Windowsの“Enterpriseエディション限定機能”の最新情報まとめその知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(18)(2/2 ページ)

» 2014年11月10日 18時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
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エンタープライズ検索範囲はいずこへ?

 Windows 7 EnterpriseおよびUltimateの限定機能である「エンタープライズ検索範囲」(Enterprise Search Scopes)は、知名度が低いかもしれません。この機能は、「グループポリシー」を使用して、クライアントPCのWindows標準の検索インターフェースに、カスタム検索範囲を追加して拡張する機能になります。

 検索範囲は以下のグループポリシーを使用して、OpenSearch形式のURL(http://www.bing.com/search?q=keywordやhttp://www.google.co.jp/#q=keyword)を最大五つまで、Windowsのライブラリ(拡張子.Library-ms)または検索コネクター(拡張子.SearchConnector-ms)を最大五つまで登録することができます(画面4)。

ユーザーの構成\ポリシー\管理用テンプレート\Windowsコンポーネント\エクスプローラー\インターネット検索サイトを[再検索]リンクと[スタート]メニューに表示する


ユーザーの構成\ポリシー\管理用テンプレート\Windowsコンポーネント\エクスプローラー\ライブラリまたは検索コネクターを[再検索]リンクと[スタート]メニューに表示する


画面4 画面4 エンタープライズ検索範囲により拡張されたWindows 7の検索インターフェース(検索結果の続きを表示の下の三つ)

 「Windows 8.1エディション別機能比較」ではエンタープライズ検索範囲について言及されていませんが、結論から言うと、エディション限定機能に変更はありません。Windows 8/8.1でも、この機能はEnterpriseに限定された状態で残っていました。

 しかし、Windows 8から採用されたモダンUIの検索機能には、この機能は統合されていません。グループポリシーで配布された検索範囲は、エクスプローラーでローカルPCを検索したときに出てくる「検索ツール」の[再検索]に出てきます。筆者が見つけられていないだけかもしれませんが、その他の場所には出てきませんでした。機能的に削除されてはいませんが、非常に使いづらくなっています(画面5)。

画面5 画面5 Windows 8.1のエクスプローラーに統合されたエンタープライズ検索範囲。分かりにくいし、使いにくい

BranchCacheの一部はWindows 8 Proにも

 「BranchCache」は、WAN(Wide Area Network)を介したWebコンテンツやファイルのダウンロードエクスペリエンスを改善するキャッシュテクノロジです。以前にダウンロードしたものを別のPCやサーバーにキャッシュしておき、次のダウンロード時に再利用することで、ネットワーク帯域幅の節約やダウンロード時間の短縮に寄与します。

 「Windows 8.1エディション別機能比較」にある通り、BranchCacheは引き続きEnterpriseエディション限定の機能になります。しかし、実際にはWindows 8 ProおよびWindows 8.1 Proは、BranchCacheのクライアントとして構成することができます。

 Windows 8/8.1 EnterpriseのBranchCacheテクノロジは、「BranchCacheプラットフォームAPI」「バックグラウンドインテリジェント転送サービス(BITS)統合」「HTTPとサーバーメッセージブロック(SMB)の統合」で構成されます。

 実は、Windows 8 ProおよびWindows 8.1 Proには「BranchCacheプラットフォームAPI」と「BITS統合」の二つが搭載されています(画面6)。つまり、BITSを利用するダウンロード(Windows Server Update Servicesからのダウンロードなど)については、BranchCacheの恩恵を受けられるということになります。

画面6 画面6 Windows 8 ProやWindows 8.1 ProもBranchCacheクライアントとして構成できる。ただし、キャッシュ機能はBITSにだけ対応しており、HTTPやSMBには対応していない

サイドローディングはWindows 8.1 Updateで限定解除

 Windows 8からのEnterpriseエディション限定機能「LOBのサイドローディング」は、Windows 8からの新しい「モダンアプリ」(ストアアプリ、メトロアプリ(旧称))をWindowsストアを経由せずに、クライアントPCに展開する機能です(画面7)。

画面7 画面7 サイドローディング展開の例。System Center Configuration ManagerやWindows Intuneが提供する会社のポータルからアプリを展開したり、Windows PowerShellで展開したりできる

