Windows 8/8.1では「PCのリフレッシュ」および「PCのリセット」(両者を合わせて「Push-button Reset」と呼ぶこともあります)という、簡単なシステムの回復手段が提供されました。これらの回復機能は、リカバリーパーティションや回復用メディア上の回復イメージ(通常はOEMベンダーが用意)、またはWindowsのインストールメディア内のイメージ(Sources¥Install.wim)、またはユーザーが作成したカスタム回復イメージ(CustomRefresh.wim、PCのリセットには使用不可)を使用して、個人設定やファイルを維持したままWindowsを回復する、あるいはディスクをフォーマットして再インストールする機能です。
Windows 10にも「PCのリフレッシュ」および「PCのリセット」の機能は搭載されますが、その仕組みは大きく変更されます。Windows 10では、これらの機能が「このPCを初期状態に戻す」に一本化され、「個人用ファイルを保持する」か「全て削除する」かを選択して実行するようになります。また、回復のためにイメージファイル(Install.wimやCustomRefresh.wim)を必要としなくなり、Windowsのコンパクト化にも役立っています。
Windows 10の「このPCを初期状態に戻す」機能は、「C:¥Windows」フォルダーに存在するシステムファイルから回復用イメージを生成して、PCのリフレッシュやリセットを実行します(画面4)。その回復用イメージには、インストールされてから少なくとも28日間が経過した更新プログラムおよびドライバーが含まれるようになっているそうです。Windows 10の「このPCを初期状態に戻す」機能について詳しくは、以下のドキュメントで説明されています。
Windows 10の「このPCを初期状態に戻す」機能は、Windows Updateに起因するトラブルを解決する、簡単かつ有効な手段の一つになるでしょう。しかし、回復後に問題を引き起こした更新プログラムのインストールをブロックできなければ、トラブルが延々と繰り返されることになります。
Windows 10 ProおよびEnterpriseエディションは、「グループポリシー」でWindows Updateの機能を制御できます(画面5)。また、既存の「Windows Server Update Services(WSUS)」のクライアントとしても構成できます。
例えば、グループポリシーの「コンピューターの構成¥Windowsコンポーネント¥Windows Update\自動更新を構成する」ポリシーを「2 - ダウンロードとインストールを通知」または「3 - 自動ダウンロードしインストールを通知」に設定することで、Windows Updateを自動実行させずに、ダウンロードまたはインストールの前に通知を表示させることができるようになります(画面6)。この通知は、Windows 10の新機能である「アクションセンター」の通知によって行われます。
Windows Server 2012 R2のWSUSサーバーは、すでにWindows 10に対応しているようです(画面7)。最新のカタログを同期すると、製品としてWindows 10を選択できるようになります。WSUSを利用すれば、インストールさせる更新プログラムを管理者側で制御できるはずです。なお、Windows Server 2012 R2以前のバージョンのWSUSサーバーについては、筆者は確認していません。
また、「System Center Configuration Manager(SCCM)」に関しては、2015年5月にリリースされたSCCM 2012 R2 Service Pack(SP)1およびSCCM 2012 SP2で、Windows 10の配布、アップグレード、および管理をサポートしています。Windows 10に対する完全なサポートは、次期バージョンの「System Center 2016」で対応することになるでしょう。
WSUSやSCCMのようなパッチ管理環境がなければ、インストールする更新プログラムを選択できないことに変わりはありません。
Windows 10は「Windows as a Service(サービスとしてのWindows)」という考えに基づき、セキュリティ更新だけでなく、新機能も継続的に追加され、常に最新のWindows環境が提供されるようになります。Windows 10の「設定」にある「更新とセキュリティ」→「Windows Update」はその受け口となるのでしょう。
企業や組織での使用では、アプリケーションとの互換性を維持する必要があるため、次々に新機能が提供されては困ることでしょう。そこで、Pro、Enterprise、Educationエディションに対しては、Windows Updateを制御する次のオプションが提供される予定です。
いずれの機能についても詳細については明らかになっていませんし、おそらく正式リリース日の「7月29日」からではなく、数カ月遅れてのサービス提供となるでしょう。
「Windows Update for Business」は、現在、Windows ServerのWSUSがオンプレミスで担っているパッチ管理機能を、クラウドから提供するサービスになると想像しています。
「Current Branch for Business」は、新機能のアップデートを、Windows Updateから数カ月遅れてインストールするオプションということです。筆者はこの機能を、Windows Updateの「詳細オプション」にある「アップグレードを延期する」オプションのことだと予想しています。その根拠は、Windows 10 Pro/Enterpriseエディションの以下のポリシー設定(の説明)にあります。
このポリシーを有効にした場合、ProおよびEnterprise SKUでは、次のアップグレード期間まで(少なくとも数カ月)アップグレードを延期できます。このポリシーを設定しなかった場合は、アップグレードが利用可能になるとすぐに取得され、更新ポリシーの一部としてインストールされます。セキュリティ更新プログラムはこのポリシーの影響を受けません。利用可能なアップグレードの詳細については……
「Long Term Servicing Branch」は、Windows 10 Enterpriseに対してのみ提供される更新オプションで、最大10年間、セキュリティ更新だけを受け取ることができるというものです。以下のマイクロソフトのサイトではWindows 10用のKMS(Key Management Service)クライアントのセットアップキーが公開されていますが、これによるとLong Term Servicing Branch用のKMSクライアントセットアップキーが存在します。
Long Term Servicing Branchとは、通常のWindows 10 Enterpriseエディションとは別に用意される、もう一つのEnterprise SKU(製品単位、Windowsでは通常、エディションごとに一つのSKU)、つまりもう一つのEnterpriseエディションということなのでしょうか。
今回紹介したWindows Update関連だけでなく、Windows 10にはまだまだ多くの謎があります。7月29日の正式リリース以降は、まだ明らかになっていない謎が解明されていくことでしょう。無料アップグレードだからといって焦ることはありません。不安な点がどうなるのか、確認してからアップグレードしても遅くはないでしょう。無料アップグレードの期間は1年間あります。
Windows 10に関してはさまざまな情報があふれていますが、それらはあくまでもプレビューリリースに基づいた情報であり、中には古い情報や誤った情報もあります。正式リリースでは変更になっている可能性があるため、7月29日以降の正式リリースに基づいたWindows 10の情報に注目してください。
Windows 10正式リリースのWindows Update機能は、Insider Previewから基本的に変更はありません。ただし、「アップグレードを延期する」オプションは、Insider Preview Build 10240に対するその後の更新でHomeエディションから削除されました。正式版のHomeエディションにもこのオプションは存在しません。
なお、更新プログラムやドライバーのインストールによるトラブルに対しては、以下のトラブルシューティングツールを使用して特定の更新プログラムやドライバーを非表示/表示にして、自動インストールをブロック/許可することができます。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2015)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.