Windows 10へのアップグレードで消えたアプリの行方――Windows XP Modeはどうなった?その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(43)(3/3 ページ)

» 2015年10月19日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
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Hyper-Vで正規のWindows XPを実行することは可能(サポート対象外)

 Hyper-Vの仮想マシンでサポートされる、されないを別にすれば、任意の32ビット(x86)および64ビット(x64)OSをゲストOSとしてインストールして実行できる可能性はあります。

 Windows Server 2012 R2(現行バージョン)とWindows 8.1のHyper-Vは、Windows XP Professional(x86 SP3、x64 SP2)をゲストOSとしてサポートしていました(ただし、2014年4月まで)。Windows 10のHyper-Vでも“仮想マシンに適用可能な適切なOSライセンス(*1)”がある場合に限り、仮想マシンにWindows XP Professionalをインストールして実行することは可能です。

*1 Windows XP Professionalのパッケージ製品(すでに販売終了)のライセンスを仮想マシンで使用、またはWindows 10 Pro/Enterpriseボリュームライセンスのダウングレード権を使用。ハードウエアコンポーネントとセットで販売されているWindows XP Professional DSP版は不可。



 しかし、サポートが終了したWindows XP Professionalは、当然のことながら、Windows 10のHyper-Vのサポート対象ゲストOSではありません。サポート対象外のゲストOSには「統合サービス(Integration Service)」が提供されないため、ホストからのシャットダウン、時刻同期、マウス統合など、ホストとの連携機能も利用できません。

 Windows 10およびWindows Serverの次期バージョン(Windows Server 2016)のHyper-Vでは、Windowsゲストへの統合サービスの提供方法が変更されます。最新の統合サービスは、ゲストOSのWindows Updateを通じて提供されるようになります。そして、Windows 10のHyper-V上のWindows XP Professionalに対しては、統合サービスが提供されることはありません。

 以前のHyper-Vでは、Windowsゲスト用の統合サービスがISOイメージ「C:¥Windows¥System32¥vmguest.iso」として提供され、「仮想マシン接続」ウィンドウの「操作」メニューにある「統合サービスセットアップディスクの挿入」からインストールできました。Windows 10のHyper-Vの「仮想マシン接続」には、「統合サービスセットアップディスクの挿入」メニューが存在しません。

Windows XP Modeのアプリ統合風の使い方も可能(サポート対象外)

 Hyper-VにはWindows 7のWindows Virtual PCのような仮想アプリケーション機能はありませんが、工夫次第では仮想アプリケーション風に利用することができます。

 Hyper-Vでは「RemoteApp for Hyper-V」というテクニックを使って、仮想マシンのWindowsゲストにインストールされているWindowsデスクトップアプリケーションを、Hyper-Vホストや別のWindowsコンピューターのデスクトップにシームレスに統合して実行することが可能です(画面7)。

画面7 画面7 「RemoteApp for Hyper-V」のテクニックで、Hyper-V仮想マシンで動くWindows XP ProfessionalのIE 6をWindows 10のデスクトップに統合

 Windows XPはサポート終了製品であるため、ここではRemoteApp for Hyper-Vの構成手順については説明しません。

 Windows Virtual PCの仮想アプリケーション機能は、スタートメニューからアプリケーションを開始する際、仮想マシンが停止状態もしくは保存状態の場合は、仮想マシンを自動的に開始します。仮想アプリケーション機能を持たないHyper-Vでは、RemoteApp for Hyper-Vのテクニックを使ったとしてもこのようなことはできません。

 Hyper-Vの場合は、仮想マシンの設定にある「自動開始アクション」および「自動停止アクション」オプションで、ホストの起動時に仮想マシンを自動的に開始したり、ホストのシャットダウン時に仮想マシンを自動的にシャットダウンまたは状態を保存したりするように構成できます。

 これらの機能を利用して仮想マシンを常時稼働状態にしておけば、いつでもRemoteApp for Hyper-Vを開始できます。コンピューターのCPUやメモリのリソースを無駄に消費するのが気になるのでしたら、RemoteApp for Hyper-Vでアプリケーションに接続する前に、仮想マシンを開始するようなバッチやスクリプトを作成しておくとよいでしょう。以下の画面8に、仮想マシンを開始してからRemoteApp for Hyper-V接続を開始する簡単な例を示しています。

画面8 画面8 バッチファイルを使って、仮想マシンを開始してからRemoteApp for Hyper-Vによるアプリケーションへの接続を開始する

 RemoteApp for Hyper-Vを利用した仮想アプリケーション風の利用方法は、仮想マシンへのネットワークを介したリモートデスクトップ接続を使用しています。最初に指摘したように、Windows XPを今後も使い続ける必要があるなら、ネットワークから完全に切り離すべきです。「内部」タイプのHyper-V仮想スイッチを作成し、Hyper-Vのホストと仮想マシンの間だけの閉じたネットワークにすれば、セキュリティの問題は若干緩和できるかもしれません。

 このように工夫次第でいろいろとできますが、Windows XPときっぱりサヨナラすることが最善策です。

「その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説」バックナンバー

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2015)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。


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