自分のPCには「Windows 10を入手する」アプリが表示されない、とお悩みの方がいるかもしれません。無料アップグレード対象であっても、「Windows 10を入手する」アプリのアイコンが表示されない場合もあります。「Windows 10を入手する」アプリが表示されない原因としては、以下のようなことが考えられます。
・Windows 7 Professional、Windows 7 Ultimate、Windows 8.1、Windows 8.1 Proではない、無料アップグレード対象外のWindowsを実行している
Enterpriseエディションは無料アップグレードの対象外です。また、Windows 10バージョンのWindows RTは提供されないため、Windows RTおよびWindows RT 8.1も対象外です。
・Windowsが最新状態に更新されていない
Windows 7は少なくともWindows 7 Service Pack(SP)1、Windows 8.1は少なくともWindows 8.1 Update(KB2919355)に更新されている必要があります。また、「Windows 10を入手する」アプリを提供する更新プログラム(KB3035583)がインストールされている必要もあります。企業内PCの場合、IT管理者により更新プログラムが意図的にブロックされている可能性もあります。
・IE 11がインストールされていない
「Windows 10を入手する」アプリは、IE 11がインストールされた無料アップグレード対象のWindows 8.1およびWindows 7 SP1のPCに配布されます。IE 10以前がインストールされているWindows 7 SP1は対象外です。
・Windows PCがActive Directoryドメインに参加している
ドメインに参加しているPCでは「Windows 10を入手する」アプリが非表示になります。
・利用中のPCでWindows 10を実行できないと判断された
「Windows 10を入手する」アプリは、Windows 10へのアップグレードの可否をチェックしています。初期チェックでパスしなかったPCでは、「Windows 10を入手する」アプリは非表示になります。7月29日以降、アプリがアクティブになり、アップグレードできない理由やWindows 10対応PCの案内などの通知が表示されるはずです。
アップグレード対象のPCで「Windowsを入手するアプリ」が表示されずに予約ができない場合(ドメイン参加PCなど)、以下のサイトからインストールメディアを作成することでアップグレードインストールを実行することができます。この方法には、予約は不要です。アップグレード対象外のPCのアップグレードには使用できません。
現在、金融機関を中心に、自社サービス(ネットバンキングなど)のWindows 10への対応状況確認が完了するまで、アップグレードを控えるようにとのアナウンスが出ています。一部では、無料アップグレードの予約を取り消すことを勧めているところもあります。
そのサービスを利用し続けたい場合は、動作が確認されるまでWindows 10へのアップグレードは控えるべきです。しかし、無料アップグレードの予約を取り消す必要はないでしょう。無料アップグレードを予約すると、7月29日以降、Windows Updateを通じてアップグレード用のファイルが自動ダウンロードされますが、アップグレードが自動的に開始するわけではありませんのでご安心ください。
マイクロソフトの日本語公式ブログのある投稿をきっかけに「Windows 10の無料アップグレードを抑止する方法」という、一般ユーザーには全く不必要な情報がIT系メディアのニュースとして報じられました。
その後、SNSを通じて「Windows 10の自動アップグレードを阻止する方法」「Windows 10のアップグレード通知を抑止する方法」「自動アップグレードの抑止の方法は危険、PCが起動不能になることも」など、誤った情報が広く拡散してしまいました。
もともとのブログ投稿は、社員が勝手に無料アップグレードを実行しないように、Windows Updateを通じたアップグレードを無効にするという“企業向けの対応策”を説明するものでした。そこで説明されているポリシー設定やレジストリ編集方法は、一般ユーザーには全く関係のないものです。
Windows 10の無料アップグレードは7月29日以降に順次行われますが、それはWindows 10の無料アップグレードを予約した、いち早くWindows 10にアップグレードしたいと望んでいるユーザーに対してです。
Windows 10の無料アップグレードを予約していないPCに対して、Windows 10が勝手に配布されることはありません。また、予約したとしても、いち早くアップグレードできるように自動的にダウンロードしてくれるだけで、アップグレードの開始はユーザーの指示で行うものです。
Windows 10の無料アップグレードを阻止したいなら、予約しなければいいだけの話。すでに予約してしまったというなら、予約を取り消せばいいことです。「Windows 10を入手する」アプリのアイコンや通知がイヤなら、アイコンと通知を非表示にすればよいのです(画面5)。全くアップグレードする気がないのなら、「Windows 10を入手する」アプリの更新プログラム(KB3035583)をアンインストールして、再びインストールされないように更新プログラムを非表示にしておけばよいでしょう。
Windows 10へのアップグレードが失敗しても、以前のWindows(Windows 7またはWindows 8.1)に自動的にロールバックしてくれます。また、アップグレード完了後も「ディスククリーンアップ」を実行していなければ、アップグレード後1カ月間は簡単な方法で以前のバージョンのWindowsにロールバックすることができます(画面6)。
しかし、ロールバックの処理が失敗しないとも限りません。アップグレード前に、現在のWindows環境のフルバックアップ(システムイメージおよびデータボリューム)を作成するか、システムイメージを作成しておくことを強くお勧めします。使用中のPCのローカルディスクがCドライブだけであれば、システムイメージを作成するとその中にユーザーデータも含まれます。
Windows 7の場合は、コントロールパネルの「システムとセキュリティ」→「バックアップと復元」を使用して、「システムイメージの作成」を実行し、USB外付けハードディスクや書き込み可能なDVDメディアにシステムイメージを作成します(画面7)。
また、Windows 7のインストールメディアが手元にない場合は、「システム修復ディスクの作成」を実行して起動用のCD/DVDメディアを作成しておくと安心です。
Windows 8.1の場合は、コントロールパネルの「システムとセキュリティ」→「ファイル履歴」から「システムイメージの作成」を実行して、システムイメージを作成します(画面8)。
Windows 8.1 Updateのインストールメディアがない場合は、「コントロールパネル項目」→「回復」から「回復ドライブの作成」を実行して、起動用のUSBメモリを作成しておくと安心です。その際、「回復パーティションをPCから回復ドライブにコピーします」オプションの有効化は不要です。回復パーティションは、システムイメージの回復には必要ないからです。
なお、Windows 8.1で回復ドライブだけを作成して安心することのないようにしてください。回復ドライブだけだと、Windowsを初期状態(工場出荷時または新規インストール直後)に戻すことはできますが、アップグレード前の状態には戻せません。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2015)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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