細に設定できるようになったことも、2月の大きな変更です。バックアップの保持数は以前の120個から366個に拡張され、さらに保存期間は以前の最長9年から、なんと最長99年まで延長されました(画面4)。
「九は久に通じる」などと言いますが、特にコンピューターの世界での「99年」はいまだ経験したことのない、とてつもなく長い時間です。Windows 1.0が登場してから30年、現代式の最初のコンピューターとも呼ばれる「ENIAC」が登場してからまだ69年です。99年後、22世紀のコンピューターの世界がどうなっているのかなんて想像できません。
1GBを99年保管するのにいくら掛かるのだろうか(料金は今後も変わるはずなので計算しても意味ありませんが)、99年後にそのデータを取り出すのは誰だろうか、そのときデータを読み出す方法が残っているのだろうか、そもそもこのサービスは99年維持されるのだろうか、マイクロソフトという会社が99年後に存在するのだろうか、西暦(AD)が終わって宇宙世紀(UC)……なんていろいろ考えてしまいます。
この他、2月の更新ではAzure BackupをData Protection Managerのオンライン保護で使用する場合、これまでは“Data Protection Managerで保護された”Windows Serverのファイルとフォルダー、Hyper-V仮想マシン、およびSQL Serverデータベースのオンライン保護に対応していました。2月の更新以降は、Data Protection Managerで保護されたSharePoint、ExchangeおよびWindowsクライアントの保護にも対応しました。
- Azure Backup supports offline disk shipment and increases the number of backup copies and retention policies in Windows[英語](Microsoft Support)
- Azure Backup increases features and supports additional DPM workloads[英語](Microsoft Azure)
Azure仮想マシンのバックアップと復元機能のプレビュー
Azure Backupは、オンプレミスのデータやHyper-V仮想マシンをクラウド(Microsoft Azure)にバックアップするサービスでした。2015年3月末の更新では、新たにMicrosoft AzureのIaaS(Infrastructure as a Services)環境で稼働する、WindowsおよびLinux仮想マシンのオンラインバックアップおよびAzure仮想マシンとしての復元機能がパブリックプレビュー(まだ正式なサービスではない)として追加されました(画面5)。
Azure仮想マシンを利用しているユーザーは、バックアップをどうするかが課題だったと思います。これまでは「キャプチャ(取り込み)」機能やAzure PowerShellを利用して、稼働中のAzure仮想マシンのイメージのスナップショットを保存するという方法がありました。今後はAzure Backupの標準機能で、1台以上のAzure仮想マシンのバックアップをスケジューリングして、オンラインバックアップを自動で取得できるようになります(画面6)。Azure Backupは、Windows仮想マシンとLinux仮想マシンの両方のオンラインバックアップに対応しています。また、バックアップから復旧ポイントを選択して、Azure仮想マシンとして復元することが簡単にできるようになります(画面7)。
- General Availability:Azure Backup(Thursday March 26 2015)[英語](Microsoft Azure)
以上、今回はAzure Backupサービスに関する最新情報のフォローアップでした。Microsoft Azureに限らず、クラウドサービスは拡張や変更が頻繁に行われるので、キャッチアップしていくのが大変ですね。筆者が注目しているサービスについては今回のようにできるだけ紹介したいと思いますが、他のサービスもどんどん新しくなっているはずです。
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筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2015)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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- Azure Site Recoveryは災害対策の“切り札”となるか?
マイクロソフトが「Microsoft Azure Site Recovery」のプレビュー提供を開始した。このサービスは、オンプレミスの仮想マシンのレプリカをMicrosoft Azure上に作成してバックアップする災害対策ソリューションになる。 - セカンダリサーバー不要でBCP/DR対策を実現する「Azure Site Recovery」の提供を開始
日本マイクロソフトは2014年10月9日、「Microsoft Azure Site Recovery」の正式提供を10月3日から開始したことを発表した。また、導入支援パートナー16社がソリューションを提供することや、Windows Storage Server 2012 R2を搭載したNAS製品を提供する3社がバックアップソリューションを提供することも発表した。 - クラウドでDR対策の常識が変わる! Microsoft Azure復旧サービスの全機能が正式公開
2014年10月3日、マイクロソフトは「Microsoft Azure Site Recovery」でプレビュー提供していた一部の機能の正式提供を開始しました。正式提供された機能は、オンプレミスのシステムを直接クラウドへレプリケーション/フェイルオーバーする機能になります。 - Hyper-VからAzureへ、仮想マシンの直接レプリケーションが可能に――Azure Site Recoveryアップデート
Hyper-V仮想マシンのレプリケーション保護サービス「Azure Site Recovery」に、新しい展開オプションが追加されました。スタンドアロンのHyper-Vサーバー上にあるHyper-V仮想マシンを、直接Microsoft Azureにレプリケーションできるようになりました。これまで必須だったVirtual Machine Managerの管理環境を用意しなくてもできるのです。 - これからのBCP/DR対策は“クラウド”がスタンダードに
これまでの事業継続計画/災害復旧(BCP/DR)対策は、予備の物理サーバーや別拠点のデータセンターにデータを複製、フェイルオーバーする方式が一般的だった。その発展形としてマイクロソフトが提供を開始したのが、予備サーバーとしてMicrosoft Azureを活用する「Azure Site Recovery」(ASR)だ。ASRなら別途サーバーハードウエアを用意したり、別拠点にデータセンターを設置したりする必要はなく、BCP/DR対策を容易かつ低コストで実現できる。