 Active Directoryドメインに参加するWindows 8 EnterpriseおよびWindows 8.1 EnterpriseのクライアントPCは、追加コストなしでアプリのサイドローディングが可能です。Windows 8/8.1(無印)を除く、それ以外のPCについては、別売りのサイドローディングキーを購入することで対応できます。

 実は、これは過去の話。2014年4月にリリースされたWindows 8.1 Update(KB2919355)に更新すると、ドメインに参加するWindows 8.1 Proは“サイドローディングキーなし”でサイドローディングが可能になりました。また、2014年5月からは主なボリュームライセンス契約において、サイドローディングキー無償で提供されるようになりました。

 これらは結構大きな変更だと思うのですが、Windows 8.1 Updateの変更点としてはあまり話題にならなかったようです。

スタート画面の制御もWindows 8.1 Updateで限定解除?

 「スタート画面の制御」(Start Screen Control)は、Windows 8.1 Enterpriseの新機能です。Windows 8.1のスタート画面をカスタマイズして、XMLファイルにエクスポートし、それをグループポリシーで配布することで、ユーザーのスタート画面をIT管理者が制御できるというものです(画面8)。

画面8 画面8 「スタート画面の制御」を使用して、グループポリシーで構成されたユーザーのスタート画面

 正式なアナウンスはありませんが、2014年4月にリリースされたWindows 8.1 Update(KB2919355)では、このスタート画面の制御についてもEnterpriseエディション限定が解除され、Windows 8.1 Proでも利用可能になっています。詳しくは、以下の記事で説明しました。

2015年4月13日追記

 Windows 8.1 Update(KB2919355)のスタート画面の制御への影響については、以下のサポート技術情報で確認してください。これはWindows 8.1 Update(KB2919355)の不具合であり、2014年11月の更新ロールアップ(KB3000850)によって修正され、Windows 8.1 Proでは再び利用できなくなりました。


Windows To Goの作成機能と起動の権利

 Windows 8の新機能「Windows To Go」は、Windows 8 EnterpriseまたはWindows 8.1 EnterpriseのインストールイメージをUSBデバイスに格納し、別のPCや第三者のPCを起動できるという機能です。

 Windows 8 EnterpriseやWindows 8.1 Enterpriseに含まれるのは、「Windows To Goワークスペースの作成」ツールであり、Windows To Goの使用権はSAやWindows VDAに含まれます。

 非常に面白い機能なのですが、完全に「業務利用限定の企業向け機能」です。使用権の詳細については、最新のマイクロソフト製品使用権説明書(PUR)で確認してください。

 Windows To Goは物理PCのローカルディスクを全く使用せず起動でき、ローカルディスクをマウントしないため、VHDブートと同様に評価やテスト環境に便利です。

 現在、マイクロソフトはWindowsの次期バージョンである「Windows 10 Technical Preview」を公開していますが、企業向けのWindows 10 Technical Preview for EnterpriseならWindows To Goデバイスを作成して評価することが可能です(画面9)。

画面9 画面9 Windows 10 Technical Preview for EnterpriseをWindows To Goで起動したところ。ローカルディスクがマウントされないので安心して評価できる。キーボード配列がおかしい場合は、画面のように変更してみよう

 Windows To Goは「USBメモリから起動できるWindows」と思っている人も多いかもしれませんが、量販店で売っているようなUSBメモリ(Windowsで「リムーバブル記憶域」として認識されるデバイス)では作成できません。

 USBメモリの“形”をしたデバイスとしては、「Windows To Go認定のデバイス」でなければ難しいでしょう。USB外付けハードディスク(USB 3.0以降を推奨)であれば、認定されていないデバイスであってもWindows To Goの起動デバイスとして利用できると思います。

 Windows 10 Technical Preview for EnterpriseのWindows To Goメディアについて、一つ大きな注意点があります。

 Windows 10 Technical Previewには新しいプレビュービルドに簡単に更新できる機能があるのですが、Windows To Goにすると更新することができません。なぜなら、Windows To Goの環境は、アップグレードインストールに対応していないからです。アップグレードバージョンのWindows To Go 環境を手に入れるには、Windows To Go メディアを作り直すしかありませんのでご注意を。

「その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説」バックナンバー

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2014)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手がける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。


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