Windows 7 EnterpriseおよびUltimateの限定機能である「エンタープライズ検索範囲」(Enterprise Search Scopes)は、知名度が低いかもしれません。この機能は、「グループポリシー」を使用して、クライアントPCのWindows標準の検索インターフェースに、カスタム検索範囲を追加して拡張する機能になります。
検索範囲は以下のグループポリシーを使用して、OpenSearch形式のURL(http://www.bing.com/search?q=keywordやhttp://www.google.co.jp/#q=keyword)を最大五つまで、Windowsのライブラリ(拡張子.Library-ms)または検索コネクター(拡張子.SearchConnector-ms)を最大五つまで登録することができます(画面4)。
ユーザーの構成\ポリシー\管理用テンプレート\Windowsコンポーネント\エクスプローラー\インターネット検索サイトを[再検索]リンクと[スタート]メニューに表示する
ユーザーの構成\ポリシー\管理用テンプレート\Windowsコンポーネント\エクスプローラー\ライブラリまたは検索コネクターを[再検索]リンクと[スタート]メニューに表示する
「Windows 8.1エディション別機能比較」ではエンタープライズ検索範囲について言及されていませんが、結論から言うと、エディション限定機能に変更はありません。Windows 8/8.1でも、この機能はEnterpriseに限定された状態で残っていました。
しかし、Windows 8から採用されたモダンUIの検索機能には、この機能は統合されていません。グループポリシーで配布された検索範囲は、エクスプローラーでローカルPCを検索したときに出てくる「検索ツール」の[再検索]に出てきます。筆者が見つけられていないだけかもしれませんが、その他の場所には出てきませんでした。機能的に削除されてはいませんが、非常に使いづらくなっています(画面5)。
「BranchCache」は、WAN(Wide Area Network)を介したWebコンテンツやファイルのダウンロードエクスペリエンスを改善するキャッシュテクノロジです。以前にダウンロードしたものを別のPCやサーバーにキャッシュしておき、次のダウンロード時に再利用することで、ネットワーク帯域幅の節約やダウンロード時間の短縮に寄与します。
「Windows 8.1エディション別機能比較」にある通り、BranchCacheは引き続きEnterpriseエディション限定の機能になります。しかし、実際にはWindows 8 ProおよびWindows 8.1 Proは、BranchCacheのクライアントとして構成することができます。
Windows 8/8.1 EnterpriseのBranchCacheテクノロジは、「BranchCacheプラットフォームAPI」「バックグラウンドインテリジェント転送サービス(BITS)統合」「HTTPとサーバーメッセージブロック(SMB)の統合」で構成されます。
実は、Windows 8 ProおよびWindows 8.1 Proには「BranchCacheプラットフォームAPI」と「BITS統合」の二つが搭載されています(画面6)。つまり、BITSを利用するダウンロード(Windows Server Update Servicesからのダウンロードなど)については、BranchCacheの恩恵を受けられるということになります。
Windows 8からのEnterpriseエディション限定機能「LOBのサイドローディング」は、Windows 8からの新しい「モダンアプリ」(ストアアプリ、メトロアプリ(旧称))をWindowsストアを経由せずに、クライアントPCに展開する機能です(画面7)。
Active Directoryドメインに参加するWindows 8 EnterpriseおよびWindows 8.1 EnterpriseのクライアントPCは、追加コストなしでアプリのサイドローディングが可能です。Windows 8/8.1(無印)を除く、それ以外のPCについては、別売りのサイドローディングキーを購入することで対応できます。
実は、これは過去の話。2014年4月にリリースされたWindows 8.1 Update(KB2919355)に更新すると、ドメインに参加するWindows 8.1 Proは“サイドローディングキーなし”でサイドローディングが可能になりました。また、2014年5月からは主なボリュームライセンス契約において、サイドローディングキー無償で提供されるようになりました。
これらは結構大きな変更だと思うのですが、Windows 8.1 Updateの変更点としてはあまり話題にならなかったようです。
「スタート画面の制御」(Start Screen Control)は、Windows 8.1 Enterpriseの新機能です。Windows 8.1のスタート画面をカスタマイズして、XMLファイルにエクスポートし、それをグループポリシーで配布することで、ユーザーのスタート画面をIT管理者が制御できるというものです(画面8)。
正式なアナウンスはありませんが、2014年4月にリリースされたWindows 8.1 Update(KB2919355)では、このスタート画面の制御についてもEnterpriseエディション限定が解除され、Windows 8.1 Proでも利用可能になっています。詳しくは、以下の記事で説明しました。
Windows 8.1 Update(KB2919355)のスタート画面の制御への影響については、以下のサポート技術情報で確認してください。これはWindows 8.1 Update(KB2919355)の不具合であり、2014年11月の更新ロールアップ(KB3000850)によって修正され、Windows 8.1 Proでは再び利用できなくなりました。
Windows 8の新機能「Windows To Go」は、Windows 8 EnterpriseまたはWindows 8.1 EnterpriseのインストールイメージをUSBデバイスに格納し、別のPCや第三者のPCを起動できるという機能です。
Windows 8 EnterpriseやWindows 8.1 Enterpriseに含まれるのは、「Windows To Goワークスペースの作成」ツールであり、Windows To Goの使用権はSAやWindows VDAに含まれます。
非常に面白い機能なのですが、完全に「業務利用限定の企業向け機能」です。使用権の詳細については、最新のマイクロソフト製品使用権説明書(PUR)で確認してください。
Windows To Goは物理PCのローカルディスクを全く使用せず起動でき、ローカルディスクをマウントしないため、VHDブートと同様に評価やテスト環境に便利です。
現在、マイクロソフトはWindowsの次期バージョンである「Windows 10 Technical Preview」を公開していますが、企業向けのWindows 10 Technical Preview for EnterpriseならWindows To Goデバイスを作成して評価することが可能です(画面9)。
Windows To Goは「USBメモリから起動できるWindows」と思っている人も多いかもしれませんが、量販店で売っているようなUSBメモリ(Windowsで「リムーバブル記憶域」として認識されるデバイス)では作成できません。
USBメモリの“形”をしたデバイスとしては、「Windows To Go認定のデバイス」でなければ難しいでしょう。USB外付けハードディスク(USB 3.0以降を推奨)であれば、認定されていないデバイスであってもWindows To Goの起動デバイスとして利用できると思います。
Windows 10 Technical Preview for EnterpriseのWindows To Goメディアについて、一つ大きな注意点があります。
Windows 10 Technical Previewには新しいプレビュービルドに簡単に更新できる機能があるのですが、Windows To Goにすると更新することができません。なぜなら、Windows To Goの環境は、アップグレードインストールに対応していないからです。アップグレードバージョンのWindows To Go 環境を手に入れるには、Windows To Go メディアを作り直すしかありませんのでご注意を。
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2014)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手がける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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