Windows 10の「Windows Update」機能は、Windows 8.1以前のWindows Updateから様変わりしています。コントロールパネルにあった「Windows Update」管理インターフェースは、Windows 10には存在しません。「Windows Update」管理インターフェースは、「設定」アプリの「更新とセキュリティ」→「Windows Update」だけになります。
Windows 10 Insider Previewに基づいた既報の通り、Windows Updateの既定は「自動更新」です(画面9)。Windows 8.1以前はWindows Updateを手動に切り替えてインストールの開始を指示したり、インストールする更新プログラムやドライバーを選択したりすることができましたが、このようなオプションはWindows 10には存在しません。
Windows 10のWindows Updateの機能は、PC向けのWindows 10の全てのエディションで基本的に共通です。以下の画面10は、Windows 10 HomeとWindows 10 ProのWindows Updateの「詳細オプション」を開いたところです。更新プログラムのインストール方法としては、既定の「自動(推奨)」の他に、「再起動の日時を設定するように通知する」を選択できます。この2つの選択肢以外はありません。
「再起動の日時を設定するように通知する」を選択した場合、インストール完了後に再起動が必要な場合に通知されます(画面11)。ユーザーはすぐに再起動するか、再起動のスケジュールを最長7日後まで延長することができます。
なお、Windows 10 Proの「詳細オプション」には「アップグレードを延期する」というオプションがあります。これはおそらくWindows 10 Pro、Enterprise、Educationでサポートされる「Current branch for Business(CBB)」に対応するものだと思います。Windows 10には新機能が次々に追加されることになっていますが、CBBは新機能の導入を数カ月間延期するためのオプションです。このオプションは、日常的なセキュリティ更新やドライバーの更新には関係ありません。
また、Windows 10 Home以外のエディションは「ローカルコンピューターポリシー(Gpedit.msc)」またはActive Directoryの「グループポリシー」を使って、「コンピューターの構成¥管理用テンプレート¥Windows コンポーネント¥Windows Update¥自動更新を構成する」ポリシーを編集することで、ダウンロードまたはインストール開始前に通知されるように構成することができます(画面12)。ただし、この方法は「Windows Defender」の定義更新にも影響してしまうため、お勧めはできません。
この他、「Windows Server Update Services(WSUS)」や「Windows Update for Business」(サービス未提供)で更新を管理できる点も、Homeエディションとそれ以外のエディションの大きな違いになります。
インストールする更新プログラムを選択できないとなると、更新プログラムやデバイスドライバーのインストールでWindowsが不安定になったり、正常に起動しなくなったりした場合にどうすればよいのか、不安になるでしょう。更新プログラムやドライバーをアンインストールしたとしても、自動実行される次回のWindows Updateで再度同じ更新プログラムやドライバーがインストールされて問題が再発する、というループは正に悪夢です。
自動更新される更新プログラムやドライバーのトラブルを回避するために、マイクロソフトは「Show or hide updates」トラブルシューティングパック(wushowhide.diagcab)を提供しています(画面13)。このトラブルシューティングパックは、Windows 10 Insider Preview向けに2015年7月になって提供されたものですが、Windows 10正式版が対象に追加されました。
Windows Updateによる更新でトラブルが発生し、問題の更新プログラムやデバイスドライバーを特定できた場合は、コントロールパネルの「プログラム」→「プログラムと機能」→「インストールされた更新プログラム」や、「ハードウェアとサウンド」→「デバイスマネージャー」を使用してアンインストールします。その上で、上記のマイクロソフトのWebサイトから「Show or hide updates」ツールをダウンロードして実行し、「Hide updates」を選択して問題の更新プログラムやドライバーをWindows Updateで非表示になるように選択します(画面14)。
なお、セキュリティ更新プログラムを非表示にするのは“一時的な回避手段”とするべきです。いつまでも非表示のままにしていると、脆弱(ぜいじゃく)性を放置してしまうことになります。多くのPCに影響するような更新プログラムは、配布が停止されたり、同じ更新プログラムの修正版が提供されたりします。修正版を受け取るためには、「Show or hide updates」ツールを実行して、非表示にした更新プログラムを再度表示する必要があります。
Windows Updateの更新プログラムが原因と分かっても、問題の更新プログラムをアンインストールできない状況も考えられます。例えば、エクスプローラーがクラッシュしてコントロールパネルの「インストールされた更新プログラム」を使用できない、STOPエラー(Blue Screen of Death:BSoD)でWindowsが起動できないといった状況です。
Windows 8.1以前のWindowsであれば「システムの保護」が既定で有効になっており、Windows Updateで更新プログラムのインストールを開始する前に「復元ポイント」が自動作成されました。そして、コントロールパネルの「システム」やWindows回復環境から「システムの復元」を実行すれば、更新プログラムがインストールされる前の復元ポイントまで戻ることができました。
Windows 10では「システムの保護」が既定で無効になっているようです。少なくとも、筆者がWindows 10にアップグレードしたPCや、評価用に新規インストールしたPCでは無効になっていました。そのため「システムの復元」を実行しても、復元ポイントが存在しないということになります(画面15)。
「システムの保護」を有効にすれば、以前のバージョンのWindowsと同じように、Windows Updateによる更新の前に復元ポイントが自動作成されることは確認しました。しかし、なぜ「システムの保護」が既定で無効になっているのでしょうか。
これは筆者の想像ですが、「システムの保護」の代わりに「PCのリフレッシュ」を推しているのだと思います。前回の記事で書いたように、Windows 10の「PCのリフレッシュ」および「PCのリセット」はWindows 8.1以前のそれとは大きく変更されています。
Windows 8.1までの「PCのリフレッシュ」は、個人のファイルと設定を維持しながら、Windowsを再インストールしてWindowsの安定性を取り戻すという機能であり、回復パーティションの回復イメージ、ユーザー自身が作成したカスタム回復イメージ、またはインストールメディアを必要としていました。
Windows 10の「PCのリフレッシュ」は、Cドライブの「Windows」フォルダー内にあるシステムファイルからリフレッシュ用のイメージを生成します。このイメージには、インストールされてから28日以内の更新プログラムやドライバーが含まれるため、Windows 8.1までの「PCのリフレッシュ」よりも新しいイメージを使用してWindowsの問題を解消することができます(画面16、画面17)。
Windows 10の無料アップグレードは、個人のPCを想定したものです。企業のPCでも、Enterpriseエディションではない、無料アップグレードの対象のWindowsであれば、Windows 10にアップグレードすることは可能です。ただし、Active Directoryドメインに参加しているPCでは「Windows 10を入手する」アプリが非表示となり、アプリを使用した予約やアップグレードはできないため、メディアを使用したアップグレードを実施することになります。
しかし、企業のPCは安易にWindows 10にアップグレードするべきではありません。IT部門またはIT担当者が計画を立て、業務システムや企業ネットワークとの互換性を検証した上でアップグレードすることが重要です。例えば、Windows 10からは「ネットワークアクセス保護(Network Access Protection:NAP)」のサポートが削除されたため、NAPで保護されているネットワークに参加させることがきません。企業環境へのWindows 10導入については、また別の機会に解説しましょう。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2015)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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